東レシステムセンターは、2000年頃からBI分野に着目し、親会社である東レ株式会社の繊維部門に商用ツールを使って営業マネジメントシステムを構築、全社展開した後、東レグループの関連会社数社にBIツールを導入した実績を踏まえ、新規事業としてBIシステムの外販に目を向けました。事業化に当たっては、ライセンスコストの負担が大きい商用ツールに対抗できるオープンソースを選択、「OpenOLAP」については、事業化に向けて準備作業を行う中で、2004年にBI動向に関するレポートに記載された「OpenOLAP」を認識し、2種類の商用製品との間でベンチマークを行い、基本機能は、商用製品に匹敵することが確認されたことから新規事業の標準ツールに決定しました。しかし、オープンソースの採用に伴い発生する課題である、自らがベンダーの責任としてソフトウエアの保守をソースコード・レベルで実施する必要性を克服するため、実際に自社内に導入し、社内データを使って独自に研究を重ねました。この間、開発元のアイエイエフコンサルティングのトレーニングやサポートなどにより必要要件が満せたことから、BIシステムの外販に乗り出すことになりました。
BIシステムを外販するためのプロジェクトを指揮してきたEソリューション事業部長の多田明博取締役は、「敷居が高かったBIシステムを低コストで提供していきたい。また、ERPベンダーと協業してパッケージに組み込んだり、BIシステムを導入していないERPユーザーに売り込みをかけていきたい」と意気込みを見せています。
東レシステムセンターが、「OpenOLAP」を使って自社内に構築した業務システムは、基幹システムである「プロジェクト会計システム」から定型の紙でしか出力されなかった部課別の損益、労務費などを月次、プロジェクト毎など様々な切り口で出力できるようにすることが目的です。「OpenOLAP」の役割としては、ETLツールを使って「プロジェクト会計システム」からPostgreSQL上に再構成された売上、原価、損益、受注を内容とするデータベースからModel Designer機能で時系列、社員別、プロジェクト別といった各分析モデル、多次元分析用データベースを作成し、ユーザーに対してReport Designer機能やViewer機能を使用して、ドリルダウン、スライス&ダイス、ドリルスルーの分析機能を提供することです。ユーザーは、個別プロジェクト別、時系列、社員別、開発・保守の事業区分別、東レ・東レグループ・外部の取引区分別などで受注金額や原価の集計情報が得られるようになり、従来に比べ格段にデータを有効活用することができます。
多田取締役は、「今まで管理職以上の事業責任者は、本社管理部門から上がってくる報告書を待って損益や原価などを確認していたが、現在は各戦略上必要な情報を、必要な時に、自分で見ることができるようになった。全体の状況をリアルタイムに把握できることで、経営・販売戦略面でも効果を発揮しつつあり、この時点で外販の事業化に強い手ごたえを感じた」としています。
「OpenOLAP」を組み込んだ社内BIシステムは、2005年末に完成、2006年初より社内の管理職を対象に運用を開始し、大きな効果が得られたことから順次適用範囲が広げられることになっていますが、目標はBIシステムの外販です。これは、2000年に商用のBIツールによるシステム構築事業を開始してから4年後に東レシステムセンター社内の技術委員会において、新規事業のひとつとしてBI関連ビジネスが検討課題として取り上げられたことがきっかけとなっています。商用BIツールはライセンスが高価であり対策が必要なこと、オープンソースはメンテナンスを行えることが必須など、さまざまな課題が浮き彫りにされる中、その年に公表されたBI関連レポートで「OpenOLAP」を確認しました。
技術委員会では、早速、「OpenOLAP」を評価するためワーキンググループを結成し、3ヶ月間をかけて扱いなれているコグノス社の「PowerPlay」、インフォメーションビルダーズ社「WebFOCUS」とでベンチマーキングを実施、基本機能では遜色ないことから新規事業の標準ツールに選定しました。
2005年5月にはプロジェクトチームを結成し、6ヶ月の間に社内データを使って「OpenOLAP」を組み込んだ実用可能な業務システムの構築を目指し、その中でソースコードのメンテナンスを習得し、7名のメンバー全員が「OpenOLAP」を使いこなせるようにしました。この段階では、アイエイエフコンサルティングが延べ5日間のトレーニングと、6ヶ月間サポートを行っています。
こうしてBIツールに見られる商用製品のコスト、オープンソースの信頼性、メンテナンス性といった相関関係を打破し、グループ内営業から外販という新たなビジネスチャンスを見出すことに成功しました。
アイエイエフコンサルティングでは、東レシステムセンターのように「OpenOLAP」を自社ビジネスとして活用する企業が出てくることによって、高価なためにBIツールに投資できずにいた、多くの企業のニーズを満たすことになり、OSS関連ビジネスの活性化、ならびにBIマーケット全体の底上げに寄与するものとみています。
以上
[OpenOLAPについて]
OLAPツールは、企業の顧客データや販売データなどの蓄積された大量のデータを様々な角度から検索・集計して問題点や解決策を発見し、経営や営業活動の効率の向上を図るためのツールで、「OpenOLAP」は、今まで商用製品でのみ提供されていたOLAPツールの機能を初めてオープンソースソフトウエアとして実現しました。
「OpenOLAP」は、情報処理振興事業協会(IPA)のオープンソースソフトウェア活用基盤整備事業の支援を受けてアイエイエフコンサルティングが開発しました。2004年2月28日の公開以来、現在までに共同開発環境サイト( (リンク ») )から約14,000件のダウンロード実績があります。アイエイエフコンサルティングではさらに、一昨年IPAが公募した2004年度第1回オープンソースソフトウェア活用基盤整備事業に「OpenOLAPの機能拡張プロジェクト」で採択されたことを期に、「OpenOLAPリリース2.0」を開発、2005年2月28日に公開しました。
「OpenOLAP」の動作環境としては、オペレーティングシステムとして「Linux」、Web/アプリケーション・サーバーとして「Apache」「Tomcat」、データベース管理システムとして「PostgreSQL」を使用しています。これらは全て、広く普及した既存のオープンソースソフトウエアであるため、ユーザー及びITサービス企業は、完全なオープンソースソフトウエア環境で、企業データ分析システムを構築することが可能になりました。
※ 「OpenOLAP」のダウンロードや技術的問合せについては、
( (リンク ») )をご覧下さい。
[東レシステムセンター( (リンク ») )について]
1985年9月、東レ株式会社情報システム部門の機能分社として設立され、現在は東レグループにおいて長年培ったシステム構築のノウハウを活かし、各種システムの開発、販売を行うシステムインテグレーション認定法人です。
[アイエイエフコンサルティング( (リンク ») )について]
1998年に設立されたデータウエアハウス、データ分析専門の独立系コンサルティング会社です。金融、通信、製造、流通、サービスなど多岐にわたる業種のデータウエアハウス、データ分析アプリケーション構築プロジェクトに参画し、システム分析・設計・導入から運用までをトータルにサポートしています。また、メディアへの寄稿、セミナー講演などを通じてデータウエアハウス、ビジネスインテリジェンスの普及、啓蒙活動を実施しています。
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