レッドハットの他製品との統合も急ピッチで進む
Ansibleがレッドハットのプロダクトラインに組み入れられてから、それほどの歳月は経過していない。それでも、レッドハットの他製品との統合化が急ピッチで進められ、すでにAnsibleは、レッドハットのITマネジメント系の製品ポートフォリオを構成するキープロダクトの1つとなっている。

レッドハットのITマネジメント系プロダクトポートフォリオ
また、Ansible機能の取り込みによって、「Satellite」「CloudForms」「Insight」などのマネジメント製品は下記のように強化されてもいる。
●Satellite:大規模デプロイに対応するライフサイクル管理製品。Ansibleによってインベントリ情報などを用いたさらなる自動化が可能になる。
●CloudForms:ハイブリッドクラウドに対応したサービスデリバリ製品。Ansibleとの統合によって、Playbookを同システム上で動作させられるようになる。
●Insights:Linuxに関するレッドハットの豊富な知見をベースに開発された製品で、障害予測などのシステム診断を行う。このシステムと、Ansible Tower(3.1.2以降)が統合化され、障害予兆に対応したPlaybookを自動実行するという「セルフヒーリング(自己治癒)」の仕組みが実現する。
加えて、ITマネジメント系以外のレッドハット製品や他社ソフトウェアとAnsibleとの統合化も進みつつある。一例が、「OpenShift Container Platform」との統合だ。これにより、コンテナの構成をPlaybookで記述することが可能となり、「dockerファイルよりも、記述内容が分かりやすくなります」と、クレイマー氏は説く。
さらに、レッドハットによる買収以降、企業・組織によるAnsibleの採用に弾みがつき、Ansibleを大規模に利用するユーザーの裾野も拡大しているようだ。
例えば、米国航空宇宙局(NASA)では、Amazon Web Services(AWS)上で運用している同局のさまざまなWebサイト/アプリケーションをAnsible Towerで制御、サイト/アプリケーションの更新・パッチ適用などに要する時間を大幅に短縮させた。

こうした事例を示しながら、クレイマー氏は、企業にとってのAnsible活用の重要性・必要性を改めて次のように説く。
「今日、デジタルテクノロジーによる破壊的イノベーションのうねりが、さまざまな業界で巻き起こり、企業を取り巻くビジネス環境はかつてないほどのスピードで変化しています。こうした中で企業が勝ち残っていくには、ビジネスとITの俊敏性を高め、変化への即応力を身に付けることが不可欠でしょう。そのためにはIT運用管理の業務負荷を極小化し、IT部門の人的パワーをより戦略的なサービス作りや改善に振り向けなければなりません。だからこそ、Ansibleが必要で、それを求める企業が増え続けています。
Ansibleならば誰もがすぐに自動化に取り組むことができ、自動化することが当たり前の文化として組織に定着していくのです」
デジタルイノベーションの潮流の中で、重要性をますます高めるAnsible。その動きからは今後も目が離せそうにない。