新日鐵住金株式会社(代表取締役社長:進藤孝生、以下「新日鉄住金」)が開発した、衝突安全性に優れた高延性造船用鋼板「NSafe(R)-Hull(エヌセーフハル)」を採用した大型ばら積み船が、このたび一般財団法人日本海事協会(会長:冨士原康一、以下「日本海事協会」)よりClass Notation(船級符号への付記)を世界で初めて取得しました。
今回Class Notationが付与されたのは、2014年に今治造船株式会社(代表取締役社長:檜垣幸人、以下「今治造船」)が建造した大型ばら積み船(船名「ORANGE PHOENIX」)で、貨物倉船側部、燃料タンク部などの高い衝突安全性が求められる場所に合計約3,000トンの「NSafe(R)-Hull」が採用されています。「NSafe(R)-Hull」は鋼板の延びに優れるため、船舶の衝突時においても、従来の鋼材に比べて船体に穴が開きにくくなります。これは鋼板の延性と船舶の衝突安全性に関する新日鉄住金、今治造船、国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所(理事長:大和裕幸、東大名誉教授)海上技術安全研究所(所長:大谷雅実、以下「海技研」)による共同研究を経て、日本海事協会の協力のもと船舶への適用が実現しました。
共同研究における海技研による最先端の数値シミュレーションにより、日本海事協会より、衝突や座礁に対するエネルギー吸収に効果のある高延性鋼を適用した船舶に、Class Notation “Hull Protection by Highly Ductile Steel”(HP-HDS)を付記することが認められました。本Class Notationが付記されたことにより、荷主や船主に対し、より安全性を高め、環境に配慮した船舶であることが、目に見える形でPRできる様になりました。また、Class Notation付与に当たり、新日鉄住金は「NSafe(R)-Hull」が従来鋼の規定要求値より5割以上の高い伸び特性を有する鋼板として日本海事協会より、KD36-HD50等の認証を取得しました。
「NSafe(R)-Hull」を適用した船舶の高い安全性が評価され、これまで10隻へ採用され、今後9隻への採用が予定されており、受注量は総計2.4万トンを超えました。また、今年5月には、「NSafe(R)-Hull」を採用し安全性を高めた船舶でSeatrade Awards GlobalのSafety at Sea部門を受賞(受賞者:今治造船)、また同月「被衝突安全性に優れた船体用高延性鋼の開発と実船適用」として日本船舶海洋工学会賞を受賞(新日鉄住金、今治造船、海技研、日本海事協会の共同受賞)し、その高い性能が認められました。
新日鉄住金、今治造船、海技研は、「NSafe(R)-Hull」の幅広い船舶への適用を通じて、今後とも安全で確実な海上輸送の実現に貢献してまいります。
(プレスリリースに関するお問い合わせ先)
新日鉄住金株式会社 総務部広報センター TEL:03-6867-3419
今治造船株式会社 丸亀事業本部船体設計グループ TEL:080-2851-9155
国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 企画部広報係 TEL0422-41-3005
<参考資料>
【船級とは】
船級協会が協会の規格に合格した船に与える等級。船級を取得するかしないか、またどの船級協会を選ぶかは船主の自由。日本の商船は大部分が日本海事協会の船級をもっているが、同時に他国の船級をもつ船もある。検査は船体、機関、艤装(ぎそう)品によって行い、船級が船級符号によって示される。各国船級協会によって別の符号を用いるが、国際的に認め合っている。船級をもつ船は船級船(クラスボート)とよばれ、保険や売買の際に有利な扱いを受ける。
【Class Notation(船級符号への付記)とは】
船舶を船級登録する場合、船級を表示するものとして「船級符号」がある。船級協会の主たる業務である「船級登録」業務の概念は、合否判定の基となる「規則」を制定し公表すること、及び、検査を実施し船舶がその規則に適合していることを確認し、更に規則への適合を公表することにある。このため、どのような規則を適用して船級登録が行われたかを明確にする必要から船級符号に「付記」を付して表示している。
【ばら積み船の概要】
載荷重量 : 206,600トン
サイズ : 全長299.94メートル、幅50.00メートル、深さ24.70メートル
建 造 : 今治造船株式会社 西条工場
進 水 : 2014年8月2日
NSafe(R)-Hull使用量 : 約3,000トン
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