この段階になると、プライベートとパブリックという両方のクラウドの相互間では、サービスレベルの差異は意識されなくなるだろう。その状態に到達するには、まず、データセンターの仮想化環境を構築し、既存のデータセンターを進化させていなくてはならない。
とはいえ、すべてをいきなり、本のページをビリッとやぶるようにするのではなく、進化を伴う道のりを経た手法を採るのであり、急激に、まったく異なるものに作り変えるのではないのだということを言っておきたい。
仮想化は企業のコスト効率を激変させる
――データセンターの効率化、進化とは、実際どのようなことを指すのか。
データセンターの進化、効率化とは、第一に、すべてのIT資産をよりよく稼動させることが主眼となる。仮想化技術を導入することで、最も大きな価値をもたらすのは、稼働率の向上であると言えるだろう。仮想化技術が用いられ始めた頃には、あくまでサーバ単位のボックスを活用しようというようなことが主流だった。
しかし今では、仮想化プラットフォームはサーバに留まらず、ストレージやネットワーク、データセンターに至るまで、IT環境にあるすべてのものの稼動効率を向上させることができる。
効率化を支えるもう一つの要素は自動化だ。自動化が実現すれば、データセンター全体を仮想化させ、共通の環境を構築することが可能になる。プロビジョニングや管理業務といったルーティンタスクは、自動化でさらに効率化が進む。
――資産や業務のサービス化で、ITのコスト構造を変えられるのか。
やはり、企業の保有するさまざまな資源と時間は、かなり多くの部分がインフラの管理に費やされている。安定的稼動を継続させるため、あるいは信頼性確保のため、多大なコストと時間が必要とされている。仮想化戦略が正しく策定され実践されれば、このようなコスト構造は大きく変わる。
稼働率の向上と自動化の関係を裏付ける話がある。稼働率が上昇すると、企業のCAPEX(設備投資)は50〜60%ほど削減できる。また、OPEX(運用コスト)も33%くらい低減化することが可能になる。
IT as a Service、すなわち“サービスとしてのIT”というのは、言い換えれば、ITがビジネスが実行したいと望んでいることの邪魔をするのではなく、ITがしっかりとビジネスを強くする能力となり、準備できるようになっているべきだということだ。クラウドはアーキテクチャであって、IT as a Serviceはその結果なのだといえる。