機械化でITの無駄を排除する
小川:もう一つ、vR Opsのようなテクノロジーを使うことで、IT運用管理におけるレポーティング(定型レポートの作成・提出)業務の負荷が減ることも大きなメリットだと感じています。今、運用管理のエンジニアがやらされているレポーティング業務は、大切ですが、決して「生産的」な業務とは言えませんし、欧米では現場のエンジニアが定型的なレポーティング業務に時間を掛けることはまずありません。というのも、欧米の企業には、保守・運用管理にせよ、レポーティングにせよ、会社の業績にほとんど直接的な影響を与えない業務は、極力、機械化・自動化してしまい、エンジニアにはもっと生産的な業務、あるいは、人にしか出来ないようなクリエイティブな業務に当たらせるといった合理的な考え方が根づいているからです。
これは、日本の企業にとっても理にかなった考え方と言えますし、とりわけ、IT要員が少ない中堅・中小の企業の場合、ITの保守・運用管理、あるいはそれに付随するレポーティングといった非生産的な業務は、可能な限りテクノロジーに任せてしまうのが得策と言えるのです。
桂島:まったく同感です。Excelを使うよりも、ツールで自動化するほうが、レポートの質も上がるケースが多いですしね。
レポーティングが自動化されていないのは典型的な例ですが、そのほかにも、自動負荷分散(DRS)や自動QoS(IO Control)といったvSphereの自動化機能も、欧米ではよく用いられていますが、日本での普及率は欧米よりずっと低いです。こうした現状を見るにつけ、「もったいないな」と思います。
小川:確かに、日本企業は可用性を担保する仕組みは積極的に取り入れようとしますが、自動化された機能はあまり使いたがらない傾向にあります。それが結果的に、投資の無駄を膨らませている印象を強く受けますね。例えば、自動負荷分散の仕組みを導入しないがために、サーバ・ハードウェアを必要以上に多く導入してしまうといった格好です。
桂島:そのお話に関連しますが、数年前に、オーストラリアと日本のお客様のサーバ統合率──つまりは、「1つのハイパーバイザ上で仮想マシンを何台動作させているか」を調べたことがあります。言うまでもなく、この統合率が高ければ高いほど、仮想環境のコスト効率が高いことになるのですが、日本の統合率はオーストラリアの半分程度でした。要するに、日本のお客様は、仮想化のコスト・メリットをまだまだ生かし切れていないということです。その背後にも運用管理の自動化・効率化を巡る、日本と海外との積極性の違いがあると考えています。
考え方一つで抜本的解決の道が切り拓かれる
小川:もちろん、ユーザーが仮想化のメリットを生かし切れないのは、我々システム・ベンダー側にも責任の一端があると認識しています。ですから、当社は現在、仮想環境をより使いやすいかたちで提供すべく、ストレージとIAサーバ、そしてハイパーバイザ、さらには運用・管理環境を一体化させたハイパーコンバージドシステム「HPE Hyper Converged 250 System」(旧HP ConvergedSystem 250シリーズ)をラインナップしています。そのVMware版である「HPE Hyper Converged 250 System for VMware vSphere」(以下、HC250 for VMware)では、vSphereが標準で組み込まれており、桂島さんがさきほど言及された運用管理の自動化・効率化の機能がすべて詰め込まれています(下写真・図参照)。
vSphereが標準で組み込まれたハイパーコンバージドシステム
「HPE Hyper Converged 250 System for VMware vSphere」
桂島:つまり、HC250 for VMwareならば、運用管理の手間をかけずに、vSphereによる仮想化のメリットだけが引き出せるということですね。
小川:そう言えます。HC250 for VMwareを用いると、仮想環境の設計・導入から運用・拡張に至るプロセスが極めてシンプルになりますし、ストレージ環境を仮想環境に向けて別途導入したり、設計したり、最適化したりする手間も省けます。
ハイパーコンバージドシステムはコンパクトに詰め込まれている半面、トラブルが発生すると手に負えない、という話をよく耳にしますが、日本ヒューレット・パッカードでは、VMware製品をOEMの形式で取り扱っています。ですから、トラブル発生時、サーバーの問題か、ストレージ部分の問題か、はたまたソフトウェアの問題か分からなくてもHPがワンストップでサポートできるのです。また、万が一のハードウェア故障時にはサポートセンターに自律的に通報する仕組みもありますので、お客様からの問い合わせを受けるまでもなく、事態を把握し、即座に対処の行動を開始します。加えて、日本ヒューレット・パッカードが運営するお客様向けのポータルサイトも開設しており(HP Insight Online)、自社のシステムの状態や問い合わせの履歴、保守契約の期限といった情報を、どこからでも随時確認することができます。
至れり尽くせりのハイエンドモデルと誤解されることも多いのですが、HC250 for VMwareはスケーラビリティに優れた小~中規模向けのシステムです。最初はたった2Uの1筐体だけで大丈夫。足りなくなったら積み木のように2Uの筐体を積み重ねれば良く、これでCPUもメモリもストレージ容量も増やせますし、ストレージ容量だけ増やすことも可能です。非常にリーズナブルで魅力的なシステムだと確信しています。
桂島:HPE Hyper Converged 250 Systemに象徴されるように、仮想化テクノロジーは本来的に企業・組織全体に大きなメリットをもたらす可能性を秘めています。言い換えれば、IT運用管理を楽にしてエンジニアを幸せにし、企業ITのTCOを下げ、かつ、その俊敏性を高めて企業を幸せにする──仮想化には、そんな能力が備わっているわけです。
欧米の企業は、その能力を最大限に生かすために、自動化・効率化のテクノロジーを積極的に導入・活用していますが、日本での導入がさほどの進展を見せていません。ただし、その裏を返せば、考え方や方針の転換一つで、日本の企業も、状況をガラリと変容させられる可能性が大きいと言えるのです。
小川:同感です。また、ITシステムのトラブルは、会社全体の生産性を落としかねない深刻な問題です。ですから、従前のやり方や考え方に固執し、有能なエンジニアを疲弊させ続けるのは、経営上のリスクマネジメントの観点からも賢明とは言えません。一方で、今日のテクノロジーを使えば、簡単に運用管理の自動化・効率化が図れます。有能なエンジニアはもっとやりがいのある前向きな業務で活躍することができますし、ITコストをさらに引き下げていくことも可能になります。要するに、企業の考え方次第で、問題の抜本的解決の道筋は一気に拓けるということです。その意味でも、日本の企業の方々には、仮想環境の運用管理・トラブル対応のあり方を改めて見直していただきたいと考えています。
桂島:今回の対談が、そのきっかけになれば嬉しいかぎりですね。本日は、対談にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
小川:こちらこそ。