EVO:RAILが解決した課題とは
災害対策サイトを構築するうえで課題になっていたのは、コストと手間だ。吉田氏は、それぞれの課題について、次のように説明する。
まず、コストについては、機器の冗長化やサーバのバックアップコピーをどう行うかが悩みだった。業務系システムは、複数のブレードサーバ上で複数台のESXiを稼働させている構成だ。まったく同じ構成の機器を別の場所に設置するとコストは2倍以上になってしまう。そもそも九州地域はデータセンター事業が成り立つくらい地震が少ない場所だ。冗長化した機器を九州地域内に設置した場合、災害対策という点からは効果は限定的になる。そこで、遠隔地として関西エリアや東京エリアを想定すると、今度は、機器を設置するためのコストが上がってしまう。
「何かあったら自分の手で運びだせるような取り回しがしやすい機器であり、特定の仮想マシンだけを自由にバックアップできるような仕組みがあるものを探していました」(吉田氏)
もう1つの手間という課題については、システムの内製化と深く関わっている。ひびしんでは、システム部門の全6名が、システムの企画から設計、開発、機器の調達、設置、運用保守までを一貫して行う体制だ。たとえば、今回のバックアップ元のシステムを構築する際も、ブレードサーバの調達から設置、配線の設計、結線、稼働テストなどを2週間かけてこなした。また、人材育成も自社で行う方針で、基本的に、社内のジョブローテーションで、営業など他の部署からシステム部門に配属されてエンジニアとして教育を受ける。全6名のうち、半分は配属1年以内の"新人"というケースが多いのだという。
「こうした限られたリソースのなかで災害対策サイトを新たに構築して運用することは、1人あたりの負荷が格段に上がることにつながります。どのようにして運用負荷を下げていくかはシステム部門にとってきわめて重要な問題なのです」(同氏)
EVO:RAILを使った災害対策サイトの構築は、こうした課題を解決するのに最適だった。2Uサイズで取り回しがしやすいうえ、仮想マシン自体のコピーは「vSphere Replication」という機能を使って、レプリケーションを作成することができる。使い勝手を考慮したシンプルな管理画面であるため、ほとんど知識のない担当者でも管理することができる。

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