運用の自動化はインフラの標準化から
一方、レッドハットの森若和雄氏(グローバルサービス本部 ソリューションアーキテクト部 ソリューションアーキテクト)の講演も人気を集めたセッションの一つだ。演題は、『Red Hat Enterprise Linux運用自動化のキモ』。講演では、RHELの運用を自動化する「Red Hat Satellite」の話を軸に、システム構築・運用を自動化するうえでのポイントが示された。
Red Hat Satellite は、RHELシステムのプロビジョニング、設定管理、ソフトウェア管理、サブスクリプション管理を単一のコンソールから実行できるツールだ。このツールを用いれば、例えば、物理・仮想化、パブリック/プライベートクラウドといった、あらゆる環境のプロビジョニングを単一コンソール/単一プロセスで実行できる。とはいえ、「システムの構築・運用の自動化は、単なるツールの導入で完結するような単純な話ではありません」と、森若氏は語り、こう続ける。
「自動化の実現には、中長期的な視点でのシステムの標準化が不可欠です。RHELの最新版を導入してトラブルが起きた場合も、古いRHELに置き換えてごまかすのではなく、標準環境に手を加え、発展させていくことが求められるのです」
例えば、アプリケーションの負荷が高まり、サーバを一つ追加する必要に迫られたとする。「その際、ネットワークの設定や仮想マシンの準備、仮想マシンに対するソフトウェアのインストール、ロードバランサへの登録といった一連のプロセスが自動化されているのが理想的でしょう。標準環境を整えながら、そうした自動化を実現していくことが肝心なのです」と、森若氏は説明を加える。
さらに同氏は、標準化と自動化の重要性について、次のようにも説く。
「大規模システムの標準化は大変な作業ですが、それを推し進め、自動化を図らない限り、IT組織はますますきつくなっていきます。また、OpenStackに代表される今日のクラウド基盤技術も高度に自動化された運用を目指して作られています。システムの構築や運用の自動化は、単に、IT運用管理の負担やコストを減らすだけはなく、ITの俊敏性やセキュリティの向上にも貢献する重要な活動なのです」
OpenStackとDockerの絶妙なコンビネーション
森若氏が言及したOpenStackと、前出のDockerの活用法に照準を絞ったセッションを展開したのが、レッドハットの中井悦司氏(グローバルサービス本部 シニアソリューションアーキテクト クラウドエバンジェリスト)だ。同氏は、『Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform環境でのDocker活用テクニック』と題したセッションの中で、両技術の連携手法をデモを交えて紹介した。具体的には、OpenStack環境上でDockerを動作させ、「DockerデーモンにMySQLのイメージをダウンロードさせてコンテナ上で起動する処理」や、「コンテナでNode.js(サーバサイドJavaScript)アプリケーションを起動する処理」などを披露したのである。
「このようにOpenStackとDockerを組み合わせて用いてみると、『仮想マシンを生成してインフラを整える』というOpenStackの役割と、『整ったインフラの上にアプリケーションをデプロイする』というDockerの役割が明確に分離されていることが分かります。つまり、この2つの技術は、絶妙な役割分担の中で連携できるというわけです」
また、中井氏はDockerのメリットについても言及した。そのメリットは大きく2つあり、一つは、「アプリケーションのインストールとデプロイを簡単かつ安全に行えること」、もう一つは、「多数のサーバを束ねて、多数のコンテナを連携させられること」であるという。「この後者のメリットを生かすうえでは、数多くのコンテナを管理する必要が出てきますが、その課題解決には、Docker管理のフレームワーク、Kubernetesを使うことをお勧めします。レッドハットのOpenShift EnterpriseにもKubernetesが実装されていますので、こちらを採用するのも一手ではないでしょうか」と、中井氏は語っている。