幸福度が高い時はターゲットを見つけるのが速い ~スマホアプリを利用し、日常の気分が視覚探索に影響~

国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部

From: 共同通信PRワイヤー

2018-04-24 14:00

2018年4月24日

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) (リンク »)

幸福度が高い時はターゲットを見つけるのが速い
~スマホアプリを利用し、日常の気分の変化が視覚探索のパフォーマンスに現れる~

【ポイント】
■ 刻々と変化する人の幸福度が、類似したターゲットを見つける速度に影響することが明らかに
■ 心の自然な変化の様子と視覚探索パフォーマンスの同時計測をスマホアプリで実現
■ うつ病など心の病気を未病の段階でスマホアプリで「見える化」する技術の開発につながる可能性

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)とアストン大学は共同で、日常生活の中で刻々と変化する人の幸福度が、障害物の中のターゲットを探す速さに現れることをスマホアプリを使って実験的に明らかにしました。人は幸福度が高い時の方が低い時よりも、創造性が高く、社会性に富むことが、社会心理学の研究で広く支持されています。しかし、人が物を見たり、見つけたりするような「基本的な機能に、その時の気分が影響しているかどうか」は分かっていませんでした。
 NICT脳情報通信融合研究センター(CiNet)の山岸典子主任研究員らのチームは、スマートフォンのアプリを独自に開発し、日常生活で起こる自然な幸福度の変化を記録するとともに、視覚探索課題を同時に長期間にわたり計測することを実現しました。その結果、幸福度の高低が視覚探索課題の速度に影響を与えることを明らかにしました。
 なお、本研究成果はPLOS ONEのOPEN ACCESSに日本時間4月18日(水)に掲載 (リンク ») されました。

【背景】
 人は幸福度が高い時の方が低い時よりも、創造性が高く、また多くのことや人と関わることができるなど社会性が高まることが、社会心理学の研究で広く支持されています。しかし、人が物を見たり、見つけたりするような「基本的な機能に、その時の気分が影響しているかどうか」は分かっていませんでした。雑踏の中で友人や子どもを探したり、ショッピング中に欲しい物を探すなど、視覚探索は人にとって基本的で重要な機能の一つです。この機能にその時に感じる幸福感(幸福度)は影響するのでしょうか。
 従来の研究では、これを解明するために、音楽や映像、報酬などによって人の幸福度を変化させ、そうした機能への影響を実験室で計測していました。これまでの研究結果は、幸福度の視覚機能への影響を支持するものと支持しないものが混在しており、異なる気分の想起方法も一つの要因ではないかと議論になっていました。
 そこで、本研究では、気分を想起させる方法ではなく、自然な気分の変化を利用する新しい手法を開発し、幸福度が人の視覚探索過程に与える影響を確かめる実験を行いました。

【今回の成果】
 本研究では、独自のスマホアプリを開発することで、日常生活の中で刻々と変化する人の幸福度を記録すると同時に、視覚探索課題を遂行することを可能とし、これにより、幸福度の高低が視覚探索課題の速度に影響を与えることを明らかにしました。
 今回の実験の特徴は、日常生活の中で自然に変化する幸福度をスマホアプリにより記録すると同時に、心理学で広く用いられている課題をそのアプリによって遂行できるようにしたことです。
 実験参加者は33名で、それぞれの日常生活の中で毎日、朝、昼、晩の三回、二週間にわたり、一回当たり五分程度、ターゲットを見つけるなどのアプリの課題に取り組みました。その結果、人の幸福度は、性格などで一定ではなく、刻々と変化し、幸福度が高くなると、障害物の中のターゲットを速く見つけることができることが分かりました。
 つまり、日常生活の中で人が感じている幸福度の高低により、人が物を見つけるというような基本的な機能のパフォーマンスが違うということを、実験で明らかにしました。
 また、この知見により、逆に、視覚探索課題のパフォーマンスをスマホアプリなどを利用してモニターすれば、人の幸福度の変化が分かる可能性を示しています。

【画像: (リンク ») 】
幸福度の視覚探索パフォーマンスへの影響
【画像: (リンク ») 】
スマホアプリによる実験の様子
【今後の展望】
 幸福度の高低と、視覚探索機能のパフォーマンスが関係しているという本研究の結果は、視覚探索機能のパフォーマンスをモニターすれば、幸福度を推定できることを示唆しており、スマホアプリなどを活用することで、うつ病などの心の病気の兆候を未病の段階で「見える化」する手法の開発に役立てられることが期待されます。
 さらに、視覚探索が速くできるようにスマホアプリなどでトレーニングすることで、幸福度を上げるような研究にも着手し、心の未病の「改善」を可能とする手法の研究開発を目指します。

本研究の一部は、日本学術振興会の科学研究費補助金の助成を受けて行いました。



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