プラットフォームビジネスは失敗を恐れずやってみる
安井氏 まずはプラットフォームビジネスの現状や適用事例についてうかがいたい。
松永氏 メディア・エンターテインメント分野のプラットフォームに関わっている。映画やビデオのネット配信サービスである。現在、メディアは大きく変化しており、プラットフォームビジネスでは最先端である。現在、ビッグデータ分析のために顧客データを収集したものの、どうやって活用すればよいか悩んでいる企業は多いが、メディア業界では、すでに顧客の属性データを活用してコンテンツを制作するところまできている。
Vijay氏 ある医療機関では、プラットフォームの構築により、これまで別々だった検査データと手術データを連携。安全で最適な手術環境を実現した。また、6億5,900万人のファンを有する欧州のサッカーチームでは、プラットフォームの構築により、試合の前後を含めて、ファンがチームとより強いつながりを持てる仕組みを実現。ファンの満足度を2倍にしている。
永井氏 ある製造業の顧客では、生産設備が停止すると機会損失につながるため、予知保全が求められていた。そこで、すべての設備にセンサーを取り付けてデータを収集、プラットフォームを構築してデータを解析することで、予知保全を実現した。
また設備データを解析することで、人がどのように行動しているかも把握することができる。人の行動を把握できれば、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性がある。そのためには、さまざまなパートナー企業を巻き込んだエコシステムを構築することが必要で、IBMではそのためのIoTプラットフォーム構築をサポートしている。
安井氏 製造業におけるプラットフォームづくり、パートナーづくりにおける挑戦についてうかがいたい。
傳田氏 現在、AIを活用したビッグデータの有効活用を考えている。多くの製造業は、AIを活用する前の段階で止まっているが、IBMのようなAIの専門家と一緒にAIを活用するためのプラットフォーム構築に取り組んでいきたい。このとき、パートナー企業にオープンにする技術と、クローズにする技術のバランスがポイントになる。最終的に目指すのは、スマートファクトリーの実現である。
安井氏 日本の製造業は、プラットフォームを構築するのは難しいと思っている。HCLでは、こうした製造業をどのようにサポートしていくのか。
Vijay氏 日本だけではなく、製造業はどこも同じように感じている。自社の製品やサービスがあり、既にプラットフォームのようなものも持っている。しかし、共通のプラットフォームを構築し、それぞれの組織や製品間で活用するのが難しいポイントとなっている。そこには、技術的な問題だけでなく、人的な難しさも含まれている。
技術的な問題は、APIやインタフェース、ゲートウェイなどの定義で解決できる。一方、人的な問題は解決が難しい。そこで、インダストリー4.0のような標準規格が重要になる。HCLとしては、プラットフォーム、デジタル、IoTなどの分野に取り組んできた経験やノウハウ、さまざまなパートナーシップを生かしてソリューションを提供する。
安井氏 コンサルタントとして、プラットフォーマーになるためには何が必要だと考えているか。
松永氏 まずは、根本的に考え方を変えることが必要だと思っている。必要なのは、5年後、10年後にどうなるかという予見である。コンサルティングファームでは、エクスペリエンスという言葉をよく使う。実は、ユーザーエクスペリエンスとエクスペリエンスは別物である。ユーザーエクスペリエンスは、現在のカスタマージャーニーであり、エクスペリエンスは、5年後、10年後を見据えた現在である。
たとえば、現在こんな医療ビジネスが必要だというのがユーザーエクスペリエンスであり、IoTやAIを使って5年後、10年後にはこんな治療が実現するというのがエクスペリエンスである。プラットフォームの構築にも、こうした考察ができる社内外の人たちを集めて議論することが必要になる。
安井氏 ルネサスは、いかにプラットフォーマーになったのか。
傳田氏 プラットフォーマーになるためのすべての問題を解決できたとは思っていない。そもそも、プラットフォーマーになろうと思ったのではなく、お客様の課題を解決するために必要だったのがプラットフォームだったということだ。
マイコン市場での高いシェアをベースに、弱点だったソフトウェアやAIの分野に取り組んできた。その分野では、今後も国内外のパートナー企業とともに、ソリューションを作っていく。さらに新しいパートナー企業とつながっていくことも重要だと思っている。
安井氏 IBMとしては、どのようにお客様のIT課題に応えていくのか。
永井氏 多くの製造業のお客様と話をしてきたが、IBMでは中核となる実行基盤として、IBM CloudやWatsonなどを提供している。重要なのは、「モノからコトへ」と移行していくときに、どのような考え方をすればよいかをサポートすることである。また、そもそものもの作りの考え方を変えていかなければならないと思っている。
お客様の求めるものを作っていこうとすると、アジャイル開発やDevOpsなどの考え方を取り込む必要がある。しかし既存のプロセスに、新しいものを取り込むのは容易ではない。そこで、開発プロセスのトランスフォーメーションを支援することが必要になる。まずは、失敗を恐れずにやってみること。製造業がプラットフォームビジネスを実現するための方法論やコンサルティングはIBMが提供する。
安井氏 最後に、日本の製造業にメッセージを。
傳田氏 製造業の一翼を担う会社として、グローバルな視点でプラットフォームを構築し、お客様やパートナー企業とともに、業界の劇的な変化を捉えてビジネスを拡大していきたい。
永井氏 まずは始めてみることが重要。お客様が何を求めているのかを社内外で議論し、IT活用して、どんどんプラットフォームを構築してほしい。そのためのサポートを提供する。
Vijay氏 まずは業界の中で、どのような役割を果たしたいのか、どのようなメリットを提供したいのか、どのように競争したいのかを明確にすべき。そこに、すべての資源を集中することである。そのために必要なサポートはHCLが提供する。
松永氏 ぜひ言いたいのは、日本の製造業は素晴らしいということ。Instagramは写メールがなければ登場しなかったし、iPodもWALKMANがなければ生まれなかった。日本の製造業は革命を起こしてきたことを思い出し、自信を持つべき。その中で、自社が何をすべきかを考えてほしい。
安井氏 本日は、ありがとうございました。