IoTビジネスに適したLPWA技術
2つ目の特長は、LPWA技術である。すでにIoTの活用が始まっている分野は、自動車、住宅など高価で、かつ、電源が安定して供給される場所に限られていた。しかし今後、さまざまな場所でIoTを普及させるには、デバイスや回線の「消費電力」「適応エリア」「コスト」という3つの課題を解決する必要がある。これらを解決するのが、スマートフォンで利用されている通信ネットワークをベースとしたLPWA技術だ。
一般的なスマートフォンは約1秒ごとに着信の確認をしているが、IoTではセンサーに変化がなければ頻繁に確認する必要がない。LPWAの省電力モード(Power Save Mode:PSM)を適用することで最大13日間着信しない状態にすることができ、消費電力を大幅に削減できる。また、適応エリアについては、同じデータを複数回送信することで弱電界でも受信できる確率を向上する技術「カバレッジ拡張」により、約3倍まで広がると言われている。さらに、IoT向けのチップを、必要なサービスを実現する機能に特化した部品と回路だけにすることでコストを削減できる。
「LPWA技術により、省電力、ワイドエリア、低コストの三拍子そろったネットワークが実現できます。KDDIでは、IoTビジネスを検討されている企業がLPWAを低コストで検証できるよう、LoRaデバイスやLoRaゲートウェイ、KDDI IoTコネクト Air対応ルータなどをセットにした『LoRa PoCキット』を提供しています」(原田氏)

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国ごとに異なる通信回線の統合管理
3つ目の特長である「グローバル通信プラットフォーム」は、2016年にトヨタ自動車と共同で企画・設計した「つながるクルマ」を実現するためのプラットフォームで、国や地域で異なる通信回線の統合管理と高品質な通信の確保を目的としている。
原田氏は、「国や地域ごとに製品に組み込む通信デバイスを変更することなく、1つの通信デバイスをグローバルに展開できるとともに、最適な通信品質および価格を提供してくれるキャリアを選定できます。グローバルに販売した製品(例:テレビ)が、どこで使われているか、壊れていないか、どのように利用されているかなどを把握できます」と話す。
グローバル通信プラットフォームは、自動車業界以外の業界でも利用可能で、KDDIの現地法人が、計画から交渉、契約、運用まで、トータルにサポートする。これにより、グローバル展開の準備段階から、自社で各国に専任担当者を配置したり、各国のキャリアと個別に交渉・契約したり、サービス開始後に障害対応をしたりという負荷を大幅に削減できる。
2000種類以上のセンサーに対応
IoTにおいてセンサーが重要なのは言うまでもない。KDDI IoTクラウド Standardでは、振動検知センサーやガス漏れセンサー、騒音計、転倒検知センサー、風向風速センサー、地すべり検知センサー、炎検知センサー、侵入検知センサー、漏水センサー、流量検知センサーなど、2000種類以上のセンサーに対応している。
スマートフォンのカメラを利用してストレスを計測するセンサーや、土中の養分を分析する「ミネラルセンサー」、熱中症の予防や危険を検知するセンサーと搭載した「スマートヘルメット(仮称)」、カメラの画像から人の関心度を分析する「関心度分析」など、新しいセンサーに関する取り組みも積極的に進めている。
さまざまな特長をもつKDDIのIoTソリューションだが、そのバックボーンになっているのが、2001年から15年以上にわたってM2Mに取り組んできた実績とノウハウだ。
「KDDIではまだIoTという言葉が使われる前のM2Mと呼ばれていた時代の2001年よりM2M分野に取り組んできました。セキュリティサービスやテレマティクス、ホームセキュリティ、スマートメーターなど、数多くの分野で採用実績があることが、KDDIの最大の強みです。こうした培ってきたノウハウと、新しい技術で、企業のIoTビジネスをサポートしていきます」と原田氏は力強く語ってくれた。