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データ分析で価値を出せれば、顧客は定着する--ブレインパッド草野社長 - (page 2)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2015-01-29 17:35

マーケティングや営業の方が話が早い

--どんなSaaSが伸びているか。

 プライベートDMPです。これは自社と外部のさまざまなデータを一元管理し、分析できる基盤であるDMPのプライベート版で、いわゆるアドテクノロジ領域のツールです。DMPは自社サイトへの顧客情報を蓄積するものですが、プライベートとパブリックがあります。

 プライベートDMPは、主にユーザーが実際に訪れるウェブサイトのドメインから発行される“ファーストパーティCookie”を蓄積するというものです。パブリックDMPは、それ以外のドメインから発行される“サードパーティCookie”で蓄積するというものです。

 パブリックDMPでは他社の動向も含めてデータを取れますが、同様に自社のデータも外に出ていきます。プライベートDMPは、自社の顧客の行動については自社のクッキー情報に基づいて貯めていき、そこにウェブサイトでのLPO(ランディングページ最適化)やレコメンデーション、データに基づいたメールの配信、外部のアドへの広告出稿など、ユーザーの行動データを一元的に貯めることができる環境です。

 今のところプライベートDMPは相対的に少ない状況ですが、ブレインパッドが2006年から作ってきたレコメンデーションエンジン「Rtoaster」は最初から相互接続性をオープンにしていました。また、顧客の要望をどんどん機能として取り入れてきたため、相互接続性の実績と安定性と機能の豊かさに定評があります。プライベートDMPという言葉が出てきたときに、これはDMPと呼べるものだとして、そう名付けています。

--データ分析から実際のメリットを引き出すのが難しいという企業もある。

 データ分析をするには、当然データが必要になります。集めたデータを正しく分析し、分析結果をもとに施策を実施して、初めて効果が出ます。そこが他のIT製品やサービスとの大きな違いです。データベースを構築して分析ソフトを入れても、その時点ではビジネスは変わりませんし、どの程度の効果が出るのかもわからないわけです。そのため上司や上層部のコミットが難しいと思います。

 まずはデータを貯めていくことになりますが、そもそもどう貯めるか、どのくらい細かく取るのかなどを検討すると、最初はどうしても細かいセグメントのデータを取ろうとしてコストのかかる仕様になってしまいがちです。

 そうするとコストに対し、ROI(投資対効果)はどうなのかという話になるのですが、データ分析の結果に基づいて改善するため、正直なところ“やってみないと分からない”。IT投資効果や削減効果が見積もりづらいです。

 ではどうするべきかというと、どういうビジネス課題があるかということから逆算していく必要があります。ビジネスサイドから分析が理解できる視点から設計していくという発想にならないと、単純にデータをどう貯めるか、何年間分貯めるかという仕様だけで分析のための環境を作ってしまいコストの無駄になりかねません。やはり分析について、その効果まで見据えられる知見を持ったプロが入る必要があります。

 大量のデータを持っているのは大企業ですが、年度で予算が組まれるので、情報システム部に話をしても、われわれのようなベンチャーに対して急にひねり出せる予算には限りがあります。しかも大企業は“守りのIT”が重要であるところが多いため、たとえおもしろい結果が出ても、それをすぐにビジネスに反映しようということにはなりません。

 結果として単発の仕事で終わってしまう。それよりも、ビジネスに課題を抱えているマーケティングや営業企画の部門に行って、データに基づいて日々の活動を改善し、改善幅でそのフィーを捻出できれば、継続しない理由はありません。ブレインパッドは創業以来、そういう形でビジネス部門に分析を売り込んでいます。

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