東日本大震災を契機に、企業の事業継続に対する認識は大きく変化した。とはいえ限られた投資予算を具体的にどう対策に振り分けていくべきかは、特に中堅中小企業にとって難しい課題だ。本記事は、震災を乗り越えて「事業継続」の実体験をした仙台のIT企業トライポッドワークスの佐々木社長を迎え、企業が備えるべきバックアップのあり方を考える。
また記事では、SMBでも導入が容易なバックアップソリューションの具体例として、幅広いITインフラの基礎製品と先端技術製品を取り扱うディストリビュータであるネットワールドが提案・販売を手がける「CA ARCserve(シーエー・アークサーブ)」シリーズを取り上げている。こちらは手軽に導入でき、運用も容易なのが特徴だ。佐々木社長も実際に試用しており、その感想も後半ではお伝えしたい。
トライポッドワークス株式会社 代表取締役社長 佐々木賢一氏
同社は2005年11月に宮城県仙台市で設立されたベンチャー企業で、主に企業向けのセキュリティアプライアンスやセキュリティソリューションを開発・販売を行なう。東日本大震災を乗り越えて業務を継続した。佐々木氏は震災復興のためのボランティアプロジェクト「ITで日本を元気に」のリーダーとしても知られる。
http://revival-tohoku.jp/
震災を振り返る
--まずは震災時の状況、震災前の事業継続に関する意識や、実際に講じていた対策とはどのようなものだったのでしょうか?
佐々木震災によって、仙台本社は少なからず被害を受け、1ヶ月半~2ヶ月ほどは通常業務もままならない状態となりました。
震災以前の事業継続の意識も高かったとはいえず、今にして思えば、地震などの大災害を前提としたBCPやシステムインフラの準備はかなり不足していたと反省しています。
ただ結果として、創業以来ロケーションフリーな事業体を指向し、仙台と東京の主要2拠点に加え、札幌や韓国・ソウルに拠点を分散していたことが業務継続につながり奏功しました。
トライポッドワークス株式会社社長 佐々木賢一氏
また当社自身がインターネットを活用して大容量のファイル送信・共有が可能なオンラインストレージ製品やソリューションなどをお客様に提供していますので、社内のデータもクラウド環境に置いていたことも幸いしました。
ファイルサーバやメールサーバも東京や横浜に分散配置していたため、基幹業務が止まることはなく、またiPhoneやiPadなどのスマートデバイスを社員全員に配布していたこともあり、停電になっても社内の業務システムやメールサーバにアクセスすることが可能でした。当時、仙台市内は携帯メールの機能は停止していましたが、3Gのパケット網は使える状態だったのです。
コミュニケーション可能な手段を持っている企業と、持っていなかった企業とでは、震災直後の安否確認、業務復旧に向けた重要な時期に、大きな差が生じたと思っています。
震災後の意識変化
--震災を経験したことで得られた教訓や、事業継続に対する意識はどのように変化したのか聞かせてください。
災害への準備も必要ですが、災害が起きた時しか行わない対策をいくら準備してもあまり意味を持たないのではないかと言うのが実感です。業務データのバックアップシステムについても、日頃から活用していなければ、万一の災害時に有効に働かないという可能性もあります。災害時にも問題なく使えるようにするためにも、普段から利用しておくことが重要です。
通信が遮断され、陸の孤島になった場合、本来その拠点で行われていた業務そのものをどうやってバックアップするのかも大切です。企業存続を左右するデータや情報資産をどう管理すべきかを考えても、事業継続は別の話です。いくらデータが保全できても業務体制が損なわれていればオペレーションはできません。データのバックアップと業務のバックアップは車の両輪の関係にあると思います。
「非常時にできるのは、日々身体に刷り込まれた習慣行動だけだと実感」