BPMに必要なものすべてをオールインワンで提供
BPMを小さく始めて徐々に全社規模に拡大していく際に、重要となるのがBPM基盤だ。単純にシステムを連携させるだけならば、BPM基盤を構築せずにSOA技術などで連携するのは難しくない。とはいえ、実際のビジネスプロセスは、ITシステムだけで廻っているわけではない。なんらか人の介入があるのが普通で、人による承認プロセスもその1つだしシステム処理結果を見て判断してから次のシステムで処理するなどもある。こういった人とITシステムの処理を、1つにしてプロセス連携ができなければ真の効率化は望めない。そのためには、BPM基盤を軸に人のプロセスもシステムのプロセスも柔軟に連携できる必要がある。
さらに、変化への柔軟な対応も重要。一度つなぐとその変更に新たなプログラミング作業がいるようでは、変化に迅速に対応できない。簡単な操作や設定だけで、プロセスの変更や追加ができる仕組みも必要だ。そして、小さく始めて拡大するとなると、BPM基板をきちんと構築しておきそこに柔軟にプロセスを追加できる必要もある。プロセスを増やすたびにBPM環境を構築し直したり、先に構築したプロセスとの連携に多大な手間がかかったりするようでは、徐々にBPMを拡大するなんて到底できない。
Oracleでは、これら課題をすべて解決できる最新のミドルウェア群を提供している。それが、Oracle Business Process Management Suite 11gだ。中村氏は「BPM実現に必要なものすべてを、オールインワンで提供していることが重要です」と言う。システム間連携機能だけ、ワークフロー構築だけといったように単機能の寄せ集めではうまくいかない。それらが柔軟に融合していなければ意味がないのだ。
さらに、プロセスの各シーンにおいて、適切に状態をモニタリングできる機能も必要だ。いくら連携が自動化していても、それがブラックボックスではだめ。状況が正確かつリアルタイムに把握できることも、プロセスの効率化や改善のためには重要だ。そしてOracleでは、これらすべてを1つのSuite製品として提供することで、一元的なUIを用い、簡単に設定し管理できるようにしている。
小さく始めてまずはBPMの効果を現場が実感することが鍵
BPMのソリューションとして、とくにビジネスプロセスを設計し具体的なフローチャートに落とし込むところには、Oracleは大きな優位性があると中村氏は言う。これまでBPMでプロセス連携する際には、何かしらのプロセス・モデリングツールを用いてプロセスを書き出し、ITシステムとして実装するところで、BPELに変換することが一般的だった。しかしながらBPELでの記述はあまり柔軟性がなく簡単ではない。
「最終的にBPELに変換する必要がある場合、最初に自由に記述したプロセス図があったとしても、BPELに変換する際に書き直しが発生してしまう可能性があった。このような手戻りを防ぐためには、最初のモデリングの時点から、BPELを考慮した記述を行う必要があり、非ITユーザにとってはモデリングしにくく、敷居が高くなってしまっていた」と中村氏。BPELでは、結果的にはかなりの手戻りが発生していたのだ。
これに対しOracle BPM Suite 11gでは、非ITユーザであっても、比較的容易にプロセス・モデリング可能な記述方法として注目されているBPMN(Business Process Modeling Notation) 2.0に、世界で初めてネイティブ対応することで、プロセス・モデリングからITシステム化に至る実装作業までを大幅に効率化している。BPMN 2.0は、ビジネスプロセスをワークフローで表記するための国際標準規格。Oracleが提供するツールを用いれば、容易にXMLベースのBPMN2.0でモデリングでき、その結果はそのまま無変換でBPM基盤上でネイティブ実行できるのだ。これにより、人のプロセス、ITシステムのプロセスを1つに記述し、それを反映したBPMシステムが手戻り無く、素早く構築できる。この容易さは、変化への柔軟な対応にもつながる。
実際に、Oracle BPM Suite 11gを活用し、3ヶ月足らずでBPMパイロットプロジェクトを実施した事例があると中村氏は言う。「関わった業務ユーザーは、2ヶ月ちょっとでプロセスが自動化したことに驚いていました」とのこと。この結果が評価され、この企業では全社規模のBPMプロジェクトが走り出している。
「BPMは、別の言い方をすれば、企業のアプリケーション開発アーキテクチャを提案することです」と中村氏。とはいえ、一足飛びにこれを実現しようとするのではなく、まずは効果の出やすいところから始め、それを現場が実感すべきだと指摘する。そして、BPMを小さく始める際には、後の拡大をスムースに行えるよう、きちんとしたBPM基盤を当初から導入しておくことが鍵となる。「まずは、アプリケーションの構築時やERPのリニューアルなどをきっかけに、スコープを区切って、小さく素早く始めるBPMを検討してみてはいかがでしょうか」と中村氏は提案した。