装置組み立てはロボットと人間の二人三脚
装置組み立ての段階では、さまざまなロボットが活用されている。まずそのひとつは、自動で部品を適切な場所に運ぶ無人の部品搬送車AGV(Automated Guided Vehicle)だ。
部品の収納箱にはすべてICカードが取り付けられており、箱の中の部品がなくなり箱が棚から取り除かれると、そのICカードの情報が倉庫に伝わり、AGVが部品を運ぶ仕組みになっているのだ。AGVは、センサーで壁や人を感知し、突然人が飛び出しても停止する仕組みだ。また、部品の配達場所までの最短距離も把握しており、効率的に生産現場内を動き回る。AGVはこの生産現場内で11台導入されている。
無人部品搬送車
部品収納箱に取り付けられているICカード
工場内には、人間に似た姿で人間のような動きをする双腕ロボットも存在する。15の関節を持ち、繊細な動きにも対応できるロボットだ。手首から先は日立が独自に開発しており、基板の扱いに適した独自の仕掛けが組み込まれている。目にはカメラがついており、部品を取り損ねた場合も自ら気づくようになっている。
双腕ロボット
ネジ止め工程でも機械と人間が協力し合う
ただし、ロボットにすべてを任せてしまうわけではない。ここでは作業者とロボットがペアになり、ロボットが不良を検知した場合、作業者が素早く対処し作業停止時間を最小化している。
また、作業者によるネジ止めの工程では、機械が止めたネジの数を数え、正しい数のネジが止め終わるまで終了音が鳴らないようにしてネジの止め忘れを防止している。
製造期間の約9割を占める厳しい検査工程
冒頭にも述べたとおり、日立ではハードウェアの製造工程のうち約9割が製品の検査期間となっている。つまり、検査こそ製造工程の中核と言っても過言ではない。
中でも、5~40℃という温度差や電圧を変動させた環境で製品をテストするエージング試験は、3日間にもわたって行われる。完成直後の工業製品は故障リスクが高いため、高リスクな期間にあえて製品を過酷な環境に置き、半導体素子のマージン不足などによって、お客さま先での初期障害のリスクをできるだけ低減させるための試験だ。
そして、ヒートラン試験では、フル装備の状態を想定してシステム全体をチェックする。納品後にお客さまが機能や容量を拡張することも考えられるため、将来の運用シーンを想定したフル実装の状態で試験を行うのだ。ネットワーク環境でストレージがサーバの命令通り動作するかどうかもこの段階で確認する。これは抜き取り検査ではなく、すべての製品に対して行っている。
ヒートラン試験
こうしてさまざまな試験工程を経た後、お客さまごとの構成にあわせてオプションを取り外す。試験はすべてフル実装で行っているため、オプション追加の際も試験済みの部品を組み入れるだけで済むというわけだ。お客さまごとの構成に合わせた後にも再度試験を行い、ようやく出荷の準備完了だ。
ハードウェアの製造工程にこれほどの検査が組み込まれているのは、まさに日本のモノづくり精神と日立の品質に対するこだわりがもたらしたものだろう。小田原のこの地から全世界に向けて、日立の高品質な製品が今日も旅立っていく。