基本編 で、増大する社内データの運用管理に役立つNASを解説し、代表的な製品として、すぐれた「容量拡張性」や、使いやすい「オンラインデータ移行機能」という特長を持つ日立のVFPを紹介しました。
VFPでは、複数のファイルサーバやNASを集約することで、運用管理の手間を減らすことができる上、データ移行時の業務への影響は最小限に抑えることができます。
しかし、それだけで十分でしょうか。読者のみなさんの会社には、本社だけではなく各支社・支店など、複数のサイトが散在していませんか?
複数サイトでそれぞれが個別にデータを管理しているとしたら、そこには管理の手間やディスク容量などの無駄が発生します。異なるサイトのデータを効率よく管理するにはどうしたら良いでしょうか。
こうしたニーズに応えるのが、日立のVFPと、バックアップ/アーカイブストレージ「Hitachi Content Platform(以下HCP)」を用いたCloud on-Ramp*1というソリューションです。Cloud on-Rampでは、各サイトに設置されたVFPのデータを、データセンターに設置されたHCPへ集約します。このとき、Cloud on-Rampでは、利用価値に応じてデータをどこに配置するかを決めることができます。そのため、たとえばよく使うデータはサイト側のVFPに格納して高速なアクセスを確保しながら、あまり使わなくなったデータはセンター側へ送り、コスト効率よく長期保存する、といった運用ができるようになります。
このような運用を可能にしているのが、VFPの「ファイル仮想化機能」です。VFPに格納されたデータは、システム管理者が定義したポリシーに基づいて、自動でHCPへ移動されます。また、ポリシーの実行タイミングは指定することができます。これを利用すると、たとえば、一定期間アクセスがないファイルをHCPに移動するといった運用が可能です。さらにHCP内では、データの圧縮や重複排除を行うことで、より効率よくデータを格納することができます。
一度HCPに移動したデータに対しても、時にはアクセスが必要になることがあります。その場合は、アクセス要求に応じてHCPからVFPにデータが再度読み込まれ、以降はそのデータに対してVFP上での高速なアクセスが可能です。このように、ユーザーはデータがどこに配置されているかを意識することなく利用することができるとともに、データは常にその利用価値に応じて適切に配置されるため、各サイトのディスク容量を効率的に利用でき、管理者の負担を軽減することができます。
しかし、「各サイトのデータを1ヵ所に集約したら、自分のサイトのデータが他のサイトから不正にアクセスされるのでは?」と、心配な方もいらっしゃるでしょう。しかしそんな心配はありません。HCPを独立した複数のストレージとして分割することができる、「マルチテナント機能」により、それぞれのサイトへの不正アクセスを防止でき、あたかも各サイトでストレージを管理しているかのように利用できるのです。
各サイトでVFPに集約したデータを、さらにデータセンターに導入したHCPで一元管理するというCloud on-Rampは、システム管理者の負担が削減できる他にも、設備投資コストの最適化、データ活用・分析の活発化、コンプライアンス徹底の容易化、など経営的にも大きなメリットがあります。情報システム部門の目標の1つである、「ビジネスに貢献するインフラ」の実現に近づくことができるソリューションといえます。