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宮崎県

職員自らがツールをつくる時代へ
ゼロトラスト環境で加速する、宮崎市の “内製 DX”

フェニックス並木が続く海岸線に、どこまでも広がる青空。プロスポーツのキャンプ地や、宮崎牛、マンゴーなど多彩な食の魅力でも知られる宮崎市には、ゆったりとした穏やかな「日向(ひゅうが)時間」が流れている。しかし今、このまちの市役所では、全国の自治体が注目するスピード感で DX(デジタル トランスフォーメーション)が進んでいる。「やり方を工夫するのではなく、環境をごそっと変える」という強い決意のもと、Chromebook と Google Workspace、そして生成 AI を導入。現場の課題を職員自らがツール化して解決する、新たな自治体の姿はどう生み出されたのか。同市 デジタル・行革推進課のメンバーに話を聞いた。
  • 竜の鱗の様な形をした「ドラゴンフルーツ」は、宮崎県で栽培されている南国フルーツの一つ

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  • 「堀切峠」は、海岸線に続く波状岩と太平洋を一望できる宮崎市を代表する風景

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  • 南国リゾートらしい雰囲気の道の駅フォニックス。宮崎市の公式キャラクター「みやねこ」は、宮崎市制100周年を記念して誕生

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  • 宮崎市役所本庁舎は、宮崎県を代表する大淀川沿いにあり、新庁舎の運用が、2031 年度に開始される予定

    宮崎市役所本庁舎は、宮崎県を代表する大淀川沿いにあり、新庁舎の運用が、2031 年度に開始される予定

意識を変えるには、環境を「ごそっと」変えるしかない

 「温暖な気候のせいか、『日向時間』という言葉もあるくらい、みんなゆったりしています。食べ物もおいしいし、海も山もある。本当に暮らしやすいまちだと思います」。デジタル・行革推進課の川久保奈於氏がそう語るように、市役所内にはリラックスした雰囲気が流れ、職員同士の会話もどこか柔らかい。

 だが、そんな穏やかな空気の中で、市役所のデジタル環境はここ数年で劇的な変化を遂げていた。

 現在でこそ、声をかけたらすぐに職員が手元のノートパソコンをサッと開き、クラウド上で瞬時に担当者の予定を確認してくれるスマートな環境が整っているが、数年前までの状況はまったく違った。インターネットに接続できる端末は極端に限られ、「たった 5 年ほど前までは、インターネットにつながる端末が課に 1 台しかなく、メールを確認するためだけにその専用端末の前に並ぶこともあった」という。また、日々の業務で扱う資料は庁内のファイルサーバや職員の端末、紛失リスクのある USB メモリなどに分散して保存されていた。

 宮崎市のデジタル改革をけん引する、総務部デジタル対策監の松浦裕氏はこう振り返る。 「2018 年頃から、将来はペーパーレス化や AI 活用が欠かせなくなる時代を見越してロードマップを描いていましたが、現場の意識はなかなか変わりませんでした。外部のアドバイザーからも『宮崎市は 2 周遅れだ』なんて指摘されるほど…。やり方をいくら工夫しても、根本的な考え方は変わらない。それならもうこれを機に、環境をごそっと変えてしまおう。そのほうがみんなの意識も変わるんじゃないかと考えたのです」

 追い風となったのは 2022 年。現在の清山知憲氏が市長に就任し、デジタル化にこれまで以上のスピード感が求められるようになった。市長自らが「インターネットにつながらない端末では仕事ができない」と指摘し、数か月単位でのスピーディな環境整備を求めたのだ。

 そこで市が変革の基盤として選んだのが、 ノートパソコンの Chromebook と、グループウェアの Google Workspace だった。「これからは情報をみんなで共有しながら仕事をする時代。セキュリティにもしっかり手当てをしなければならない一方で、予算も人も限られている。そうした条件を一つひとつ考えた結果、Google Workspace、Google Cloud にたどり着きました。それに何より、ブラウザ一つでアプリケーションが裏で全部つながっていて、サクサク動く。仕事をしていて純粋に『楽しい』んですよね」(松浦氏)

即座にチャットで相談。業務の「待ち時間」を削減

宮崎市写真

 ブラウザを開けば、Google ドキュメントや Google スプレッドシート、Google ドライブなどが一つにつながる。ファイル サーバから資料を探し出し、メールに添付して送り合う無駄は消滅した。複数の職員が同じ資料を開き、その場で手を加えられる共同編集も日常の風景になった。

