日本製鉄株式会社(以下、日本製鉄)は、公益社団法人発明協会による令和5年度全国発明表彰において「LEDドットパターン投影による圧延中鋼板の高精度形状測定技術の発明」にて「発明賞」を受賞しました。全国発明表彰は、発明の奨励・育成を図り、我が国科学技術の向上と産業の発展に寄与することを目的として行われている伝統と権威のある賞です。表彰式は本年6 月12 日に、ホテルオークラ東京にて行われます。受賞した発明の概要は以下のとおりです。
1.受賞案件:「LEDドットパターン投影による圧延中鋼板の高精度形状測定技術の発明」
2.受賞内容
【発明賞】
技術開発本部プロセス研究所 計測・制御研究部プロセス加工計測研究室 研究第二課長 伊勢居 良仁
技術開発本部技術開発企画部 尼崎研究支援室尼崎研究試験課加工・計測係計測第二班長 加藤 朋也
東日本製鉄所工程業務部 鹿島工程計画室 鹿島薄板計画課長 大杉 正洋
元 住友金属工業株式会社 鹿島製鉄所制御部制御技術室 高橋 秀之
3.本発明の背景
近年、自動車に対して環境対策としての燃費向上が求められ、構造部材に使用する鋼板を薄くすることで軽量化が可能な高強度鋼板の適用が急速に進んでいます。これら高強度鋼板は、熱間圧延により製造されますが、高圧下率、高荷重の圧延となるために平坦度が悪化しやすい特徴があります。圧延時の平坦度の悪化は、その後の冷却不均一による機械特性の悪化や、鋼板の巻き取りを不安定化する原因となります。従来の平坦度計は、圧延時の平坦度不良で生じた板波が定在すると精度が悪化する、鋼板の鏡面性が高いと測定が不安定になる問題がありました。そのため、高強度鋼板の圧延は、作業者の目視と圧延操作に頼っていました。
4.本発明の概要
本発明は、最高時速100kmで圧延される1000℃近い高温の鋼板の形状を測定する平坦度計に関するものです。本発明の平坦度計は、千鳥状に配列した1200個の高輝度LED素子で形成した光のドットパターンを高温の鋼板表面に投影し、このパターンの撮像画像を処理し、高速で移動する圧延中鋼板の瞬間的な形状を測定します(図1)。
本発明の特徴であるLEDドットパターンプロジェクタは、正反射光が観測される部分に対応するLED素子の電流を最小にしてハレーションを防止し、撮像カメラのシャッターとの同期点灯によりLEDの発熱を実用可能なレベルに抑制しています(図2)。これにより、鋼板の板波の定在や表面の状態によらず、圧延中鋼板の形状を高精度に測定できるようになりました。
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図1:本発明の平坦度計の装置構成 図2:LEDドットパターンプロジェクタの構成
5.本発明の成果
本発明の平坦度計により、薄板の熱間圧延において、全ての圧延材を対象として24 時間トラブルなく適用できる自動制御が可能になりました。従来の作業者による手介入に比べ、平坦形状が改善し、品質と生産性が大幅に改善したことで、より多くの高強度鋼板の出荷を可能として、自動車の軽量化に寄与しています。また、既存の圧延設備にも大きな投資なしに適用でき、熟練作業者の減少に対応できるため、日本鉄鋼業の国際競争力向上にも貢献しています。
■参考情報;本発明に関わるその他の受賞案件
2022年度 第68 回大河内記念生産賞受賞
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2020年度 文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)
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2019年度 第8 回 ものづくり日本大賞優秀賞
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以 上
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