心変わりはなぜ起こるのか? 心変わりのメカニズムが、脳の活動から初めて明らかに

学校法人玉川学園

From: 共同通信PRワイヤー

2013-10-02 10:00

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2013/09/27

玉川大学脳科学研究所

心変わりはなぜ起こるのか? 心変わりのメカニズムが、脳の活動から初めて明らかに――玉川大学脳科学研究所

玉川大学脳科学研究所(町田市玉川学園 6-1-1 所長代行:坂上 雅道)の伊藤岳人研究員※1と松田哲也准教授らは、米国カリフォルニア工科大学下條信輔教授らとの共同研究により、心変わりが起こるメカニズムを明らかにした。

 好みの選択判断(=選好意思決定)は正解がなく、人によって答えがちがったりするため、伝統的な心理学や脳科学が苦手としてきたテーマである。しかし半面、人間の自由の根幹に関わり、また政治や消費者行動など社会面での重要性は極めて高いテーマでもある。ごく最近の脳科学研究によって、私たちの好みの選択(意思決定)が脳でどのように処理しているかについては少しずつ明らかにされてきている。一方で、好みの選択は不変ではなく、途中で変わる時もしばしばあるが、それがなぜ起こるかについては、ほとんど分かっていなかった。

 今回の研究では心変わりに着目し、fMRI※2により脳活動を測定することで好みの選択が変わるメカニズムを解明することにした。実験では、被験者に2枚1組の顔を見て、どちらがより好みかという質問をした。その後、もう一度同じペア-の顔を見せ、同様の質問をした。1回目と2回目の質問で、その回答が変わった時と変わらなかった時の脳活動を比較した。その結果、尾状核(びじょうかく)という価値判断に関係している脳領域の神経活動と好みの選択に乖離がある時に、心変わりが起こることがわかった。

 つまり、1回目の選択時に尾状核の活動が強い方の顔を選んだ時には心変わりは起こらないが、1回目の選択時に尾状核の活動が低い方の顔を選んでしまった時には、2回目の選択時に心変わりが起こる確立が高いことが明らかになった。また、記憶に関係する海馬と価値判断に関係する眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)との強い機能的つながりができると心変わりが起こる可能性が低くなることも明らかになった。

 今回の研究は、我々の心変わりがなぜ起こるか?という問いに答えた、世界で最初の研究成果である。
 本成果は、英国科学雑誌「Social Cognitive and Affective Neuroscience誌」オンライン版に2013年9月13日に掲載された。URLは以下のとおり。

(リンク »)

1.研究の背景と目的
 日常生活の中において二者択一の選択を迫られる機会は非常に多くある。喉が渇いたから水を買おうと思ってコンビニに行くと似た商品がいくつか並んでおり、どちらにしようか悩む時がある。また、このような日常的なことから、高校・大学への進学、就職、さらには人生の伴侶の選択においてまで私たちは選択を迫られる機会に常に取り囲まれている。

 そんな選択を行う時、例えば、コンビニやスーパーで飲み物を買いたいと思った時、Aという飲み物に手を伸ばしたのにも関わらず、やはりBという飲み物に変えているときがある。このように途中で気持ちが変わることは誰もが経験することである。

 これまでに、私たちがある種の選択を行う(意思決定)時の脳の処理過程については近年明らかになってきたが、気持ちが変わり途中でその選択を変える時に脳がどのような処理をしているかについては、未だ明らかにされていなかった。そこで私たちは、このような日常的に経験する気持ち(意思決定)の変化、すなわち心変わりがなぜ起こるのかを明らかにする研究を行った。特に、今回の研究では誰もが興味のある顔の好みの変化について、脳の活動を測定することで、心変わりの原因を明らかにすることにした。

2.研究手法と結果
 実験参加者(被験者)に2つの顔をペア-にして見せ、どちらの顔がより自分の好みであるかを答えてもらった(1回目の選択)。その後、その顔を何回か繰り返し見せた。同じ2つの顔を繰り返し見せたあと、もう一度同じペア-の2つの顔を見せ、自分の好みの顔はどちらかもう一度答えてもらった(2回目の選択)。

 この課題を行っている時の脳機能メカニズムを明らかにするために、fMRIを用い脳活動の測定を行った。1回目と2回目の選択時に同じ顔を選んだ場合(心変わりなし)と1回目と2回目の選択時に別な顔を選んだ場合(心変わりあり)の脳の活動を比較した。つまり、心変わりありの時には1日目の選択時に尾状核は正しい評価をしているにも関わらず、その通りに好みの顔を選択できていない時に、心変わりが起こることが明らかになった。

 また、さらに1回目の選択時に海馬と眼窩前頭皮質の脳活動の強さの相関が高い時は心変わりが起こらないが、これらの部位の脳活動の強さの相関が低い時は、心変わりが起こることも明らかになった。

 これらの結果から、好みの選択時には尾状核が重要な役割を担っていることが明らかになった。尾状核はモノの価値を判断する機能を持った部位である。また、尾状核以外にも価値判断に重要であると考えられている眼窩前頭皮質や、また記憶を司る海馬も好みの選択に重要な役割をもつことが明らかになった。

3.本研究成果と今後の展望
 今回の研究結果は、日常的に誰もが経験する心変わりの原因を明らかにし、その本質に迫ると同時に、認知神経科学の大きな潮流に一石を投じるものとなった。脳の中での対象の価値判断と選択の結果がその判断と違う時には、結果的に心変わりが起こる。つまり、脳では正しい価値判断ができているにも関わらず、選択時に何らかのノイズにより違った選択をしてしまったと解釈することができる。

 これらの結果から、予め脳の中では正しい価値判断ができているということを考えると、本質的には心変わりは起こっていないのかもしれない。視点を変えれば、尾状核の活動を調べれば今下された選択が偽りであるか否かを知ることができる、そんな可能性を秘めている。また、学問的な視点から見れば、尾状核の活動は常に行動と一致するという不文律を揺るがしかねない結果であるとも考えられる。

 本研究の成果の一部は、米国カリフォルニア工科大学、日本医科大学との共同研究であり、玉川大学グローバルCOEプログラム「社会に生きる心の創成」、日本学術振興会「科研費基盤研究A」「科研費若手研究B」の一環として行われたものである。

※1 現在の所属(平成25年4月より)
独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター研究員

※2 fMRI
機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging;fMRI)のこと。MRI を高速に撮像して、神経細胞の活動に伴う血流動態反応を視覚化することにより、運動・知覚・認知・情動などに関連した脳活動を画像化する手法である。

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