 変化は、日々の業務の随所に表れた。例えば議事録だ。以前は若手職員が会議の録音データを聞き返しながら手作業で作成し、数時間を費やしていた。今では Google Meet で Gemini が文字起こしから要約までをしてくれるので、作成にかかっていた時間が大きく削減されたという。

 さらに、「待ち時間」の削減も劇的だ。
 「以前は、決裁をもらうために出張中の部長が帰ってくるまで業務が止まっていました。それが今では、Google Chat で『こういう内容ですがどうですか』と送り、その場でオッケーをもらって業務が進む。市長や幹部にも、チャットを通じて即座に相談や合意形成がなされるようになり、仕事は以前とは比較にならないほどスムーズに流れるようになりました」(松浦氏)

 災害時など、一刻を争う場面でも変革が起きている。過去に竜巻被害が発生した際、家屋の被害調査に向かう職員の情報共有は、リーダーが一人ひとりに電話をかける状態だった。それが現在では、チャットで一斉に状況を送信するだけ。ピンポイントの市民からの要望も「私、行けます」と即座に対応者が決まる。スマートフォンから現場の画像も瞬時に共有できるため、初動のスピードは劇的に向上した。

アイデアを AI でカタチに。職員発のツールで市役所改革

宮崎市写真

 いま、宮崎市のデジタル・行革推進課には、「この業務をもっと便利にできないか」「市民への案内をもっと分かりやすくできないか」といった相談が、各課から日々寄せられている。課題を抱えた部署にとって、いわば “駆け込み寺” のような存在だ。

 「そういった相談が持ち込まれると、どういう構成がいいのか。どういう仕組みにすれば実現できるのか。まずは Gemini と会話しながら考えます」(松浦氏)

 その後、Gemini にコードを書かせながら、Google Workspace を拡張できる「Google Apps Script (GAS)」などを活用し、実際の業務改善ツールとして形にしていく。これまで専門知識が必要だった開発にも、生成 AI の登場によって、プログラミングの経験がなくても職員が自ら取り組めるようになった。

宮崎市写真

 例えば、観光戦略課から寄せられたアンケート分析の相談だ。台風で延期になった野外音楽イベント「ひなたフェス 2026」を目的に来県を予定していた人へのアンケート結果を分析し、どの地域から宮崎を訪れようとしていたのかを、従来の行政レポートではなく、日本地図上で矢印が動くような視覚的で伝わりやすい表現で実現した。従来なら専門業者に外注するような高度な可視化も、Gemini のサポートを得ながら職員が作成したものだ。

 市民向け広報のあり方も変わり始めている。「行政のチラシは文字を詰め込みすぎて伝わらない」という市長からの指摘をきっかけに、職員たちはチラシ作成にも Gemini を活用。伝えたい内容を入力すると、AI がキャッチ コピーや構成案を提案するだけでなく、画像まで自動作成してくれる。生成した画像は細かく調整することもでき、職員はより短時間で、質の高いスタイリッシュな広報物を作成できるようになった。

 宮崎市は、南海トラフ巨大地震が発生した場合、大規模な津波被害などが想定されている。松浦氏は「AI とデータ活用によって、これまでの想定だけでは対応しきれない状況にも備えられるのではないか」と考えている。将来的には、市民がホームページやアプリを開くだけで、家族構成などに合わせて自分に必要な手続きや支援制度が自動的に提案される仕組みも構想中だ。

「見えない・さわれない」独自の『機密ドライブ』で不安を払拭

宮崎市写真

 自治体 DX を進めるうえで、絶対に避けて通れないのがセキュリティの問題だ。住民情報など、機微な個人情報を扱う自治体にとって、「クラウドは本当に安全なのか」という不安が常につきまとう。これは宮崎市も例外ではなかった。

 「クラウドって聞くだけで不安だという職員は多かったんです。『安全ですよ』と言ってもなかなか納得は得られない。それなら、実際に『見えない』『アクセスできない』ことを職員自身に見てもらおうと思いました」そう話すのは、デジタル・行革推進課の新里尭之氏だ。

