自然災害が続くなか、ますます重要性が高まるITシステムのBCP(Business Continuity Plan)/DR(Disaster Recovery)対策──。その遂行の一手としてクラウドソリューションへの期待が膨らんでいるが、そこにも課題が少なくないようだ。ZDnet Japanが実施したアンケート調査の結果から、今求められる「クラウドDRサービス」を探った。
BCP/DRの実施を阻む障壁
先の東日本大震災を受けたかたちで、日本企業の間でもITシステムのBCP/DRに向けた動きが活発化した。それから5年、毎年のように発生する自然災害と向き合いながら、多くの企業が自社に適したBCP/DRのITソリューションを求め、検討を重ねてきた。そんななか、改めて浮かび上がってきたのがBCP/DRを遂行することの難しさだ。
朝日インタラクティブは2016年5月から6月にかけて、「企業のBCP/DR(災害時の事業継続・災害復旧)への対応状況と課題についてのアンケート」を実施した。その調査結果からは、企業の多くがBCP/DRにさまざまな課題を抱えている実態が浮かび上がっている。
その調査結果でまず目を引くのは「自社ITシステムのBCP/DRの実施状況」だ。その実施状況を、東日本大震災との関係性を軸に尋ねたところ、「東日本大震災以前から行っていた」「東日本大震災を機に行った」と答えた回答者の割合は全体の51.4%に達した(図1参照)。
図1:ITシステムにおけるBCP/DR対策の実施状況
Q:自社ITシステムのBCP/DRについて、現在の状況を教えて下さい。(単一回答)
この結果は、東日本大震災を境にITシステムのBCP/DRの必要性・重要性を認識し、その実施に乗り出した企業が急速に増えたことの表れと言えるが、一方で、「検討したが対策は実施していない」「興味はあるがどうしてよいか判らない」「検討を行ったことはない」の合計も31.6%に達している。つまり、およそ3社に1社が、BCP/DRに依然、乗り出せていないことになる。
また、従業員数100名未満の企業になると、BCP/DRの実施率はさらに低下し、「東日本大震災以前から行っていた」「東日本大震災を機に行った」と答えた回答者の割合は28.9%と3割を切り、逆に「検討を行ったことはない」とする向きが27.7%と3割近くに達している。これに、「検討したが対策は実施していない」(12.0%)、「興味はあるがどうしてよいか判らない」(16.9%)を足すと、BCP/DRを実施していない企業の割合は56.6%に上っている(図2参照)。
図2:ITシステムにおけるBCP/DR対策の実施状況(従業員数100名未満の企業の場合)
Q:自社ITシステムのBCP/DRについて、現在の状況を教えて下さい。(単一回答)
最大の障壁はコスト増
言うまでもなく、こうした企業がITシステムのBCP/DRに必要性を感じていないわけではない。それは、「検討したが対策は実施していない」「興味はあるがどうしてよいか判らない」の合計が、従業員100名未満の企業で3割近く(28.9%)に上り、全体でも2割を超えている(22.6%)ことからもよく分かる。
ならば、多くの企業がBCP/DRを実施できずにいるのはなぜなのか──。今回の調査結果からは、その背後にある課題を読み取ることができる(図3参照)。
図3:BCP/DR対策上の課題
Q:自社ITシステムのBCP/DRを検討する上で課題となるのはどのようなことですか?(複数回答)
この図3にあるとおり、ITシステムのBCP/DRを巡る課題として特に多かった回答は、「運用コストの増大」(63.5%)と「設備コストの増大」(62.2%)の2つだ。それに「セキュリティの確保」や、BCP/DR対策の実施・運用の技術的なハードルの高さ、人的リソースの不足といった問題が続くかたちとなっている。また、こうした傾向は100人未満の企業の場合でもほぼ同様に見られている。