多彩な働き方の実現には経営層とIT部門双方の努力が必須
こうしたワークスタイル変革を実現するための条件として舘野氏が強調するのは、経営層の積極的な取り組みだ。前述のように、ITはワークスタイル変革に欠かせないものではあるが、ITだけで実現できるわけではない。
「IT部門はこれまで、経営に貢献できていなかったという反省があります。そこから、ワークスタイル変革をけん引すべきだという声もあるようですが、現実にはIT部門だけでは行えません。ただし、スピードを高めることはできます」と舘野氏は主張する。
全社的な取り組みとなるものだけに、経営層の判断と、多彩な働き方を認める人事的な判断、各部門の上長の準備といったものが必要になる。そうしたものに対して、逐次最新の情報を提供し、有効な新テクノロジを紹介できるようにしておくことがIT部門の役割だ。
「計画を描くのは経営層ですが、今の技術で何がどこまでできるか、どんなワークスタイルを実現できるか、ということを絶えずウォッチし、やる気のある現場を巻き込んで行くことがIT部門に期待されています。その上で、管理職や現場に実際に使わせてみて気づきを与えるといいですね。最近ではそういった動きができるよう、サービスや機材をレンタルしてくれるベンダーも増えています」と舘野氏は語った。
今後の課題としてあげられたのは、働き方が多様化することに対する、評価制度の確立だ。「これまでは見えるところで働いているから、あの人は頑張っているな、という感覚を誰もが共有することができました。しかし在宅勤務などが増えてくるとそうもいきません。働いた時間のみで管理する手法から抜け出さなくてはなりません」と舘野氏。先行している欧米でも、そのあたりにまで踏み込んで変革できている企業は少ないという。
IT部門には、最新のテクノロジを柔軟に取り入れ、自社のビジネスに生かすことを常に考えつつ適切な提案ができることが求められている。同時に、経営層や人事部門には、新たな働き方を受け入れ、それに対して適切な評価を行える体勢づくりが必要だ。そして、全社をあげて単純に働く「場所」を変化させるのではなく「働き方」を変えることに対して取り組む姿勢が、ワークスタイル変革には欠かせないものだと考えられる。