学校法人同志社 同志社大学 (リンク »)
同志社大学と電通総研
「世界価値観調査」分析から浮かび上がった“日本の9つの特徴”を発表
学校法人同志社 同志社大学(所在地:京都府京都市、学長:植木 朝子)のメディア・社会心理学研究分野の池田研究室※1(教授:池田 謙一)と株式会社 電通グループ(本社:東京都港区、代表取締役社長執行役員:山本 敏博)の社内組織である電通総研※2(所長:谷 尚樹)は、延べ100以上の国と地域を対象にした「世界価値観調査」(WVS: World Values Survey)について独自に国際比較分析(協力:株式会社電通マクロミルインサイト)を行いました。その結果、日本の特徴として9つのことが浮かび上がりました。
世界価値観調査は、個人を対象に価値観を聞くもので、その設問の範囲は政治観、経済観、労働観、教育観、宗教観、家族観など290項目に及びます。同調査は1981年に開始され、電通総研は第2回調査(1990年)から参画しており、今回で7回目となりました。
第7回調査では、世界価値観調査 (WVS) とヨーロッパ価値観研究(EVS: European Values Study)の共同でデータセットが構築され、2017年から2021年にかけて実査が行われました。電通総研と同志社大学は、2020年9月時点で集計が終了している77か国を対象に国際比較分析を行い、日本の9つの特徴を導き出しました。なお、WVSとEVSで調査票が完全には同一ではないこと、ヨーロッパ以外であっても各国でカスタマイズしている設問があることから、設問により回答国数が異なるため、本リリースでは45か国から77か国で集計可能な設問をランキング形式で分析しています。
注:2020年3月26日に日本のみの時系列比較の分析を発表していますので、こちら (リンク ») も併せてご参照ください。
国際比較からみえる日本の9つの特徴
1.【仕事】:「余暇」重視、「仕事」の重要度は国際的に低い
2.【ジェンダー】:「同性愛」への受容度は、ヨーロッパなどの先進国に次ぐ高い水準
3.【自由の価値】:重視するのは「安全」>「自由」>「平等」。人生の自由度は低いと感じている
4.【メディア】:マスメディアを信頼。新聞、テレビから「毎日情報を得る」が48か国中1位
5.【科学技術】:「科学技術によってより大きな機会が次世代にもたらされる」が8割
6.【政治】:「政治」の重要度は高いが話題にしない。「国家」に安全を求めるが「権威」を嫌う
7.【環境vs経済】:「環境保護」と「経済成長」との間で逡巡する人が多い
8.【家族】:「家族」が重要で信用しているが、両親の長期介護への義務感は低い
9.【次世代】:子どもに身につけさせたい性質に「決断力」「想像力・創作力」を重視
調査結果についての考察とまとめ
今回の結果から見えてきたのは、日本の人びとは「仕事」よりも「余暇」を重視する一方で、「働くことがあまり大切でなくなる」ことは良しとしない。「政治」への関心は高いが話題にしない。「国家」に安心を求めるが「権威」を嫌う。「環境保護」か「経済成長」かと問われると、わからないとする人が多い。このように一見すると矛盾するような回答や、選択をせまられると逡巡してしまう傾向が随所にみられました。こうした葛藤の背景には、世界が大きく変化していることによる影響があります。
少子高齢化の加速はその一つで、調査結果を見ると、日本社会では「家族」を大切にしつつも、両親の長期介護への義務感は低い状況です。介護サービスが普及しているからかもしれませんが、そうした社会体制を維持できるかは日本の大きな課題の一つです。
一方で、次世代を担う子どもに身につけさせたい性質としては、勤勉さといった伝統的生活価値あるいは工業的価値よりも、創造性などの脱工業社会的な価値を優先させたいという、先を見据えた志向性が垣間見えます。矛盾や葛藤を抱えながらも、望ましい社会の構築に向け、人びとがどのような意識のもとで選択をしていくのか、他国と比較しながら今後も追い続ける必要があると考えています。
2020年はCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)が世界的に広がりましたが、77か国のうち日本を含む66か国は2019年までに実査を終えているため、COVID-19が今回の調査結果にあたえた影響は限定的と言えます。しかしCOVID-19に限らず、世界は大きな変動の中にあり、だからこそ長期にわたる世界的な意識調査は、変化を捉え、未来を描いていくうえで役立つものであると考えます。「人」の意識や価値観、行動の変容は、「社会」の質(“クオリティ・オブ・ソサエティ”)と密接な関係にあるからです。
主なトピックスとデータ
※各トピックスの関連する図表・グラフは下段の「プレスリリース添付画像」をご参照願います。
1.【仕事】:「余暇」重視、「仕事」の重要度は国際的に低い
「余暇時間が減っても、常に仕事を第一」に対する「反対・計」は59.2%で77か国中2位と、「余暇」を重視している。また「仕事」が「重要・計」は81.3%で一見高いものの、国際的にみると77か国中71位と下位になっている。しかしながら、「働くことがあまり大切でなくなる」を「良いこと」とする回答は日本では10.5%、74位と低く、働くこと自体は大切にしたい意識がうかがえる。
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※グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。例えば上図のイギリス(6位)の場合、単純合算では7.9%+44.4%=52.3%となりますが、全体に占める合算部分の回答者実数で算出し四捨五入表記した場合は52.4%となります。
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2.【ジェンダー】:「同性愛」への受容度は、ヨーロッパなどの先進国に次ぐ高い水準
同性愛に対する受容度は、日本は75か国中18位。半数以上の人が肯定的であり、ヨーロッパ、オセアニアの先進国に続いて高い水準にある。
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3.【自由の価値】:重視するのは「安全」>「自由」>「平等」。人生の自由度は低いと感じている
