“ 万が一 ” という非常事態は、実際にやって来るのだ。 連載第2回では、「ベアメタル復旧」でカルテを回復したA病院の事例を紹介した。3回目は、計画停電による電力不足に備える自動車関連メーカーのC社である。同社が取り入れたのは、レプリケーションによるデータ保護環境だ。
電力不足による障害に備える自動車関連メーカー
来る夏の電力不足から大停電に陥る危険を防ごうと、東京電力、東北電力管内の企業においては、さまざまな節電対策が検討されている。サマータイム・夏季長期休暇の導入や空調の設定温度引き上げ、LED照明への転換、電力需要の少ない週末への稼働シフト、拠点そのものの西日本への移管などはその一例だ。
それでも不測の事態は起こりうる。電力が使えないという状態、つまり停電が発生しないことが保証されたわけではない。そこで自動車関連メーカーC社では、計画停電の実施が再度発表されても対応できるよう、大阪支店に複製サーバを持ち、東京支店のサーバデータをレプリケーションして保管することにした。
3月の東京電力管内での計画停電では、停電対象外の支社・支店でも業務に影響が出たという企業も多かった。理由の一つが停電によるITインフラの停止だ。これらの企業では首都圏に集中していたサーバやネットワーク機器が使用できず、停電の影響が広範に渡ってしまった。C社の事例もまさにこの反省を踏まえた上での対策といえる。
プランが実行可能かどうかは事前に分析できる
レプリケーションは変更が発生する都度複製を行うバックアップ手法である。ただ、そう聞くと、“当社の通信回線で実現するのは難しい”と思われる方がいるかもしれない。しかし、CA ARCserve Replicationは、サーバでのデータ更新量を測定するアセスメント機能を備えている。具体的な方法は、ソフトウェアをサーバへインストールし、アセスメント モードで一週間程度データ取得させるだけだ。すると、以下のようにアセスメント モード レポートが生成され、時間帯ごとのデータ更新量を見ることができる。そのレポートをトランザクション分析レポートに展開すると、現在の通信回線容量でレプリケーションを実行可能か判断することができるのだ。
データ保護ソリューションを実現する製品
では最後に、今回の事例に登場したバックアップ・ソリューションを以下に整理しておく。
- CA ARCserve D2D r15 ----------
- 小中規模なコンピューティング環境のデータ保護ニーズに焦点を合わせた非常に「簡単」かつ「手頃」なディスク ベースのシステム保護ソリューション。導入から運用を開始するまで、わずかな時間と設定で済むだけでなく、一度運用を始めるとほとんど専門知識や手間をかける必要がなく、バックアップ運用管理者の手薄な地方拠点や小規模な部門でも安心して使える。独自の革新的バックアップ手法によりディスク使用の最小化を実現する技術を搭載している。
- CA ARCserve Replication r15 ----------
- 本番サーバで更新されるデータをほぼリアルタイムに他のサーバへ複製して、複製先には常に複製元のデータと同じものを保存するレプリケーション技術を装備した製品。加えられた変更のみが送られるため、WAN のような細い回線でもデータを確実に転送できる。このため、災害に備えて遠く離れたサイトにデータを保管しておくのに最適。この手法はリストア作業の必要なく、すぐに複製先のデータを利用できるため、本番サーバに障害が発生しても複製先を使って業務を継続できる。
- CA ARCserve High Availability r15 ----------
- CA ARCserve Replicationが提供するすべての機能に自動切り替えの機能を加えた製品。本番サーバに障害が発生した場合でも、遠隔地にあるサーバを利用して運用を簡単に切り替えることができる。
- CA ARCserve Backup r15 ----------
- 企業活動にとって重要な資産であるデータからシステムやアプリケーションまで、トータルで柔軟に運用できる非常に実績の高いデータ保護ソリューション。
この製品を使って安全、確実に世代管理しながら保管したデータは、サーバの障害や災害時には即座にしかもきめ細かく復旧することができる。データの重複排除やバックアップウィンドウを削減する豊富な機能が標準搭載されており、追加投資が難しい環境であっても、バックアップ運用範囲を拡大しやすい。
また、管理者の利便性を追求した集中化や視覚化機能など、単なるバックアップ以上の価値を提供している。
データ保護を行うのに大がかりな装置は必要ない
災害対策というと、物理的な環境の構築を含めて非常に大規模な取り組みを行わなければならないという先入観がある。しかし、事例を見ると、いつものように業務を継続するために最も重要なのは、データというソフトウェア資産であることがよくわかる。他のものはいくらでも置き換えが可能だが、データだけはひとたび失われたら取り戻すことができないからである。幸いなことに、データ保護を行うのに大がかりな装置は必要ない。すみやかに動いて“万が一”に備えたいところだ。