【表】
【感電死傷事故に関係する用語】
電気工作物 :発電、蓄電、変電、送電、配電又は電気の使用のために設置する工作物(電気設備)で
す。例えば、ビルや工場で電気を使用するための需要設備(キュービクル内の受電設備)
や発電のために使用する発電機などの発電設備をいいます。
需要設備 :ビルや工場等で電気を使用するために設置する電気工作物であり、受電室や変電室などの
設備、非常用予備電源設備、構内電線路、電気使用場所の設備などが含まれます。
検電器 :電気が通っているかどうかを確認するための機器です。高圧用・低圧用があります。
検電 :検電器を用いて、電気回路や電気配線が電気を帯びているかどうかを判別するために行う
安全行動です。
絶縁用保護具 :電気用帽子(ヘルメット等)、電気用ゴム袖・ゴム手袋・ゴム長靴などの作業者が身体に
着用する感電防止のための安全装備をいいます。高圧用・低圧用があります。
電気主任技術者: 法律上求められる、電気工作物の保安の監督を行う者になります。
事故情報の分析
1.感電死亡事故の被害状況(感電死者)
2024年3月に、経済産業省が審議会において一定の用件に該当する事故を『重大事故』※1とし、その傾向等について言及しています。
重大事故の大半を占める「感電による死亡者」のうち、作業者の死亡事故について分析したところ、多くの方(12人中9人)が電気主任技術者の了解を得ることなく行った作業中に事故にあっていることが分かりました(表1)。
[表1]自家用感電死亡事故における作業への電気主任技術者の関与(2020~2022年度)
【表: (リンク ») 】
こういった傾向から、経済産業省からも関係団体に対する注意喚起※2が行われております。
※1 出典:「令和4年度に発生した電気設備事故への対応について」(第28回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会)
重大事故について、「死者1名以上/重傷者2名以上/重傷者1名以上かつ負傷者3名以上/負傷者6名以上/爆発・火災等により多大な物的被害が生じたもの」と定義。
※2 出典:「電気設備に係る事故発生状況について」(第29回 産業構造審議会 保安・消費生活用製品安全分科会 電力安全小委員会)
次に、被害時の作業内容を見ると、「電気工作物の点検」、「電気工事」が合わせて全体の半分以上を占めている一方で、「電気工作物の銘板確認」もそれに次ぐ件数になっております(図3)。事故の原因としては、「作業方法不良」、「作業準備不良」の2つが主な原因になっております。 (図4)。
なお、主任技術者が事前に把握していなかった事故においても、作業内容としては「電気工作物の点検」、「電気工事」、「電気工作物の銘板確認」が最も多く、事故の原因としても「作業準備不良」、「作業方法不良」が多くを占めていました。作業者が主任技術者への連絡等を怠っていたため、作業の方法や準備の誤りに気づけなかったことによって事故が発生していると推定されます。
【画像: (リンク ») 】
(左:感電死者全体、右:主任技術者が事前把握せず)
【画像: (リンク ») 】
(左:感電死者全体、右:主任技術者が事前把握せず)
2.感電死亡事故の事故事例(無断作業によるものを含む)
事例1 事故発生年月 2020年7月
【被害の状況】需要設備(高圧)-電気工作物の点検 死亡
停電作業が終了して復電した後、電気主任技術者が予定外の単独作業として受電キュービクル内の確認を試み、扉を開けた際に、ひじがケーブルヘッドテーピング部分に接触し感電した。
【事故の原因】
キュービクルの扉を開いた際に、何らかの理由により体のバランスを崩したものと推定される。
【対策例】作業手順の確認・遵守、 検電の徹底
事例2 事故発生年月 2020年8月
【被害の状況】需要設備(低圧)-電気工事 死亡
当該事業場の照明器具増設工事(100V回路)の際に、作業者がケーブルの被覆を剥ぐためにワイヤーストリッパを使用したところ、充電状態のケーブルであったために感電した。
【事故の原因】
当該事業場の照明器具増設工事の際に、作業者は絶縁手袋等の防具を装着せず、また、電源を開放しないままの状態でケーブルの被覆をワイヤーストリッパで剥がしたため、感電したものと推定される。電気主任技術者への事前の連絡、相談などは行っていなかった。
【対策例】 作業手順の確認・遵守、 検電の徹底、 絶縁用保護具の着用
事例3 事故発生年月 2021年9月
【被害の状況】需要設備(高圧)-その他の作業 死亡
看板撤去工事のための足場を解体していた作業者が、構内第1柱に設置されているPASの1次側接続点(6.6kV)に触れて感電し、約5m下の地上に墜落した。被災者は緊急搬送されたが、死亡が確認された。
【事故の原因】
PAS1次側接続点には端子カバーが取り付けられていたが、カバーはずれ、充電部が露出していた。作業者が触れた際にずれた可能性があるが、詳細は不明。
看板撤去工事に際して主任技術者への事前連絡がなかったため、高圧部の停電や防護がないまま、構内柱に近接して足場が設置され作業が行われていた。
【対策例】 作業手順の確認・遵守、充電部の保護
事例4 事故発生年月 2020年8月
【被害の状況】需要設備(高圧)-電気工作物の銘板確認 死亡
当該事業場の電気室において、作業者がPCB含有機器の銘板調査を行おうとしたが、調査に必要な盤の後扉が解錠されていなかったため、施錠されていない前扉から盤に入り込んで後扉を解錠しようとし、高圧充電部に接触して感電した。
【事故の原因】
当該盤内のPCB含有機器の銘板確認調査のためには、盤の後扉の解錠が必要であったが、作業者は設置者から鍵を借りることなく、施錠されていない扉から後扉を解錠しようと予定外作業を実施し、充電部に接触、感電したものと推定される。
本確認調査に際しては、手順を遵守せずに作業を行ったことが根本原因と考えられる。
【対策例】作業手順の確認・遵守、 検電の徹底、 絶縁用保護具の着用
感電死傷事故を防ぐためのポイント
3.感電死傷事故を未然に防ぐために
未然防止に有効と考えられる対策を以下に示します。
感電死傷事故の発生を未然に防ぐためには、管理者(電気主任技術者)や設置者が行う設備面の安全対策、組織的な安全対策、さらには、作業者個人が行う安全対策が重要です。事故の未然防止に係る取組の徹底・強化をお願いいたします。
【表: (リンク ») 】
【表】
(参考リンク)
※「電気使用安全月間(8月)について」(経済産業省)
(リンク »)
※「【緊急注意喚起】点検作業中の感電死傷事故が頻発しています」(中部近畿産業保安監督部近畿支部)
(リンク »)
※「最近の感電死亡災害の分析と今後の対策」(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所)
(リンク »)
参考情報
〇詳報公表システムについて
詳報公表システムは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)が一元化された国内初のデータベースです。2020年度からの事故情報について順次公開を行っております。本システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。
詳報公表システム >> (リンク »)
【画像: (リンク ») 】
〇NITE 電力安全センターについて
NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持及び運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年4月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資する様々な業務に取り組んでいます。
NITE電力安全センターの業務紹介 >>
(リンク »)
【表: (リンク ») 】
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