「クラウドファースト」が当たり前になる中で、クラウドを活用する上での考え方も理解が進んでいる。特に、共通のクラウド・アプリケーション・プラットフォーム上で動作するクラウド型ビジネスアプリの相乗効果に、あらためて注目が集まっている。セールスフォース・ドットコムのキーマンが示す、ユーザー企業やパートナー企業におけるクラウド・アプリケーションの活用動向だ。
当たり前になってきたクラウドファースト
企業の活動を支えるIT活用において、最初からクラウドを考慮する「クラウドファースト」 が当たり前になってきた。市場調査会社のIDC Japanは、ユーザー企業が2017年度に導入/刷新を検討しているシステムの導入(予定)形態として、クラウド(IaaS、PaaS、SaaS)がオンプレミスを上回るとしている[※1]。また、その利用分野も、IaaSは運用面で、SaaSは部門利用や機能補完で、PaaSは基幹系データの本格活用に向けた取り組みで利用という回答が多くなっているという。
このようにクラウドの利用が進む中で、あらたな課題も浮かび上がってくるであろう。例えば、IaaSでシステムを構築・運用する場合、アプリケーション部分を自社で構築し、それを従業員や顧客に提供することになる。つまり、アプリケーションサービスを自社で提供する必要があるのだ。この場合、アプリケーション部分のセキュリティ対策なども、自社で作りこむことが不可欠であろう。構築したアプリケーションが、クラウド上にあるにも関わらずレガシー化していくといった事態も、今後増えていく可能性もある。
そこで注目を集めるのが、クラウド・アプリケーション・プラットフォームで開発・提供されるアプリケーションである。
中でも、クラウドサービスのリーディングカンパニーであるセールスフォース・ドットコムは、営業支援やカスタマーサービスなどのSaaS型のビジネスアプリケーション群を提供すると共に、アプリケーションを開発するPaaS基盤として「Force.com」を提供。1500社に上るパートナーと共に、約3000本のアプリを「AppExchange」と呼ばれるマーケットプレイスからリリースしている。
そこで、セールスフォース・ドットコムのキーマンから、ユーザー企業やパートナー企業におけるクラウド・アプリケーションの活用動向について詳しい話を伺った。
お客様の成功のために、役に立つツールをクラウドで提供
「私どもが創業以来、ずっと大切にしてきたことは、お客様の成功、つまり"カスタマーサクセス"です」
このように話すのは、セールスフォース・ドットコムの北原 祐司氏(執行役員 アライアンス本部 AppExchangeアライアンス部長)である。
「そのために、SaaSと呼ばれるクラウド型ビジネスアプリケーションや、PaaSと呼ばれるクラウド型アプリケーション・プラットフォームを提供してきました。セールスフォースという社名から、営業支援ツールやカスタマーサービスツールを提供する会社という印象を持っている方も多いと思いますが、それだけでなく、Salesforceアプリを除いたクラウドインフラを、ユーザー企業の活動を支えるアプリケーションを開発・提供するプラットフォームとして、Force.comを提供しています。

北原 祐司氏
セールスフォース・ドットコム
執行役員 アライアンス本部
AppExchangeアライアンス部長
さらに、マーケットプレイスである「AppExchange」では、経費精算やグループウェア、特定業界向けのアプリケーションなどをパートナー企業が提供しています。もちろん、お客様自身が独自のアプリケーションを個別開発することも簡単です。自社開発のアプリを自分たちの得意とする業界向けに提供する企業も増えてきました」(北原氏)
例えば、神奈川県・鶴巻温泉にある、大正7年創業の老舗旅館"陣屋"は、Force.com上に旅館・ホテル用の予約業務・顧客管理システムを自社開発して、お客様へのきめ細かなサービスを効率よく提供すると共に、陣屋コネクトという名前でAppExchangeアプリとして提供しているそうだ。

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「AppExchangeは、このようなクラウド型ビジネスアプリケーションのアプリストアです。スマートフォンでアプリを探すような感覚で、クラウド型ビジネスアプリを評価したり導入したりすることができます。すでに、Salesforceアプリをご利用のお客様であれば、ボタンをクリックするだけで、使い始めることができるのです」(北原氏)