神奈川工科大学が8K超高精細ライブ非圧縮映像とリアルタイムに生成した8K CG映像を用いて100Gbps超の大容量の遠隔配信実験に成功

神奈川工科大学

From: Digital PR Platform

2017-02-03 14:05


学校法人幾徳学園神奈川工科大学 (以下「KAIT」、学長:小宮一三)はこのたび、国立研究開発法人 情報通信研究機構(以下「NICT」)が主催する“さっぽろ雪まつり”実証実験で、札幌−大阪間の複数経路の200Gbps広帯域回線を用いて、8K超高精細ライブ非圧縮映像と8K超高精細CG映像のリアルタイム生成映像から構成される100Gbps超の大容量のストリームデータを札幌から大阪会場までマルチレーン同期化技術を用いて遠隔配信する実験に成功した。


 KAITは、NICT、大学共同利用機構法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(以下「NII」)、エヌ・ティ・ティ アイティ株式会社 (以下「NTT-IT」)、株式会社PFU (以下「PFU」)、アストロデザイン株式会社(以下「アストロデザイン」)、池上通信機株式会社(以下「池上通信機」)と共同で、世界初の試みとして、2017年2月にNICTが主催したさっぽろ雪まつり実証実験(注1)において、札幌−大阪間の複数経路から構成される200Gbpsの広帯域回線を用いて、8K(7680×4320画素・ハイビジョンの16倍)超高精細ライブの非圧縮映像と大阪と大学の2拠点の演者のモーション情報からリアルタイムに生成した8K対応のCG(コンピュータグラフィックス)映像を用いて、複数素材を同期化し、100Gbps超の大容量ストリームデータとして配信する実験を行った。
 今回用いた回線は、NICTが運用するテストベッドネットワークJGN(注2)の実験回線環境と、NIIが運用する日本の学術情報ネットワークSINET5(注3)が連携して実現した環境である。また今回伝送に用いた8K非圧縮フォーマット(注4)は、従来用いた8K-DG(デュアルグリーン)フォーマットに代わり、映像業界で利用が本格化される8K フル映像(YUV4:2:2 10bit)のフォーマットを用いた。本フォーマットは、1素材あたり48Gbpsの帯域を必要する。

 なお、本実験の成果は、2月6日(月)から開催される「さっぽろ雪まつり」の映像中継として、2月6日(月)・7日(火)にグランフロント大阪内のナレッジキャピタル(The Lab)にて、一般公開する。

【背 景】
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて実用化が見込まれる8K/4K超高精細映像配信に対し、KAITでは2014年から4K映像伝送装置(注5)や広帯域IP映像サーバ(注6)を複数台用いて、世界に先駆けて高精細な8K超高精細映像(8K-DG:24Gbps)を、圧縮を用いずに品質を一切落とすことなく伝送・蓄積配信できるシステムの開発に取り組んだ。同時に、専用システムでしか実現できなかった超高精細映像の制作環境をクラウド上のサービスとして実現することで、必要な時だけ簡便に利用できるシステムの構築を目指している。
 2015年2月には、クラウド上に8K映像蓄積配信機能や映像加工機能の仮想的な構築に成功し、同年6月の「Interop Tokyo 2015」では、8K-DG(24Gbps)、4K60P(秒間60フレーム 12Gbps)、 4K30P(秒間30フレーム 6Gbps)の3種類の映像を完全同期して伝送するマルチレート伝送サーバの構築をクラウド上で実現した。
 また、2016年の2月には、8K超高精細映像を対象に途中経路での悪意あるコンテンツ改ざん、盗聴等を防ぐリアルタイム暗号化配信に取り組んだほか、同年11月には日米の複数拠点のモーションキャプチャデータから8K超高精細CG映像のリアルタイムレンダリング処理を行い、8K-DG (24Gbps)でリアルタイム遠隔配信する実験に取り組んだ。

【今回の実験概要】
 今回の実験では、JGNの国内100Gbps基幹回線に加え、国立情報学研究所が構築・運用する学術情報ネットワークSINET5が実証実験に参加することにより、北海道から大阪まで複数経路による200Gbpsの容量を持つ広域ネットワークを構築した。KAITの情報学部情報ネットワークコミュニケーション学科丸山充教授、岩田一助教を中心とするチームは、札幌から、複数の8Kカメラと高臨場音声情報を含む8K超高精細ライブ非圧縮映像に加えて、リアルタイムに生成した8K対応のCG(コンピュータグラフィックス)映像から構成される100Gbps超の大容量ストリームデータを用いて、32レーン(3Gbps/レーン)に分割して配信するマルチレーン同期配信を行った。
 利用した8K非圧縮フォーマットは、従来の8K-DG(デュアルグリーン)の2倍の帯域が必要な、8Kフル映像(YUV4:2:2 10bit)のフォーマット(48Gbps)を用いた。本実験では、2素材を完全に同期化して大容量のストリームデータとして用いており、ネットワーク上での伝送容量IPプロトコルのオーバヘッドを加えると約109Gbpsになる。さらにKAIT、大阪展示会場等の4箇所へ4K非圧縮映像4K30P(IPオーバヘッドを加えて6.4Gbps)のマルチキャスト配信を行っている。
 またこの環境を用いて、KAITの先進技術研究所第2プロジェクト小島一成准教授は、複数拠点のモーションキャプチャ(光学式、慣性式)を使った8K映像制作の取り組みを行った。具体的には、大阪の展示会場内では慣性式モーションキャプチャのボディスーツを着用した演者の動きを、データとして札幌のサーバにモーションデータストリーミングする。同時に、KAITで行う光学式モーションキャプチャのモーションデータストリーミングと合わせて、2体のCGキャラクタの動きとしてアニメーションを生成し、背景映像と共にリアルタイムレンダリング処理を実施した。この計算結果が8Kフル映像フォーマットとして出力される。これを、8Kカメラ映像と完全同期化して大阪までリアルタイム伝送した。大阪の演者はリアルタイムにレンダリング結果を確認でき、CGを用いた番組制作に有効なプレビジュアライズ(プレビス)環境を遠隔地間で非圧縮8Kの超高精細品質で実現したことになる。
 なお、ネットワーク上でのリアルタイム暗号配信状況の把握や映像素材のネットワーク上の安定的な配信を実現するため、高精度なネットワーク計測技術(注7)と8K映像トラヒックメータ(注8)を併用して、回線の伝送状況を実時間で観測する実験を行っている。

