コミュニケーションとコラボレーションを強化して優秀な人材を確保
ワークスタイルを変革し、多様な働き方を認めるということは、コラボレーション・コミュニケーション基盤の重要性が高まることでもある。顔を合わせなくとも同じ企業に属しているという一体感を創出することなども、その一環だ。だからこそ実際に、「コミュニケーションとコラボレーションの強化からスタートするケースは多い」(舘野氏)という。 さらに舘野氏は、最新技術の取り込みと表裏一体で考えるべき事項を指摘する。

「従来は労働者が労働時間に見合う報酬を会社から得るというのが普通の考え方でした。しかし最近では、労働者が労働時間分を超えた企業への貢献を求められる傾向があります。作業ではなく、価値を提供してもらいたいと企業は考えているのです。本来はそれに対して、労働者に能力発揮の機会を与える義務が企業側にあるはずですが、現状、そこまで進んでいる企業は少数です」(舘野氏)
欧米では多様なワークスタイルを実現できない企業は優秀な人材を集められず、結果的に衰退していくという見方があるという。舘野氏もこの見解を正しいと考えており、ワークスタイル変革は「よりよい会社」をめざすだけの取り組みではなく、将来的に企業を維持・発展させるために欠かせないものだと訴えた。
VDIやペーパーレスとオフィス改革を組み合わせる
ワークスタイル変革と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、外出先や自宅などからオフィスにいるのと同じように仕事をすることだろう。それを実現するテクノロジとして、VDIやDaaSはよく採用されるものだ。
「PCに依存しない基盤づくりやデバイスフリーを実現しうるという点で、VDIやDaaSの価値は大きいと見ています。実際にPCをシンクライアント化して場所の縛りを取り除き、拠点間の異動をスムーズに行えるようになったという企業の事例もあります。シンクライアントを活用し、それと同時に情報共有環境を整備することで、転勤先でもすぐに仕事が開始できるというわけです」と舘野氏はVDIの効果を認めつつも、次のような指摘もしている。
「VDIでワークスタイル改革と言った場合、現行業務の問題点を放置したまま働き場所だけを多様化するという結果を招くことが少なくありません。それでは、単なる労働強化だと批判されても仕方ないでしょう。企業にとってVDIは有力なツールとなり得ますが、現行業務の革新も併せて実行して初めて真の成果を引き出せるということを肝に銘じるべきでしょう」(舘野氏)
具体的な業務革新の例としてあげられたのは、フリーアドレスやペーパーレスといった、ある意味聞き慣れたキーワードだった。しかし、これが実現できない環境ではVDIだけ導入しても意味はないという。それは、最終的に紙で出力する必要や、紙媒体で保存する必要が残っている限り、結局はオフィスという場所に縛られ続けるからだ。