爆発的に普及が進むスマートデバイスをビジネスに生かす――これは多くの企業が取り組む課題だ。その課題解決を支援すべく、オラクルが提供しているソフトウェア・スイートが「Oracle Mobile Suite」だ。ここでは、同スイートの特徴と導入メリットを、事例を交えながら紹介する。
Java/SOAベースの革新フレームワーク
スマートデバイスの利活用を目指し、ビジネス・アプリケーションを開発する場合、大きく以下の3点が課題として浮上してくる。
- 既存のデータやサービスをモバイルでどう活用していくか
- 多種多様なデバイスにどう対応していくか
- セキュリティをどう確保するか
オラクルの「モバイル・プラットフォーム」は、これら3つの課題を、可能な限り少ない投資で、短期に解決するためのソフトウェア群から成る。その中の1つが、「Oracle Mobile Suite」であり、これは上記 1. と 2. の課題を一挙に解決するためにパッケージ化されたスイートである。
Oracle Mobile Suiteを構成するのは、中核のソフトウェアであり、Java/HTML5を用いた開発フレームワークである「Mobile Application Framework (MAF)」と、SOAベースのエンタープライズ・サービス・バス「Oracle Service Bus」である。MAFは、「ワンタイム・デベロップメント(シングルソース)、マルチデバイス対応」を実現する開発プラットフォーム。その採用によりユーザーは、Javaベースの標準的で一貫した環境の中で、「Web(Webベースのモバイル・アプリケーション)」と「ネイティブ(デバイス・ネイティブ対応のアプリケーション)」双方の良さを合体させたハイブリット・アプリケーションを効率的に開発し、またメンテナンスしていくことが可能になる。
一方、Oracle Service Busは、既存アプリケーション/データのモバイル展開を低コスト、かつスピーディに実現するインテグレーション基盤である。SOA技術によって既存アプリケーションの機能の切り出し(サービス化)やモバイル展開を効率化。社内システムとモバイル・デバイス間での軽量プロトコル(JSON/REST)通信を確立するほか、モバイル上で公開する社内データの絞り込みなどを簡素化する。また、社内システムにアクセスするモバイル端末が増え、データ流量が増大した際も、リソースをダイナミックに拡張し、社内システムの影響を与えずに一定のレスポンス性能を確保することも可能としている。
GUIベースの設定でハイブリットアプリをスピード開発

智野 潤子 氏
日本オラクル
Fusion Middleware事業統括 ソリューション本部
インテグレーションソリューション部
シニアセールスコンサルタント
周知のとおり、今日では、モバイル・アプリケーションの開発用として、さまざまなオープンソース・フレームワークが提供されている。その1つであり、クロスプラットフォーム対応アプリケーションの開発フレームワークとして広く用いられているのが「Cordova」である(MAFでも内部的にこのフレームワークを採用している)。ただし、Cordovaは、ユーザー・インタフェース(UI)部分まではカバーしていない。そのため、Cordovaを用いる場合、他のオープンソース・フレームワークを組み合わせながらアプリケーション全体を開発していくことになる。
対するMAFは、すべてがオラクルのJava VMで動作する、一貫性を持ったフレームワークとして設計されている。そこには、バラバラのフレームワークを使う煩雑さはなく、UIや画面遷移の定義から、業務ロジック呼び出し、さらには、デバイス機能の呼び出しに至るまで、すべてがGUI上でビジュアルに設定できる。例えば、MAFには、スマートデバイス用のアプリケーションで一般的に用いられるGUIコンポーネント(リストビューやグラフ、マップなど)が豊富に用意されているほか、どの業務データをスマートデバイス画面に表示させるかの設定もGUIベースで行える。さらに、デバイスの機能も――他のJavaオブジェクトを呼び出すのと同様に――ドラッグ&ドロップを中心にした画面への配置と設定で利用可能になる。さらに、スマートデバイス向けの組み込みデータベースへのアクセスについても、専用の特殊なAPIではなく、Javaの標準的なAPIを介して行えるほか、AndroidとiOSという2つのプラットフォームに向けたプッシュ通知の機能も、シングルソースで対応することができる。
「MAFの最大の利点は、Javaによるビジネス・アプリケーション開発のノウハウやフレームワークをそのまま、モバイル・アプリケーションの開発に転用できることです。これにより、例えば、MVCフレームワークをモバイル・アプリケーションの開発に適用することが可能になり、開発・保守の現場の生産性はグンと高まるはずです」(日本オラクル、智野 氏)。