分散マルチクラスタのクラウド上で自律運転を可能にする
OpenStackプラグイン「FireAnt」
次に紹介するのは、デルの研究機関、Dell Researchで開発が進められているFireAntというOpenStackプラグインだ。このプラグインは、クラウド基盤の安定性とスケーラビリティ、リソースの最適化を目的にしたものだと、Dell ResearchのRajesh Narayanan氏は言う。
Dell Research, Director | Distinguished Technologist
Rajesh Narayanan氏
「OpenStackにノード数の上限はないが、ノードが極端に増えていくと、中央コントール型では管理しきれなくなり、SPOF(単一障害点)も増えて安定性を欠いてしまう。そこで、巨大な1つのクラスタを作るのではなく、100ノードクラスの扱いやすいクラスタに分割して、相互に連携させようというのが基本的なアイデアだ。そして、分割されたクラスタ間で連携機能を提供するのがFireAntである」(Narayanan氏)
※クリックすると拡大画像が見られます
FireAntは、クラスタ間でリソースを融通しあうコントローラとして機能する。例えば、あるクラスタでストレージが足りなくなった場合、FireAntは隣接するクラスタに問い合わせを行い、問い合わせを受けたクラスタのFireAntは、さらに自身の隣接するクラスタにも問い合わせを実行する。こうして十分なストレージを提供できる最適なクラスタを探し当てて再デプロイを実行するのである。FireAntという名前は、アリが餌の場所を互いに教え合う様に着想を得たことから名付けたものだそうだ。
現在、クラウドのトレンドは、パブリックとプライベートのクラウドを相互運用するハイブリッド・グラウドに向かっているが、FireAntは複数のパブリック・クラウド、複数のプライベート・クラウドが混在するマルチクラウド環境を前提にしており、そのためOpenStackのバージョンに依存しないように開発されているという。
「FireAntでは、リソースを最適化するためのパラメータを自由に設定することができる。CPU、ネットワーク、ストレージなどのほか、コストのパラメータを追加すれば同じスペックならより低コストのほうを選択するようにすることもできる」(Narayanan氏) 今のところ、FireAntは研究段階にある技術だが、商用化が楽しみなソリューションだ。