【今後の予定】
 今回の実証実験での結果を踏まえ、ネットワークやクラウドを利用した超高精細映像製作ワークフローの確立、マルチメディア研究との連携による新たなメディア製作手法の確立にむけて研究開発を進める。

※本実証実験の実施にあたり、シャープ株式会社様、北海道テレビ放送株式会社様、アリスタネットワークス様、株式会社朋栄様、サーヴァンツインターナショナル株式会社様、富士フイルム株式会社様、ナパテックジャパン株式会社様、グリーン株式会社様、ピュアロジック株式会社様のご協力をいただきました。本実証実験の一部は、JSPS科研費26330121の助成を受けて進めました。

【注 釈】
(注1)さっぽろ雪まつり実証実験
 NICTが先進的通信技術と放送技術の実証実験の場として、研究開発テストベッドネットワークJGNを用いた実験フィールドを提供して行う。さまざまなプロジェクトが最新技術を持ち寄り、実験を行っている。
(注2)JGN
 NICTが運営している研究開発テストベッドネットワーク。2011年4月から運用している、新世代ネットワーク技術の実現とその展開のためのテストベッド環境のJGN-Xに引き続き、2016年7月からワイヤレステストベッド、大規模エミュレーション基盤、複合サービス収容基盤等のテストベッドと連携し、IoTの実証テストベッドとしての利用を含め、技術実証と社会実証の一体的推進が可能なテストベッドとして新規運用中である。KAITはJGN-X利用プロジェクトとして、2013年4月に「リアルタイム指向ネットワークコンピューティング技術を用いたストリーミングクラウド機能の検証」というプロジェクトを立ち上げ、JGNではNICT、東京電機大学、奈良先端科学技術大学院大学、NTT-IT、PFU、アストロデザイン、池上通信機、JVCケンウッド・公共産業システム、セイコーソリューションズの各組織と共同で、高精細映像伝送・蓄積配信実験を進めている。
(注3)SINET5
 国立情報学研究所(NII)が日本全国の大学、研究機関等の学術情報基盤として構築、運用している学術情報通信ネットワーク。今回の実験では、全国の全都道府県および日米回線を100Gbpsの超高速ネットワークで結んで2016年4月より正式運用を開始したSINET5を利用し、札幌−東京間と札幌−堂島間の回線を利用したほか、KAITのアクセス回線を収容している。
(注4) 8K超高精細映像素材
 「8K」は現行のフルハイビジョンの約16倍にあたる3300万画素を持つ。さまざまな方式が提案されているが、今回は8K フル映像方式(YUV4:2:2)、フレームレート毎秒60枚、10bit映像(48Gbps)を扱った。
(注5) 4K映像伝送装置
 NTT未来ねっと研究所の技術を基に、PFUからQool Tornado QG70として製品化されている。QG70を1台で、非圧縮ハイビジョン素材(1.5Gbpsの伝送レート)を4本同時に送受できる性能を有し、装置内の同期で4Kの非圧縮素材を送受可能。また、装置間の同期を行うことで、8K超高精細素材の伝送が可能である。今回の実験では、 2素材分の8Kフル映像を伝送するために、QG70を16台分、フレーム番号と同期クロックを完全同期させる仕組みを新たに作成し、マルチレーン同期伝送を実現している。
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(注6) 広帯域IP映像サーバ
 NTT未来ねっと研究所の技術を基に、NTT-IT社から「viaPlatz XMSサーバ」として製品化されている。本サーバ装置は、1台で4K@60P(12Gbps)を蓄積・配信できる性能を有する。
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(注7)高精度なネットワーク計測技術
 JGNは、高精度ネットワーク測定装置PRESTA 10Gを複数配置し、多面的な計測ができる環境を用意している。PRESTA 10Gは、10Gbpsのキャプチャ・ジェネレータ機能を有する10ナノ秒粒度で測定可能なネットワーク測定システムであり、NTT未来ねっと研究所の技術を基に、NTT-IT社から「viaPlatzストリームモニタ」として製品化されている。今回は100Gbps対応の装置を使って計測を行った。
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(注8) 8K映像トラヒックメータ
 KAITでは、トラヒックを観測し、GUIで使用状況の高速表示ができるリアルタイムネットワークモニタを開発している。今回は、汎用スイッチのキャプチャ機能との連携により200Gbpsまでのトラヒック伝送状況の可視化を行う実験を行った。

▼本件に関する問い合わせ先
 神奈川工科大学 工学教育研究推進機構
 〒243-0292 神奈川県厚木市下荻野1030
 担当: 井藤 晴久
 TEL: 046-291-3299
 E-mail: ito.haruhisa@cco.kanagawa-it.ac.jp

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