「自由」と「平等」のどちらが重要かについては、世界的に「自由」を重要とする国が多く、「自由」と「安全」においては「安全」を重要とする国がほとんど。日本も同様の傾向にあり、「平等」の34.2%に対して「自由」が57.2%と多く、「自由」と「安全」では「安全」が82.3%と大勢を占めている。一方、「人生は思い通りになるか」では、日本は「人生は自由にならない」が38.6%と、77か国中では上位の6位であった。
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4.【メディア】:マスメディアを信頼。新聞、テレビから「毎日情報を得る」が48か国中1位
日本の「新聞・雑誌」に対する「信頼・計」は69.5%で、77か国中4位。「テレビ」に対する「信頼・計」は64.9%で、48か国中8位となっており、日本ではマスメディアに対する信頼感は比較的高いといえる。「新聞」「テレビニュース」から毎日情報を得ているとの回答率はそれぞれ57.5%と89.8%で、ともに48か国中1位。世界的に見て、日本ではマスメディアが国民生活に深く浸透している。
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5.【科学技術】:「科学技術によってより大きな機会が次世代にもたらされる」が8割
「科学技術は生活をより健康に、楽に、快適にしている」という考え方に「賛成」と考える人は、日本は約8割で、48か国中18位。また、「科学技術によってより大きな機会が次世代にもたらされるだろう」についても、「賛成」が約8割で、48か国中16位。科学技術は社会を豊かにするものとして肯定的に捉えられている。
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6.【政治】:「政治」の重要度は高いが話題にしない。「国家」に安心を求めるが「権威」を嫌う
日本は、生活における「政治」の「重要・計」は65%で、77か国中6位と、重要度は高い水準にある。しかしながら、「友人と政治の話をする頻度」では、日本は「する・計」が51.4%で、47か国中39位と下位。他国に比べ、政治を日常会話のトピックにしないことがうかがえる。「国民皆が安心して暮せるよう国はもっと責任を持つべき」については、日本は77か国中5位となっており、「国家」に安心を求める傾向がある。しかし、「権威や権力がより尊重される」ことを「良いこと」とする回答は、わずか1.9%で、77か国中で最下位。権威・権力に対しては、抵抗感を持つ人が多いことがうかがえる。
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7.【環境vs経済】:「環境保護」と「経済成長」との間で逡巡する人が多い
「たとえ経済成長率が低下して失業がある程度増えても、環境保護が優先されるべき」との回答は、日本は77か国中74位と低い。「わからない」という回答が32.6%と、77か国中でもっとも多く、「環境保護」か「経済成長」かの二項対立では、決めがたいとする人びとの考えがうかがえる。
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8.【家族】:「家族」が重要で信用しているが、両親の長期介護への義務感は低い
日本は、生活における「家族」の「重要・計」は77か国中47位、「家族」に対する「信用・計」は77か国中30位と順位では中程度であるが、それぞれ99.0%、98.4%と非常に高い。しかし、「成人したら両親の長期介護を担う義務がある」という考え方に対する「賛成・計」は25.5%で、77か国中73位と低い。両親の長期介護に義務感を感じている人の割合が日本では少なく、「どちらでもない」と答える人の割合が大きい。
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9.【次世代】:子どもに身につけさせたい性質に「決断力」「想像力・創作力」を重視
「子どもに身につけさせたい性質」として、「勤勉さ」を重要とする人は、日本では25.1%、77か国中68位と低く、「従順さ」については77か国中で最下位となっている。一方、「決断力・忍耐力」では、日本は77か国中2位となっており、「想像力・創作力」も77か国中7位と高い。子どもには勤勉や従順であるよりも、決断力がありクリエイティビティを発揮できる人物に育ってほしい、と願う傾向がうかがえる。
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*より幅広いトピックスおよびランキングの詳細は調査レポートをご覧ください。
下記の電通総研ウェブサイト (リンク ») から無料でダウンロードできます。
《第7回「世界価値観調査」参加国・地域および実施概要》 アルファベット順
《第7回「世界価値観調査」日本における調査概要》
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調査実施機関:日本リサーチセンター
※1:池田研究室について
組織名:同志社大学 社会学部 メディア学科 池田謙一研究室
代表者:教授 池田 謙一
研究内容:メディアコミュニケーション、政治社会心理学の再構成、社会のリアリティの社会心理学的研究
URL: (リンク »)
※2:電通総研について
電通総研は、2020年1月に「株式会社 電通グループ」(純粋持株会社)の内部組織となり、2019年4月から“クオリティ・オブ・ソサエティ”をテーマに活動を継続しています。
「人」と「社会」がどのように変容しつつあるかを把握し、望ましい将来像やその実現のシナリオを探索するために、「世界価値観調査」をはじめ、先駆的かつ独自の観点による知見の蓄積に努めています。
私たちは、“クオリティ・オブ・ソサエティ”の視点で、社会の望ましい将来像に向けた変革のシナリオを探ってまいります。そのためには、今回見えてきた日本に特徴的な矛盾や葛藤のさらなる分析が必要です。池田研究室と電通総研には約30年間にわたる人びとの価値観に関する国際的なデータや知見が蓄積されています。ご関心がある皆さまに是非ともお問い合わせいただき、これからご一緒に深掘りできれば幸いです。
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。