本番同様のサイトをAzureで構築
フルクラウド化へ向けた手応え
オイレス工業のDRサイト刷新は、5か月という短期間で実行された。ExpressRouteを活用したことによって、海外サイトへのネットワーク引き込みが不要になったことや、Azure Site Recoveryを最大限に活用できたこと、マイクロソフトのパートナーであるクニエの活躍も成功の要因だったという。
「最近のAzureの機能拡張はめざましく、私たちが求めるツールが次々に登場しています。Azure Site Recoveryも、もともと情報が少なくてやきもきしていたのですが、機能が安定しはじめ、サポートも充実するようになったため、今回のDRサイト構築では特に役立ちました」(加藤氏)
Azure上に構築されたサイトはDR環境ではありますが、本番環境として利用できる機能を備えている。つまりオイレス工業にとって、今回のDRサイト構築により、Azure上での本番サイト稼働の試験が完了したと同じことだ。Azure上でもオンプレミスシステムと遜色ない性能を示しており、仮にパフォーマンスが不足してもリソースを拡張できる余裕があるため、本番環境としても申し分ないとのことである。安全性・安定性が重視されるシステムであっても「いつでも移行できる」(加藤氏)という手応えを感じたという。
Azureのメリットを最大限に生かす
クラウドは既に第一の選択肢
オイレス工業では、今後も積極的にフルクラウド化/フルAzure化を図っていきたいと考えている。利用していないときにインスタンスを落とすことができるクラウドは、小さなシステムであってもメリットが大きい。グローバル企業のシステムであることや関連するコストを考えるとクラウドは自然と最上位の選択肢となる。
まずは、ExpressRouteの海外展開を待って、ネットワークの冗長化を図りたい意向だ。クラウドサービスの活用も積極的に考えており、現在はSharePoint Onlineの検証を開始したという。
とはいえ、本当のフルクラウド化を進めるためには、クリアすべき課題もまだ残されている。特に基幹系システムでは非常に高い安定性が求められる。いかに堅牢なクラウドであっても、システム側で高可用性を実現する構成を採ることが重要だ。そのための手法やアーキテクチャをきちんと理解して、より高度に最適化を図る必要があるだろう。
「より新しい技術やソリューションを採り入れて業界や技術の変化へ追随するため、クニエには今後も高品質なサポートを提供し続けてほしいと考えています。またマイクロソフトには、より先進的な技術・ソリューションの提供を続けて欲しいところです。例えば、オンプレミスとクラウドの間、あるいは異なる地域のAzureの間でも、より簡単に意識せずシステムを移動できる機能があれば、いっそう活用しやすくなるのではないでしょうか」と杉崎氏は述べる。
今、クラウドへのシステム移行は企業ITのトレンドの1つとなっている。しかし、ただ漠然と「クラウドを使わなければ」「移行しなければ遅れる」という考え方を持つのは危険だ。
「昨今の人材不足の中、クラウドの活用は投資をムダにしない選択肢の1つです。クラウドを活用することで、少人数であってもシステムの安定性を保つことができるようになり、グローバルでの24時間365日のシステム運用を提供できるようになります。これは事業の継続性の面だけでなく、人材の有効活用の面でも大きなメリットです。そしてMicrosoft Azureは、他のクラウドサービスと比べても確実に成長を続けており、問題なく安心して活用できるクラウドサービスだと感じています」(加藤氏)
オイレス工業のビジネスは、今後もマイクロソフトの技術とクニエのサービスが支え、グローバルに成長していく姿を見守っていくことだろう。