「英国のEU離脱がエネルギー産業に直ちに及ぼす影響としては、ポンド安に伴う燃料価格の上昇によるマイナスの影響が挙げられます。しかし、イングランド銀行はこれに向けた措置を直ちに行うと明言しており、長期にわたって市場に影響を及ぼすことはないでしょう。エネルギー産業は、これまでにEUが加盟各国と合意に至ることが困難な分野となっていることから、EU加盟各国は意思決定において高い独立性を持っており、特に原子力発電と石炭火力発電は加盟各国が異なる見解を持つ分野となっています」と、フロスト&サリバン英国オフィスのパートナー、ジョン・ラスピンは述べます。
これを踏まえて、フロスト&サリバンは英国のエネルギー産業の今後の見通しについて、次の様な見解を持っています。
■石炭火力発電の縮小計画の見通し:
英国は石炭火力発電の割合の縮小と二酸化炭素排出量の削減において、他のEU諸国と比べて前進しています。また、2025年までに石炭火力発電所を全廃する目標も掲げており、この計画は今後も変わらず進む見通しです。同様に、英国は二酸化炭素排出量の削減に向けた取り組みも継続する見通しです。
■原子力発電所の新設計画の見通し:
度々遅延している英国における原子力発電所の新設に対して、EDFエナジー等の企業は投資を行う計画を表明しています。しかし、同社の投資のペースは非常に遅く、英国のEU離脱によって投資プロジェクトの実効性の再評価が行われる可能性も挙げられます。
■再生可能エネルギーの導入目標の見通し:
EUが掲げる2020年に向けた再生可能エネルギーの導入目標に対して、英国及びEU加盟国の半数以上が達成できないと見込まれており、同政策に関する大きな変化はないものと見られます。英国は今後EUが掲げる再生可能エネルギーの達成目標に縛られることはなくなりますが、再生可能エネルギーの補助金が削減されることになるため、今後の見通しは不透明です。ディベロッパーの多くは英国市場で既に活動しており、予定されていた投資プロジェクトの多くは進むことが予想され、EU離脱によってこの計画が根本的に変わることはないとみられます。
■スマートメーターの設置計画の見通し:
英国のスマートメーターの設置計画は、英国政府からの確約によって、予定通り継続することが予想されます。また、EUはスマートメーターの設置計画を実行していないため、英国政府がスマートメーター計画を再検討又は遅らせることも可能となるでしょう。
■エネルギー価格・市場への影響:
エネルギー価格は大幅な影響は受けないことが予想されます。EU離脱を問う国民投票の際に離脱派が訴えていた燃料の付加価値税(VAT)引き下げについては、もし施行されたとしても5%程度の削減に留まり、実行の可能性は低いとみられます。また、単一市場は徐々に成長していますが、英国は欧州の中でも最も発達した自由化市場の1つであり、EU離脱後もこれは存続することが予想されます。さらに、長期的には財務コストの上昇に伴い、インフラに向けた資本コストの上昇が予想されます。これは英国が金融市場での評判をどの様に保つかにかかっています。
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