QLogicのHBAには、専用ローカルプロセッサを内蔵したファイバチャネル・コントローラが搭載されています。ローカルプロセッサがファイバチャネル規格に基づいてその通信プロトコルの処理を行うことで、ホストプロセッサの介在を最小限にすることにより、インテリジェントで高性能な処理を行うことが可能になります。通信プロトコルの制御や、ホストとのインターフェース処理は、ローカルプロセッサのファームウェアで行われます。
この場合のファームウェアはソフトウェアですが、別名マイクロプログラムとも呼ばれており、ハードウェアで実現できなかったり、暫定標準(Draft Spec)の時期で将来改変が行われる可能性がある場合などには、チップ・ハードウェアの変更を行わずにファームウェアの改変で対応することができ、短期間・低コストでの対処が可能です。ファームウェアは、ハードウェアの一部を補完するものなので、想定するあらゆる例外処理、タイミングなど、厳しい機能動作テストが行われます。しかし、複数の要因が重なって初めて発生するというような障害もある為、‘想定外’の条件や動作が発生する可能性をゼロにする事はできないのです。
あるユーザでこのような事例がありました。‘障害ゼロ’を目指してシステムを組んだつもりが、想定外の条件や動作への対応策を度重ねるうちに、本来のシステムとしての機能・性能が果たせなくなるという悪循環に陥ってしまった。そこで、‘どんなシステムでも障害は付き物、障害が起きたときにいかに早く復帰するか’という様に発想を転換したところ、障害事故そのものが激減したのだそうです。つまり、あらゆる障害を想定して組み込んだ例外的処理がかえって悪さをしていたらしく、その制御プログラムは‘大盛りスパゲッティ状態’になっていたようなのです。
前述のように、ファイバチャネル・コントローラにはファームウェアが搭載されていますが、お話してきたように、あらゆる条件、例外処理に対応できるわけではありません。障害が起きた場合は、まず条件を特定するために、トラップコードを埋め込んだデバックファームウェアにより、内部のレジスタのダンプを行い、‘どのような理由・状態で止まっていたか’という情報を入手し、新たな条件が無いかどうかを確かめます。しかし、原因となる事象を絞りきれず、何度もデバックファームウェアのトライが必要となることもあり、原因を特定するためだけに相当な時間が費やされることもあります。
そのような状況を改善するために、QLogicの4Gb以降のファイバチャネル・コントローラには、ファームウェアの命令実行の履歴(トレース)を外部メモリへ書き出すという機能、Hardware Assisted Firmware Traceが追加されました。この機能により、たとえ想定外(複数)の条件により、ファームウェアに障害がおきたとしても、障害に到る一連の履歴が正確に残されるために、ファームウェア内の‘どこの部分’を‘どのように改変するべき’かが、一目瞭然にわかります。QLogicの8Gb製品では、取得可能な情報もさらに充実しており、問題の特定に時間を掛けず、障害への迅速な対応が実現可能になっています。
尚、この機能は、コントローラチップ内のハードウェアで処理されていますので、性能には影響はありません。但し、当機能による情報収集・解析方法に関しては一般には公開されていませんので御了承ください。
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