レッドハットだからできること
こうしたレベルの高いサポート要求に対応できることは、レッドハットの本質的な強みだ。このアドバンテージについて、フリービットのプロジェクトを支援したレッドハットのテクニカル・セールス本部シニアソリューションアーキテクトOpenStackチームリードの内藤聡氏は、次のように話す。
内藤 聡氏
レッドハット株式会社
テクニカル・セールス本部
シニアソリューションアーキテクト OpenStackチームリード
「OSSのディストリビューターの役割は、OSSをお客様の課題解決に結びつけることです。ですから、お客様の問い合わせにいかに迅速に対応できるか、業務に合った提案ができるか、さらには、脆弱性が発見された際に修正プログラムがすばやく適用できるかが大切で、それらを含めた品質の高いサポートが提供できることが、レッドハットの大きな強みであると自負しています」
また、同じくレッドハットのエンタープライズ営業統括本部 第3営業本部 セールスマネージャーの亀田和大氏はこう続ける。
亀田 和大氏
レッドハット株式会社
エンタープライズ営業統括本部
第3営業本部 セールスマネージャー
「レッドハットの場合、スキル/ノウハウの蓄積やトレーニングの体制も含めて、お客様をしっかりとサポートできる準備が整わない限り、OSSを当社の製品として提供することはありません。また、お客様に提供したOSSに何らかの問題が発生し、その時点での根本的な解決が難しい場合でも、それを補うための対策を必ず講じます。これにより、お客様のビジネス戦略、事業継続を支えることができるのです」
実際、レッドハットのプロフェッショナルサポートは、フリービットによるOpenStack導入でも「大いに役立った」(井口氏)という。導入に際しては、OpenStackコミュニティのマニュアルや公開情報どおりにことが進まないケースもあったが、レッドハットのサポートを活用し、問題解決につなげてきたのである。
「レッドハットは、こちらの要望・事情を理解して、きびきびと動いてくれました。単なるOpenStackのサポートではなく、ソリューションを提供してくれる点は、他のディストリビューターには真似のできないところだと思います」と、井口氏は評価する。
OpenStackでデプロイの75%を自動化
では、Red Hat OpenStack Platformは、どのような実効果をフリービットにもたらしているのだろうか──。
その1つとして井口氏が挙げるのは、インフラ運用管理の工数削減だ。例えば、OpenStackのオーケストレーションサービス「Heat」のテンプレートを活用することで、仮想マシンをデプロイする作業がかなり簡素化されたという。また、RESTful APIを用いて複数台のサーバに対する自動デプロイが行えることや、「Chef」や「Puppet」、さらには「Ansible」といったツールの併用を通じて、システム(OS/ミドルウェア)構成管理などの自動化が可能になる点もOpenStackの導入メリットと井口氏は話す。
「従来、我々はWebサーバなどの設定ファイルをExcelに記載し、変更があるたびにその内容を書き直すといった管理を行ってきました。OpenStackの導入で構成管理の自動化を推進することで、そうした"非生産的"で"煩雑"なプロセスを撤廃することも可能になります。実際、我々も、Excelで設定ファイルを管理するやり方を改め、パッケージ管理システムのyumでインストールしたディレクトリを標準としながら、バージョン管理システムのgitを通じて設定ファイルの登録・履歴管理を行うといったスタイルに切り替えています」(井口氏)。
さらに、OpenStackの導入で、システムの稼働環境が必要に応じて立ち上げられため、テスト専用の環境を固定的に持つ必要がなくなる。そのため井口氏らは、2系統の環境をテスト用と本番用に切り替えながら使っていくという「ブルーグリーンデプロイメント」のスタイルを採用した。これにより、ITリソースの使用効率も大きく高められることになる。
もう1つ、OpenStackによるハードウェア抽象化の効果も大きいという。
「特にストレージについては、抽象化によってベンダーや製品によって大きく異なる管理用の特殊な独自コマンドを使う必要がなくなり、運用管理性が大きく高まっています」と、井口氏は指摘し、こう続ける。
「我々がストレージに求めるのはキャパシティとパフォーマンスで、その運用管理にかかる手間は極力小さくしたいとかねてから考えていました。それが実現されただけでも、OpenStackの導入意義は小さくないと感じています」
フリービットでは、こうしたOpenStackのメリットを生かすことで、インフラのデプロイの75%、残りはChef等を利用することでインフラ作業の大部分を自動化することに成功している。その結果、従来1台の仮想マシンをデプロイするのに30~40分かかっていたものが、43台の仮想マンシのプロビジョニングを約8分で済ませられるレベルになったという。