 そこで構築したのが、宮崎市独自の「機密ドライブ」である。Google ドライブと GAS、そしてアクセスする場所や端末に応じて利用を制御する Chrome Enterprise Premium の「コンテキストアウェア アクセス(CAA)」を組み合わせた仕組みだ。利用には上長の承認(鍵)が必要で、同じ課の職員であっても権限がなければ閲覧できず、URL を知っていてもアクセス自体が弾かれる。

 「Chrome Enterprise Premium の Context-Aware Access では、どのアカウントか、どこからアクセスしているのか、どの端末で、いつ、どこにアクセスしているのかなどの条件を組み合わせて動的にアクセスを制御することができます。クラウド化を進めながらだれでもリモートにアクセスできる環境を作りながらも、業務における必要性に応じてアクセスできるデータ領域を分ける仕組みを作ることを考えました」

 承認を得て「機密ドライブ」にアクセスする職員は、その利用中は庁外からのドライブ アクセスができないなど、あえて作業環境に制約も加えられている。必要な制限が加えられたことにより、「これなら安心だ」と、それまでクラウド活用に慎重だった部署でも利用が広がった。

 USB メモリのように紛失するリスクもない。さらに、Google ドライブのラベル機能も活用。重要なデータに「ダウンロード禁止」などのラベルを付与し、ラベル付きのファイルは生成 AI の利用を制限するなど、重要度に応じた制御を自動で行う多層的な守りを実現している。

 特筆すべきは、この高度な仕組みの構築手法だ。

 「普通だったらファイアウォールなど別のシステムを高額で買い足して制御するところを、今使っている Google Workspace と Chrome Enterprise Premium の機能を組み合わせて作れてしまうのが大きいですよね。Gemini と一緒に試行錯誤して、熟考を重ねてたどり着きましたので、簡単に作れました、とは言えませんが(笑)」(新里氏)

 機密ドライブは現在、原則として庁内からのみアクセスできる運用となっているが、万が一の災害で本庁舎が使えなくなった場合などには、一時的に制限を解除し、職員個人のスマートフォン等から安全にアクセスして市民サービスを継続できる BCP 対策も視野に入れているという。特別なソフトを導入しなくても、セキュリティが組み込まれた Chrome ブラウザを業務で使用することで安全性が担保される。守るべき情報は守りつつ、有事には柔軟に対応できるクラウドならではの強みだ。

「20% ルール」が育む挑戦の文化

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 デジタル・行革推進課には川久保氏や新里氏をはじめ、20〜30 代の若手職員が多く在籍している。松浦さんのけん引のもと、新しいアイデアで仕事を効率化し、より良い行政サービスをつくろうとする風土が庁内で育ちつつある。

 その背景にあるのが、Google 発祥の制度を参考に宮崎市が取り入れた「宮崎市版 20% ルール」だ。職員は本来の所属部署を超えて、業務時間の一定割合を他部署の応援や業務改善、新たな取り組みに充てることができる。

 例えば、繁忙期に税金の業務を他部署の職員が手伝うといった活用はもちろん、デジタル・行革推進課では有志の職員が集まり、各課から寄せられる課題解決にも取り組んでいる。AI を活用した集計ツールの開発やデータ可視化の仕組みづくりなど、担い手は必ずしも IT の専門職ではない。Gemini を相棒にしながら学び、自発的な挑戦を続けているのだ。

 松浦氏自身も AI を活用し、海外の自治体の取り組みなどを収集しているという。「『何かを改善したい』という思いがあっても、これまでは形にする手段がなかった。それが Google Workspace と Gemini によって、職員自らがアイデアを形にできるようになったんです。AI は単なる効率化ツールではなく、新しいことを考えるための相棒ですね」(松浦氏)

 最新の脅威から市民のデータを守るセキュリティと、現場のアイデアを即座に形にする柔軟な開発力。一見相反するこの 2 つを、宮崎市は Chrome Enterprise Premium と生成 AI の組み合わせによって見事に両立させている。ブラウザという安全な境界線の内側で、職員自らがツールを生み出し、その成果を市民に還元していく。システム任せではない、真に自律的な自治体 DX の姿が、ここ宮崎市で育まれている。

宮崎市写真

左から

● 宮崎市 総務部 デジタル対策監 松浦 裕氏

● 宮崎市 総務部 主任主事 川久保 奈於氏

● 宮崎市 総務部 主任主事 新里 尭之氏

提供      :グーグル合同会社、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 企画/制作   :株式会社4X メディア&データ本部 営業部 掲載内容有効期限:2026年12月31日
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