ビジネスのデジタル化により、日々刻々と膨大なビジネスデータが生み出されている。企業は、この膨大なデータから変化の潮流を素早く把握し、適格な意思決定を行う必要がある。そのために、ビッグデータ技術やクラウドを活用したソリューションが効果を発揮するとされてきた。
しかし、事業部門や現地法人・中堅企業におけるビジネス分析環境は整っているだろうか。実は、事業部門や海外拠点・中堅企業におけるビジネス分析と意思決定にアナログなところが残っている組織は少なくない。また、経営判断は本当にスピードアップしているだろうか。ビジネス分析と意思決定の場が分断されているために、事前の準備に膨大な時間と手間を割いている場合も多い。
今回は、このような課題を解決できる、新たなSaaS型アナリティクスソリューション「SAP BusinessObjects Cloud」について紹介しよう。
ビジネスのデジタル化の波が、事業部門や現地法人・中堅企業に押し寄せる
生産・流通・販売など多くのビジネス活動のデジタル化が進んでおり、日々刻々と膨大なデータが生み出されている。このようなデータには、販売管理システムやERPに蓄積される定型データもあれば、ネットやモバイル分野のマーケティング情報といった膨大な非定型データもあるだろう。
だが、データは、それだけで価値を生み出さない。収集・蓄積されたデータを整理してインフォメーションを生み出し、さらにインテリジェンスとして意味を抽出して、そこからアクションを起こすことが重要なのだ。
企業活動において、このようなビジネス情報の活用は、長足の進歩を遂げており、データウェアハウス(DWH)やビジネスインテリジェンス(BI)と呼ばれるデータ分析ソリューションの活用が進んできた。クラウドを利用した、ビッグデータの蓄積も進んでいる。
けれども、まだまだアナログ部分も残されている。例えば、事業部門や現地法人・中堅企業におけるビジネス分析と意思決定の環境は、決して潤沢ではない。本社と同様の分析環境を整えたくても、オンプレミスのサーバー運用の負荷が重く、結果として、エクセルやパワーポイントで作成した資料で、事業部門会議に臨むことになる。
また、本社においても、多くの場合、ビジネス分析と意思決定は分断されたままになっている。事業部門の分析担当者らが多くの時間を割いてエグゼクティブ向けの経営分析資料を作成し、それを経営会議の場に持ち込んでディスカッションして意思決定を行う。不明点が出てきたり、別の視点での分析を求められたりすれば、持って帰ってまた分析と資料作りをやり直すことになる。
これでは、スピーディーな意思決定はおぼつかない。
求められるのは、現在抱える膨大なビジネスデータを活用しながら、素早く利用できる、ビジネス分析と意思決定の支援環境ではないだろうか。
素早く利用できる、ビジネス分析と意思決定の支援環境
「このようなお客様の課題に応えるため、新たなSaaS型アナリティクス『SAP BusinessObjects Cloud』を提供しています」
SAPジャパンの瀬尾 直仁氏
(プラットフォーム事業本部 ビジネス企画部 シニアソリューションプリンシパル)
このように語ってくれたのは、SAPジャパンの瀬尾 直仁氏(プラットフォーム事業本部 ビジネス企画部 シニアソリューションプリンシパル)である。
このソリューションには3つの特徴があるという。
「まずは、SAPが特に力を入れているSAP HANA Cloud Platform上で提供されるアナリティクスソリューションであるという点です。インメモリ技術により、大量データを瞬間的に解析する機能を備えながら、スケーラビリティと堅牢性に優れています。そして、現地法人や中堅企業でも、オンプレミスのように自分たちでサーバーを管理することなく、アナリティクスソリューションを利用できます。また、平均して数か月以上の導入期間が必要になるオンプレミスのソリューションと比較して、その日から活用できる点も見逃せません。
2つ目の特徴は、さまざまなシステムやデータと透過的な連携に優れている点にあります。SAP S/4HANA, Cloud EditonなどのSAPのクラウドソリューションとの連携はもちろんのこと、SAPではない他社ソリューションやパートナー企業が展開する様々なクラウドソリューションとの連携が可能になります。(SAP S/4 HANA, On-premise Editionとの連携は2017年初旬に予定)そのため、すでに自社内で蓄積してきた様々なデータを分析対象にできるのです。
3つ目の特徴は、とても使いやすいデータ分析とプレゼンテーション機能を持っている点です。システム部門に頼ることなく、事業部門のスタッフが自分たちでデータ分析を進めると共に、エグゼクティブの会議で"ここはどうなっているのか"という時に、タッチパネルを組み込んだ大型ディスプレイでデータを展開していきながら、ディスカッションを進めることができます」
