Linuxの常識を超える”Linux on Power”
最新のPower Systemsでは、RHEL 5 / 6およびSLES 10 / 11を利用することができる。この環境をIBMでは、「Linux on Power」と呼んでいる。Linux on Powerを利用するメリットについて新井氏は、「x86系のLinuxの常識を覆すことができることが最大のメリットです。Linux on Powerは、x86系のLinuxで実現できる限界を超える機能を数多く提供しています」と話す。たとえば信頼性の向上では、Power Systemsの信頼性を最大限に活用したLinux環境を構築することができる。
Power Systemsでは、x86で想定されている信頼性以上の品質のパーツを検証して使用して個々のパーツの障害率を下げるとともに、2重、3重の対策によってシステム全体に影響を及ぼさないような設計がなされている。「部品の障害は発生するということを念頭に置いた設計になっています。その上で、システム全体の可用性を高めることに注力しています」と新井氏。
また企業では、コストを最適化してIT化を推進したいというニーズが高まっているが、Linux on Powerは長期間の安定かつ効率的な運用を想定していることから、TCO(総保有コスト)を大幅な削減に貢献することができる。さまざまな調査でIT投資の80%程度が運用コストであると報告されているとおり、運用・保守コストは重要になる。そこでLinux on Powerにより、システムの信頼性を高め、CPU使用率を向上させ、ビジネスへの影響を最小化することで、TCOの削減を目指している。
システムを止めることなく資源を増減
さらにPower Systemsの先進的な仮想化機能を主要なLinuxディストリビューションで使えるようにすることで、ビジネスを急激に加速させたい場合でも、システムを停止することなく動的に資源増減の自動設定ができるようになっている。新井氏は、「Power Systemsでは、ビジネスを止めることなく、最大256コアのより大きな物理サーバーに、システムをダイナミックかつ容易に移行することもできます」と話す。
これにより、従来、x86 Linuxでは実現が困難だった、ビジネスの負荷増減、規模の拡大縮小に応じた、柔軟かつ迅速な対応が可能になる。新井氏は、「パフォーマンスには2つの意味があります。サーバーとしての性能を表すパフォーマンスと、お客様のビジネスを最大化するパフォーマンスです。この2つのパフォーマンス向上に、よりよく貢献できるのがLinux on Powerです」と話している。
そのほか、System xからPower Systems、System zまで、すべてのサーバー製品で、Red Hat Enterprise LinuxとSUSE Linux Enterprise Serverが利用できることは、ISVパートナーにとって大きなメリットとなる。システム開発者の立場からすると、言語やシステム・ライブラリなどの前提ソフトウェアは、別のプラットフォームでも同じものを利用できる。つまり、Linuxが使えれば、開発スキル、運用スキルを生かしながら、より信頼性、パフォーマンスの高いシステムとともに、自社のソリューションをお客様に提供することができる。
「RHELとSLESの2つは、System xも、Power Systemsも、System zも、同じソースコードからビルドされたカーネルを使っています。よくx86系のLinuxのバージョンが新しくなったときに、Power Systemsはいつ対応されますかという問い合わせがあるのですが、Power Systemsも、System zも、まったく同じ日にリリースされます。IBMでは、ディストリビュータ様との協業によりLinuxに対するお客様の期待を裏切らないサポートを提供することを目指しています」(新井氏)