実験の結果、「服薬支援クラウドサービス」による適切な高齢者の服薬管理が行われたほか、「介護健診ネットワーク」との連携により、地域包括ケアシステム(*2)の関係者とのスムーズな情報共有が図れ、これまで以上に連携したケアが行えることが実証されました。
日本では、高齢化の進展に伴い、高齢者の生活を地域全体で支援する地域包括ケアの重要性が高まっています。また、高齢者は1回に飲む薬の種類や量が増える傾向にあるほか、複数の医療機関から薬を処方される場合もあり、過剰摂取や飲み忘れ、飲み間違いなどのリスクが高いため、適切な服薬を支援する仕組みづくりが求められています。
そうした中、笠間市は、2012年に保健・医療・福祉・教育・産業の各分野を連携させて、市民と行政、民間企業が一体となり、市民が安心して健康に暮らせるまちづくりをめざす「健康都市かさま宣言」を行い、2014年10月からクラウド型の「介護健診ネットワーク」の運用を開始しました。
「介護健診ネットワーク」は要介護者の緊急連絡先や要介護認定状況、健康診断結果、ケアプラン、お薬手帳、さらには現在の病状といった情報を、高いセキュリティ性を実現したクラウド上に集約し、笠間市や要介護者の家族、地域の介護・医療関係者が、インターネット経由でパソコンやタブレット端末などを利用して、リアルタイムに共有・閲覧することができるシステムです。
日立システムズは、クラリオンが高齢者や要介護者向けに開発した服薬支援装置「服薬支援ロボ」を活用した「服薬支援クラウドサービス」の販売を2015年10月から開始しています。本サービスは、「服薬支援ロボ」による服薬支援機能と、服薬履歴や残薬情報を遠隔地で参照できる仕組みを提供し、誤飲防止などの服薬管理と、患者を中心とした包括ケアに関わる関係者の業務効率化を支援するクラウドサービスです。
このたび、日立システムズは、全国に先駆けて地域包括ケアに取り組んでいる笠間市において、「服薬支援クラウドサービス」の試験導入を行いました。試験導入においては、笠間市内の居宅療養患者3名に服薬支援装置「服薬支援ロボ」を提供し、適切な時間に必要な量だけ服薬できる環境を整えました。また、「介護健診ネットワーク」との連携により、笠間市のスタッフや薬剤師、患者の家族、地域の介護・医療関係者が、要介護者の服薬履歴や残薬の情報を参照できるようにしました。
その結果、自分で薬が飲めなかった患者が「服薬支援ロボ」の支援により、自分で自発的に薬を服用できるようになりました。予定時間に服薬されなかった場合も、人感センサーによって患者がロボットの前を通過した際に、ロボットが再度服薬のアナウンスを行うことで、飲み忘れを防ぐことができました。
また、薬剤師は、これまで処方した薬の情報までしか把握できていませんでしたが、「介護健診ネットワーク」を通じて要介護者が予定通り服薬したかを確認できるようになりました。さらに、人感センサーの反応履歴を確認することで、居宅療養では把握しにくい患者の活動量など、患者一人ひとりのより正確な状態を把握できるようになりました。
居宅療養や居宅介護においては、転倒事故発見の遅れや薬の飲み忘れ、誤飲による重症化が課題となっており、高齢者の見守りや適切な服薬支援を行うことにより、これら課題の改善が期待されます。今後、日立システムズとクラリオンは、「服薬支援クラウドサービス」の本格展開により、患者の適正な服薬アドヒアランス(*3)の向上や地域包括ケアシステムの関係者の負荷軽減に貢献します。
また、日立システムズは、「服薬支援クラウドサービス」と全国各地域で採用されている「介護健診ネットワーク」などの自治体向けシステムや多職種連携システムなどとのクラウド連携により、高齢者への質の高いケアと関係者の負担軽減を同時に実現する新たなケア活動を提案し、地域住民が安心して暮らせる社会の実現に貢献していきます。
*1介護健診ネットワーク:株式会社日立製作所と株式会社日立産業制御ソリューションズが構築を担当。株式会社日立製作所は、笠間市での実績をもとに「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」を開発し、2014年7月から提供開始しています。
*2地域包括ケアシステム:高齢者に対する地域の包括的な支援・サービス提供体制。高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的の下で、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるようにサポートを行います。
*3服薬アドヒアランス:患者自身が病気の治療方針の決定に参加し、治療に積極的に関わり、薬の内容を理解して服用していること。
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