
2013年11月、米Oracle Corporationは、モバイルアプリケーション管理(MAM: Mobile Application Management)ソリューションを開発・販売するベンチャー企業である米Bitzer Mobileを買収することを発表した。BitzerのMAMソリューションは、個人所有のモバイル端末(BYOD:Bring Your Own Device)を使い、企業データやアプリケーションへのセキュアなアクセスを可能にする。1月にBitzer Mobileの買収は完了し、現在はOracle Mobile Security Suiteとして販売を開始している製品である。
来日した米Oracleのモバイルセキュリティ担当のシニアディレクターであるアンディ・スミス氏に、グローバル市場におけるBYOD活用のトレンドから、急速な普及拡大が予測されるBYODへの企業の取り組み、BYODの導入にあたりシステム担当者が考慮すべきポイントとOracleが提案できること、そして今後の日本企業のあるべき姿について話を聞いた。
米国企業の74%がすでにBYODを採用
--グローバルにおけるBYODのトレンドについて聞かせてください。
現在、非常に強力なモバイル端末が市場に投入されています。このモバイル端末が企業システムや日々の業務で使われるようになっています。2015年までに25種類以上のアプリケーションをモバイル端末で活用するようになると答えているCIOは90%以上であるという調査報告もあります。
また同じく2015年までに、モバイルアプリケーションが利用される割合が、PCアプリケーションの4倍程度になるという調査報告もあります。モバイル端末は、さらなる可能性も秘めていますが、その一方でモバイル端末が普及拡大していくためには、解決すべき新たな課題も残っています。
たとえば米国では、74%の企業がBYODを採用しています。しかしモバイル端末を使って、ユーザーが何をしているのかを完全に把握しているCIOは10%に満たないという調査報告があります。課題となっているのは、社員1人ひとりがモバイル端末上の企業データを、いかにセキュアに保つことができるかということです。
この課題を解決することを目的に、過去5年間、新しいテクノロジーが次々と登場しています。しかし、新しく登場したプラットフォームは、サイロ型で個々に独立しており、既存の企業システムと統合できるものではありませんでした。また、システムの開発や運用、管理に、非常に多くのコストが必要な仕組みでした。
会社支給の端末でも、ソーシャルメディアや写真管理、株取引など、個人利用のアプリケーションを導入できます。この問題に対応するには、大きく2つの方法があります。まず1つがモバイルデバイス管理(MDM)です。MDMは企業のポリシーに基づき、このアプリケーションは使える、これは使えないなど、すべての端末をコントロールします。
MDMによりセキュアなモバイル環境を実現できますが、プライバシー情報も含まれたすべてを会社にコントロールされることをユーザーは望んでいません。そこで注目されているのが2つ目の方法であるMAMです。MAMは、端末を個別に管理するのではなく、アプリケーションをまとめて管理するための仕組みです。
Oracleは、お客様が抱える課題をMAMソリューションで解決することを目的にBitzerの買収を決め、現在はOracle Mobile Security Suiteとして提供しています。
--Bitzerの買収の背景について聞かせてください。

Oracleでは、モバイルセキュリティをアイデンティティ管理の拡張型と考えています。Oracleでは、モバイルセキュリティ分野の強化を目的に関連企業を買収することを決めたとき、モバイルセキュリティのあらゆる会社を調査しています。調査についてOracleのSVP、アミット・ジャスジャは、次のように語っています。
「BitzerのMAMソリューションは、すでにOracleが提供しているアイデンティティ管理製品と同様な機能をモバイルセキュリティ製品として提供していることが分かりました。ウェブリソース、デスクトップリソースだけでなく、モバイルリソースに対するアクセス権限を付与することもできます」
Oracleのアイデンティティ管理とBitzerのMAMソリューションの統合により、コスト削減や応答性、反応性の向上などの効果が期待できます。IBMがFiberLink Communicationsを、VMWareがAirWatchを買収したことからも、いまやモバイルセキュリティは、より大きなテクノロジーのスタックに組み込まれつつあることは明確な事実なのです。