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リスクも利益も顧客と分かちあう―アクセンチュア程社長 - (page 2)

大西高弘 (NO BUDGET) 怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部)

2014-09-11 07:00

 こうした戦略を実現するためにアクセンチュアでは、顧客に近い部隊に最も多く人数を充てている。世界各国の支部が産業別に、互いの事例やノウハウを共有できるフラットな組織を実現している。各国連携する上で、真にグローバルな人材とは「つらくてもイノベーションを楽しめる人」であると感じているとした。

 システム面でも、社員が知識資産や経験を共有するツール「ナレッジ・エクスチェンジ」により、世界で約29万3000人以上の社員が互いの知識、経験を共有している。さらに企業向けSNSの「Yammer」などを導入して、社員間のカジュアルなコミュニケーションを促進しているという。


顧客のニーズは「保証」へ

 程氏は「顧客接点」という言葉でこれから企業が取るべき道について語る。

 「デジタル化が進む世界では、顧客接点をいかに効率的に広げていくかが大切です。これは、BtoCもBtoB同様ですが、ITも、顧客接点を広げるためのデジタル化に対応できなくてはならない。クラウドを活用して企業システムをスリム化させ、変化に素早く対応できるシステムに作りかえる必要があります」

 フロント部分でいくら顧客接点を広げて情報を取得しても、それを処理するシステム側が鈍重ではどうしようもない。処理能力、そしてシステム改変スピードの迅速化が不可欠になる。また、クラウド活用によって従来のシステム維持コストを低減する必要も出てくる。

 システム維持コスト低下に対し、これまでと同様の「人月主義」という形態だけでは顧客もついてこないことがうかがえる。アクセンチュアではITの新しい取り組みに対するリスクを「保証」して受け負うなど、これまでとは顧客との契約やサービスの提供方法が変わってきている。

 保証とは例えば、案件に関連するデータを解析し、運用方法をレポート形式で提案するだけでなく、アクセンチュアが実際の運用を一括で受け持ち、効果を請け負うことだ。成果を保証する場合、予想されるコスト削減効果の金額や、顧客開拓率などの数字を顧客と確認する。

 成果を保証することができるようになったのは、データアナリティクス(分析)の精度が上がったためだ。分析スキルを顧客のビジネスの効率化だけでなく、「成果を保証する契約」を結ぶために使っているという。

 「システム導入の場合では、顧客に期待される効果を分析したレポートを提出し、その後の運用を3年間任せてくれたら効果は約束します、という契約も可能です。効果を約束することで、調達や発注、顧客獲得、予実審査などビジネスの根幹を任せてもらうことも増えました。『こんな領域をアウトソースして大丈夫なのか』と顧客の経営会議の議題になってしまうケースもあるようです。その場合、(効果が出なかったら)3年間のお代はお返しします、という規約を入れることもあります」

 ケースによっては、アクセンチュアと顧客企業が共同出資で新会社を作り、ビジネスを始めることもある。この方法を使えば、顧客企業はリスクを軽減してチャレンジができ、業務のノウハウもしっかり把握できる。

 「ジョイントベンチャーの場合は、当社はコンサルティング料ではなく、事業収益から一定の率で報酬をいただくことになります。事業が順調に推移して、顧客から『こんなことなら、コンサルティング料だけということにしておけばよかった』と言われました」


「デジタリゼーションに追随していくために、企業のITも全く新しい“つくり”に変貌する必要がある」

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