● 高強度・高導電性・高熱伝導性と従来材料の洋白やステンレス鋼と同等の絞り加工性を同時に実現した銅合金条を開発
● 高熱伝導で隙間の無い立体加工が可能になり、電子機器の小型化・高性能化に貢献
● スマートフォン基板の電磁波シールドケースのほか、今後はカメラモジュール、コネクタ、プローブピンなどへの提供も拡大
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:小林敬一)は、高強度・高導電性・高熱伝導性と絞り加工性を同時に実現した銅合金条「EFHD(R)(E Furukawa High Drawability)」シリーズを開発し、サンプル出荷を開始しました。本製品は2023年度中の量産・販売開始を予定しており、2025年度には月産20トン以上を目指します。
■背景
モバイル機器に代表される様々な電子機器の性能向上に伴い電子部品の高周波化・大電流化・小型化が進むなか、熱対策やEMC対策(電磁ノイズ対策)、部品の剛性向上がますます重要になっています。例えば、スマートフォンの基板上の電磁波シールドケースなどでは、隙間のない一体構造でシールド性を確保するために金属をプレス成形する絞り加工が有効であり、現在は加工しやすい合金として洋白(C7521など)やステンレス鋼(SUS304など)が主に用いられていますが熱伝導率の低さに課題があります。電子部品の集積化で発熱量が増加するなか、従来の洋白やステンレス鋼と同等の絞り加工性や、基板コネクタのホールドダウンとして強度と導電性も有しつつ、より高い熱伝導率で効率よく放熱・拡散できる新しい材料開発を進めてきました。
■内容
当社独自の組織制御技術の活用によって、高強度・高導電性・高熱伝導性と絞り加工性を同時に実現したEFHD(R)シリーズを開発しました。本製品シリーズは、従来、絞り加工用として主に用いられてきた材料である洋白やステンレス鋼と同等以上の強度と、より高い導電率・熱伝導率を有します。絞り加工は円筒形状のほか、より加工が困難な角型形状(図1)も可能であり、高い絞り加工性を有しています。これにより高熱伝導・高導電で隙間の無い立体加工が可能となり、電子機器の小型化・高性能化が可能となります。今回、最も強度と導電性のバランスに優れたEFHD-97に加え、より導電性を重視したEFHD-64、より強度を重視したEFHD-98Sを新たに展開します(表)。
用途の一例として、電磁波シールドケースとして使用する場合の有効性に関するシミュレーションでは、基板上に実装されたシールドケース周辺をモデル化(底部の基板から上部の金属板まで7層で構成)し(図2-a)、4Wの熱源を設定した際のモデルの温度を計算しました。その結果、従来の材料である熱伝導率の低いステンレス鋼(SUS304)は高温のヒートスポットが生じているのに対し、熱伝導率の高いEFHD-64は熱を拡散(図2-b)するため、シールドケースの材料の熱伝導率が向上することにより熱源の温度が抑えられることが分かりました(図2-c)。従来のステンレス鋼などからEFHD(R)シリーズへ置き換えることで、効率よく放熱・拡散して内部のICの温度が下がることで、動作の安定化が見込めます。
本製品は2023年度中の量産・販売開始を予定しており、2025年度には月産20トン以上を目指します。今後、カメラモジュール、コネクタ、プローブピンといった幅広い用途へEFHD(R)シリーズを提供することで、様々な電子部品の高周波化・大電流化・小型化の実現と、それによるデータ通信技術の高度化に貢献してまいります。
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図1 EFHDシリーズを用いた角型の絞り加工品例
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表 EFHDシリーズと従来材料の諸特性
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図2 (a)シミュレーションモデル、(b)温度分布、(c)シールドケースの熱伝導率と熱源温度の関係
『EFHD』は日本における古河電気工業株式会社の登録商標です。
古河電工時報 第142号(2023年)
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■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
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