ネットワークは、「つながっているのが当たり前」という意識になりがちだ。ある日いきなりつながらなくなったり速度が出なくなったりすると、業務に支障を生じさせたり従業員にストレスを与えてしまうことになる。しかし、解決のために呼び出されたIT部門や業者も、原因究明に悪戦苦闘。経路上に介在する全てが原因となり得るため、原因の切り分けが難しいからだ。
では、迅速に解決していくにはどうすればよいのか――。ZDNet Japan副編集長の田中好伸がネットワークテスタ「OneTouch AT G2」や無線テスタ「AirCheck G2」などを販売するネットスカウト システムズ ジャパン(以下、NETSCOUT)の杵鞭俊之氏に、よくあるネットワークトラブルの例や現状を聞いた。
ありがちなトラブルでも、原因の特定には時間がかかる
突然の通信トラブルに見舞われた際、その原因をすぐに見極めることができるだろうか。多くのエンドユーザーが認知できるのは、「今まで利用できていたサイトやサービスが利用できなくなった」ときだろう。端末の再起動などを試みるかもしれないが、それでも解決しなければ社内ITサポート担当者に頼ることになる。駆け付けたエンジニアは、まず問題の切り分けに取り掛かるが、そこで多大な時間を要してしまう。端末、イーサネットケーブル、無線LANのアクセスポイント(AP)やスイッチ、ルータ、DHCPなどのサービス、そしてインターネットアクセス回線、その先にあるサーバやクラウドサービスまで、経路上に介在する全てが原因となり得るからだ。
「もちろんローカルのネットワーク環境が問題であることは多いでしょう。しかし、中にはアクセス回線やクラウドなど自社で管理していない範囲にも原因がある場合もあります。そこで経験豊かな技術者なら、長く複雑な経路のどこで問題が生じたのかを、エンドユーザーからヒアリングしつつ推測し、コマンドを打ち込んだりしながら絞り込んでいくでしょう」(NETSCOUT)
左:ネットスカウト システムズ ジャパン 杵鞭俊之氏
右:ZDNet Japan 副編集長 田中好伸
ルータやデザリング――無線LANトラブル"あるある"
しかし、こうした作業を通じても、なかなか原因を特定できないケースがある。
例えば、一時的に無線LANの通信が遅くなったり切断されたりするが普段は問題ない、といった状況だ。解明するには同じ状況が再現されるのを待つしかなく、もしそれが不定期に発生するのであれば一筋縄ではいかない。通信チャネルの衝突など電波干渉の可能性が疑われるものの、ときたま来訪する人物が無線LANルータを持ち込んだりテザリングをしていたのが衝突の原因だったとしたら、その「現行犯」を待ち構えることは困難だ。結果として、やみくもにチャネル設定などを変更して様子を見る、といった場当たり的な対応になってしまうだろう。
また、以下のようなケースもある。
「ある学校で(無線LANを)旧型の802.11bから802.11b/g/n対応へ移行するためAPを入れ替えたところ、断続的にWebアプリを利用した通信にトラブルが生じるようになっていました。それまで利用していた複合機が、有線接続部分のみAPを介した延長接続となっており、旧APをそのまま残していたため無線の干渉が発生していたのです」(NETSCOUT)
トラブル発生当初設置したベンダーの方から相談を受けた際は、現象面のみしか通達されず状況が伝わってこなかった。Webアプリ利用時のみ症状が出ていたことから、アプリ側を先に確認する事を強く推奨した。設置に関わった業者の方が、何度も現地へ訪れていたが、らちがあかない状況であった。
部分的な施工を既存環境で行う事は少なくなく、関連している通信経路の状況や電子レンジ、コードレス電話など非Wi-Fiの状況も即座に把握できる装置があれば他業者の行った状況をも含め、確実に状況を把握し適切な対応が実施できるのだ。
チャネル衝突は自動設定でも発生する。全てのAPを一括管理する仕組みがあるならともかく、APごとの自動設定は多数のAPが設置されている環境においてトラブルメーカーとなるのだ。
「ある工場で、異なる部門が導入したAPが原因のトラブルがありました。後から導入された方が自動設定機能でチャネルを変えては衝突するという繰り返しで、そのたびに既存のAPと干渉していたのです」(NETSCOUT)