早稲田大学
サリドマイドの脳梗塞に対する薬効メカニズムを明らかに
早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の澤村直哉(さわむらなおや)研究院准教授と、同理工学術院の朝日透(あさひとおる)教授、東京薬科大学薬学部の山田まりこ(やまだまりこ)大学院生、林秀樹(はやしひでき)講師、高木教夫(たかぎのりお)教授らの研究グループは、このたび、サリドマイドの脳梗塞に対する薬効メカニズムの一つとして、サリドマイドのターゲットタンパク質であるセレブロン(CRBN)を介して生体内のエネルギーセンサー(AMPK)の活性を調節し、神経細胞死を抑制している可能性を明らかにしました。
脳梗塞は、脳血管の狭窄や閉塞により脳における酸素及びエネルギーが欠乏状態になり、脳細胞が障害を受けることにより、脳神経細胞死が引き起こされる疾患です。サリドマイドは過去に妊婦が服用すると胎児に奇形が生じるということで販売が中止された薬剤ですが、近年、脳神経疾患への効果として、脳虚血モデルでの神経細胞死に対して保護効果を持つことが報告されていました。しかし、その詳細な分子メカニズムについては解明されていませんでした。
本研究では、サリドマイドの脳梗塞への有効性と細胞内シグナルを調べるために、ヒト脳梗塞の模倣モデルとして用いられるラット中大脳動脈閉塞/再灌流モデルを作製して解析を行いました。この結果、サリドマイドはその標的分子であるCRBNを介してAMPK-CRBNの相互作用を変化させることでAMPKの活性を調節し、脳虚血による神経細胞死を抑制している可能性があることを明らかにしました。今後、より安全で安定なサリドマイド誘導体や、AMPK-CRBNの結合を強めるような薬剤を開発することにより、脳梗塞に有効な薬剤の開発に繋がることが期待できます。
【発表のポイント】
■ サリドマイドが脳梗塞モデルに有効であることを確認しました。
■ サリドマイドによる神経保護効果に関与する細胞内シグナルを同定しました。
■ サリドマイドの神経保護効果に関する詳細な分子メカニズムが明らかになりました。
本研究成果は、2018年2月6日付の英国Nature Publishing Groupのオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されます。本研究の一部は早稲田大学がサテライトとして展開している科学技術振興機構(JST)が推進するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの「さりげないセンシングと日常人間ドックで実現する理想自己と家族の絆が導くモチベーション向上社会創生拠点」で得られた研究成果です。
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