このような特徴から、これまでアナリティクス環境を使ってこなかった、事業部門や現地法人、中堅企業に最適なアナリティクスソリューションとなっているのだ。
データ分析から予算管理・予測分析・可視化まで豊富なソリューションを提供
『SAP BusinessObjects Cloud』では、次のような4つのアナリティクスソリューションを提供している。
- SAP BusinessObjects Cloud for business intelligence
- SAP BusinessObjects Cloud for planning
- SAP BusinessObjects Cloud for predictive analytics
- SAP Digital Boardroom
まず「SAP BusinessObjects Cloud for business intelligence」は、データ分析・統合ソリューションである。エクセルライクなインターフェースを利用し、参照したいデータの行/列を指定するだけで、情報の参照を行うことが可能となっている。また、勘定科目階層に従ったドリルダウンや、直観的なフィルタリング操作により、ほしい情報をすぐに確認することができる。さらに、一般的なグラフや表に加えて、地理情報サービスであるESRIとシームレスに連携し、地図を利用した表現も可能だ。
2番目の「SAP BusinessObjects Cloud for planning」は、予算・計画管理ソリューションである。予算策定とレポーティングとダッシュボードの機能を、ひとつのSAP HANA Cloud Platform上に構築しており、シームレスに連携している。そのために、直接データを入力することができるし、予算計画と実績値を比較しながらレポートを作成することも可能だ。また、オンプレミスの予算管理ソリューション(SAP BusinessObjects Planning and Consolidation)ともシームレスにデータを出し入れできる。従来からあった、特定フォーマットのExcelシートを入力してもらって回収するといった複雑な運用をしなくても、クラウド上のフォーマットに直接入力してもらうだけで済んでしまう。ワークフローとバージョン管理機能もあるので、シンプルで確実な運用が可能になるのだ。
3番目の「SAP BusinessObjects Cloud for predictive analytics」は、予測分析ソリューションである。過去の経緯から、数か月先・数日先の上振れと下振れを自動計算して、それをデータセットに自動的に反映する。そのおかげで、たとえば第3四半期の着地予想や、予算策定時の時系列予測が可能になる。さらに、機械学習による探索的分析をサポートした、インフルエンサー分析も備えている。
4番目の「SAP Digital Boardroom」は、ダッシュボード・可視化ソリューションである。たとえば、エグゼクティブの会議で"ここはどうなっているのか"という時に、タッチパネルを組み込んだ大型ディスプレイでデータを展開していきながら、ディスカッションを進めることができる。課題に対して瞬時に的確な情報にアクセスすることで、会議の事前準備や個別議論の排除し、スピーディーな意思決定を可能にするのだ。
想定できるユースケースと導入企業
こうしたアナリティクスソリューションには、次のような利用場面が想定できるという。たとえば、会計部門において、SAP S/4HANAとリアルタイムに連携したレポーティングの迅速化が可能になるだろう。また、このような動的なレポートをエグゼクティブ会議で活用すれば、その場でデータセットを修正したりシミュレーションしたりしながら、ディスカッションを進めることで、スピーディーで密度の高い情報共有と意思決定が実現できるだろう。
すでに、イーストマンケミカル社やライブオークバンク社などで『SAP BusinessObjects Cloud』の活用が始まっている。また、アジアを基点とするグローバルコンサルティングファームであるアビームコンサルティング社でも、『SAP Digital Boardroom』を活用し、財務計画とリスク分析の変革を進めている。
ビジネスのデジタル化によって膨大なデータが生み出される中で、事業部門や現地法人・中堅企業におけるビジネス分析と意思決定の環境を整備していくことが不可欠になっている。また、ビジネス分析と意思決定の分断を解消して、変化の激しいビジネス状況に素早く的確に対応していくことが求められていることは、読者も感じているだろう。
『SAP BusinessObjects Cloud』は、そのための効果的な解決策となるはずだ。
より具体的なソリューションの中身にについては、次ページ『未来の エグゼクティブ会議を想像したら、SAP Digital Boardroomで実現可能だった』で紹介しているので読んでほしい。