「近視」に対して新たなアプローチ示唆する新発見。クロセチンによる近視予防法の開発に期待

ロート製薬株式会社

From: 共同通信PRワイヤー

2019-01-25 16:00

20190125

ロート製薬株式会社

増加する近視に対して新たなアプローチの可能性を示唆する新発見

慶應義塾大学医学部眼科学教室の坪田一男教授、栗原俊英特任准教授、森紀和子(大学院医学研究科博士課程3年)らの研究グループは、ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役会長兼社長:山田邦雄)と、近視の進行を抑制する方法について検討してまいりました。
このたび、慶應義塾大学医学部の研究グループにおいて、クチナシ由来の色素成分「クロセチン(注1)」に近視進行抑制に関連する遺伝子の一つである「EGR-1」の発現量を増やす効果があること(図1)、近視誘導モデルでクロセチンが近視進行の程度を示す「眼軸長の伸長」や「屈折度数の変化」を有意に抑制することが世界で初めて確認されました(図2)。今回の研究成果はクロセチンが近視進行を抑制する可能性を示唆する新しい知見であり、この知見を発展させることで、子どもの近視進行抑制に有用な製品の開発に繋がることが期待されます。
今回の研究成果は、1月22日(グリニッジ標準時)に学際的総合ジャーナル『Scientific Reports』(オンライン版)に掲載されました。


1.研究の背景と概要
近年、全世界で近視の有病率が増加し、人類の3分の1が近視だと言われています(Holden BA. et al. Ophthalmology. 2016)。特にアジア諸国における近視の有病率上昇が顕著であり、中国では成人の9割以上が近視であると報告され、中途失明原因の第2位となっています。
日本においても子どもの視力低下は進んでおり、最近の統計では、高校生の6割以上、中学生の5割以上、小学生の3割以上が視力1.0未満であると報告されています(文部科学省 平成29年度「学校保健統計調査」)。また、近視の程度が強い「強度近視」の有病率は40歳以上で5%程度と推定され、以前行われた全国調査では失明原因の第4位であると報告されました(平成17年度厚労省網膜脈絡視神経萎縮症調査研究班報告書)。
このように近視は生活の不便さだけでなく、状態によっては視覚障害に繋がる可能性があり、社会問題となっています。強度近視を防ぐためにも、特に近視が進みやすい学童期に有用なアプローチが望まれています。

近視進行を抑制する遺伝子「EGR-1」
従来近視には遺伝が関与すると考えられてきましたが、近年、遺伝だけでなく生活習慣などの環境因子も大きく関与することがわかっています。
中でも屋外活動が短いほど近視が進行することがこれまで複数の研究グループから報告されており、慶應義塾大学医学部眼科学教室の先行研究で屋外環境に豊富にある波長域360-400nmの光が近視進行を抑制することを発見しました。この光を浴びると実験近視モデルで眼軸長伸長が抑制され、近視を抑制する遺伝子の一つとして知られている「early growth response 1(EGR-1)」が有意に上昇していることが確認されました(Torii H et al. EBioMedicine. 2017)。
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2.研究の成果と意義・今後の展開
(1)クロセチンに、EGR-1の発現を高める効果があることを発見
この「EGR-1」遺伝子に着目し、EGR-1遺伝子の発現を高める食品素材のスクリーニングを実施。200種以上の素材の中でもクチナシ由来の色素成分であるクロセチンに、極めて高いEGR-1発現促進効果があることを発見しました(図1)。
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【図1】細胞に成分を添加した時のEGR-1遺伝子の発現量を測定した。コントロールを1として比較した。クロセチンの投与により、EGR-1の発現量が有意に上昇した。(*p<0.05)(慶應義塾大学医学部眼科学教室実施) 

(2)近視誘導モデルでも近視進行抑制効果を確認
慶應義塾大学医学部で開発した、凹レンズを装用させて近視を誘導するモデル(Jiang X et al. Sci. Rep. 2018)にクロセチンを投与すると、近視化の指標である「眼軸長の過剰伸長」(注2)ならびに「屈折度数の変化(近視化)」(注3)が抑制されることが確認されました(図2)。
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【図2】近視誘導モデルにクロセチンを投与し、眼軸長ならびに屈折度数の変化を測定した。クロセチンの投与により、近視化の指標である眼軸長の伸長(左)ならびに屈折度数の変化(右)が有意に抑制された。(*p<0.05, **p<0.01)(慶應義塾大学医学部眼科学教室実施)

さらに、眼軸が伸びて近視が強くなると、見え方(屈折)が変化するだけでなく、網膜の外側にある脈絡膜(注4)が薄くなるという現象が伴いますが、クロセチンを投与したときは、このような脈絡膜の変化が抑制されました(図3)。

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【図3】近視誘導モデルにクロセチンを投与し、脈絡膜厚の変化を測定した。クロセチンの投与により脈絡膜の菲薄化が有意に抑制された。(**p<0.01)(慶應義塾大学医学部眼科学教室実施)

クチナシ由来の色素成分「クロセチン」は近視進行抑制に関連する遺伝子の一つである「EGR-1」の発現を高める効果があり、さらに、近視誘導モデルにおいても近視進行の程度を示す「眼軸長の伸び」と「屈折度数の変化」を有意に抑制することが世界で初めて確認されました。
学童期の眼軸長の伸長が近視の進行に大きくかかわるといわれており、10歳位で眼軸長の伸長が止まることなく過剰に伸長すると近視が進行します。
今回の結果はクロセチンが近視進行を抑える可能性があることを示唆する新しい知見です。本知見を活かし、さらに研究を進めることで、子どもの近視進行抑制に有用な製品の開発に繋がることが期待されます。

3.論文
タイトル:Oral crocetin administration suppressed refractive shift and axial elongation in a murine model of lens-induced myopia
著者名  :森紀和子、栗原俊英、宮内真紀、石田文子、姜效炎、池田真一、鳥居秀成、
坪田一男
掲載誌 :Scientific Reports

【用語解説】
(注1)クロセチン:サフランやクチナシの実に含まれる黄色の天然色素で、その鮮やかな色は食品の着色に利用されています。ニンジンに含まれるβ-カロテンやトマトのリコピンの仲間で、体の錆びつきを防ぐ「抗酸化力」に優れたカロテノイドの一種です。
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(注2)眼軸長:角膜から網膜までの長さ。眼軸長が伸びすぎて網膜上で焦点が合わない(網膜より前に焦点を結ぶ)と近視となり、眼軸長が長いほど強い近視となります。学童期に眼軸長が過剰に伸長することが近視の進行に大きくかかわるといわれています。
(注3)屈折度数:眼に入った光は角膜と水晶体で屈折され、焦点を結びます。屈折の強さを表したものが屈折度数です。屈折が強すぎると網膜の前で焦点を結び、近視となります。屈折度数がマイナスになる程近視が進んでいることを表しています。
(注4)脈絡膜:脈絡膜は網膜の外側にある膜で網膜に栄養を与える組織。近視が強くなり眼軸が伸びると、脈絡膜が薄くなる等の病的な変化が現れるといわれています。












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