アクセンチュアは3月10日、“ジェンダー・ダイバーシティ”への取り組みを発表、2020年までに女性管理職の比率を現在の2倍にするとともに、将来は女性従業員の比率を35%程度にまで上昇させる。日本は国際的にみて管理的職業従事者に占める女性の比率が低く、同社では、この問題を日本社会全体の課題ととらえ、社内で積極的に女性が活躍する場を広げるとともに対外的にもさまざまな提言や活動をしていく方針だ。
ジェンダー・ダイバーシティは、ジェンダー(性別)で区別するという発想を排し、多様性を受容した組織作りを標榜する考え方であり、企業などでの女性従業員の数を増やし、管理職や役員にも女性を登用することなどを求めている。アクセンチュアの場合、女性従業員は約1000人であり、この10年ほどで2.5倍になったという。
同社によれば、2007年の時点で既婚の女性従業員は約2割、子どもがいる女性従業員は10%未満、時短勤務利用者は6人、女性マネジングディレクター(部長相当職)は2人だったが、2014年には既婚の女性従業員は約4割、子どもがいる女性従業員は20%以上、時短勤務利用者は80人以上、女性のマネジングディレクターは10人以上になっている。
同社は世界規模で事業展開しているが、日本オフィスの女性比率は年々増加しているとはいえ、他の地域と比較すると最下位であるという。1位は中国、2位は東南アジア諸国連合(ASEAN)、3位はカナダで、いずれも40%以上だ。ワースト3は、13位のドイツ、オーストリア、スイス、14位の韓国、20%で15位の日本となっており、全世界での平均は36%だった。
管理的職業従事者に占める女性比率(出典:データブック国際労働比較2012)は、フィリピンが52.7%、米国が43%、フランスが38.7%、オーストラリアが36.7%、英国が35.7%などである一方、日本は11.9%、韓国は9.4%だ。
アクセンチュア 代表取締役社長 程近智氏
アクセンチュアは2006年に「Japan Women's Initiatives」を立ち上げ、女性が働きやすい環境の構築に取り組んできた。代表取締役社長の程近智氏は「女性が活躍できる場を広げ深めるため、さまざま支援策を講じており、女性向けプロフェッショナル研修、子育てと仕事の両立を支援する制度などを設けている。この7年間ほどでかなり進化していると考えている。実際、女性従業員の数が増えているが、世界的にみれば当社でも日本は(女性進出の水準が)最下位という状況であり、早くワースト3から脱したい」と話す。
同社は、ジェンダー・ダイバーシティ推進のため、日本を含む世界32カ国のビジネスパーソン4100人に2013年11月に独自に調査した(男女の比率は50%ずつで、日本人の回答者は100人)。その結果、日本は世界で最もダイバーシティについての意識が低いことが浮き彫りになった。
「自分のキャリアを構築する上で最も重要なものは何か」との問いへの回答では、グローバルと日本とも「特定の職域で専門性や知識を深めること」(グローバル67%、日本52%)だったが、これに次ぐのは、グローバルでは「組織内でのネットワーキング」であったのに対し、日本では「政治的な調整・擦り合わせ」の41%だった(グローバルでは19%)。
「2020年までに女性取締役メンバーの比率は増えると思うか減ると思うか」との問いに「増える」との回答は日本では35%で、米国の65%、ドイツの64%、中国の62%などに比べ極めて低い。「2020年までに女性のCEO(最高経営責任者)は増えると思うか減ると思うか」との質問に「増える」と回答したのは日本では29%。米国では66%、ドイツは64%、中国は62%だった。
全従業員に占める女性の比率をみると日本は42.2%であり、フランスの47.5%、米国の47.2%、英国の46.5%、ドイツの46.1%、シンガポールの43.6%などと比較して、それほど大きな差があるわけではない。
アクセンチュア 執行役員 インクルージョン&ダイバーシティ統括 兼 金融サービス本部マネジングディレクター 堀江章子氏
この状況について同社執行役員 インクルージョン&ダイバーシティ統括 兼 金融サービス本部マネジングディレクターの堀江章子氏は「女性の活用を積極化しようとの掛け声があっても、日本では単に人数だけ増えれば良しとするような風潮があるのでは。女性だけが従事するような仕事を作るのではなく、男性と同じ仕事を女性も担うようにしなければならない」と述べ、女性と仕事に対する旧弊の意識を変えるべきではないかと主張する。
今回、女性の社会進出について日本は後進国であるとの実態を物語る数値を明らかにしたアクセンチュア自体、同社の世界各国の拠点と比べ女性従業員の比率は最下位であり、国内状況の一つの縮図ということになったわけだ。この問題で日本全体が諸外国の水準に近づくのには、相当の時間がかかりそうだ。