――成功に至るまでのデータを詳細に取って分析している。
特に中小企業向けには、かなり精微なデータから"勝利の方程式”がわかるようになっています。たとえば、あるパイプライン上の特定の検討段階で、こういうアプローチをすればステージが上がって、25%だった勝率が40%になるといった統計データを取れます。全世界のセールスのトランザクションがすべて入っていますから。日本でもさまざまな企業規模に対して、どのタイミングでどういった施策をすれば、どれだけの成果が得られるかという方程式も出てきます。しかも、普段持ち歩いているスマホで確認可能です。
――特に日本で注力していきたい製品やサービスとは。
特にここだけに注力というのはないのですが、例えば米国などはコンタクトセンターを中心にしたカスタマーサービス支援の「Service Cloud」、ヨーロッパではまさにCRMのサービスクラウドが伸びている状況の中で、日本はプラットホームの伸びが特徴だと思います。逆に言えば、今後はサービスクラウド、セールスクラウドの市場がもっと伸びる可能性があるので、日本でもサービスクラウドをもっと強化していこうと考えています。
あとは日本語対応ですね。2014年に米国でスタートしたビジネスインテリジェンス(BI)「Analytics Cloud」を日本でも展開します。Analytics Cloudは、今まで専門家が専門ツールを使いこなしていた部分を、誰もが手のひらの中で直感的に感じられるものとして使えるという部分です。これは画期的だと思います。
そういった市場での競争力をあげるためにも、どんどん投資をしていこうと考えてます。また「Salesforce1 Lightning」という、いろいろなものをブロック化して組み合わせて開発生産する、新しい開発プラットフォームも今年アナウンスします。
米Salesforce.com CEO Marc Benioff氏
さらに、BtoBのマーケティングで「Pardot」という中堅企業の顧客のビジュアルマーケティングを支援するツールも展開する予定です。ポートフォリオはどんどん広がっていますので、日本市場では今後、顧客の領域に合わせて製品を組み合わせて対応していけるようになります。今まではSFAやCRMなどが中心でストライクゾーンが狭かったのですが、広がってきました。
顧客はワンストップを望んでいますから、それを実現していきたいと考えています。ただ、やはり得意分野というものはあります。たとえば銀行の勘定業務など(クローズなシステム)には、対応できません。ですから、セールスフォースとしてのワンストップの定義をしっかり持って、その中でできることはすべて提供しようと考えています。
顧客の要望に真摯に応えるという企業の経営理念も大事です。日本が、IT市場で世界第2位という位置づけを全員が認識しています。「日本で成功すれば世界で成功する」ということをモデルケースにしたいそうです。そのために一部の経営判断を日本だけで完結できるようになっています。それだけ日本の商習慣が特殊であるともいえます。
例えば、日本の顧客、特に官庁とか政府関係、金融機関などは、データは海外に出したくない。バックアップデータもダメと言います。私が就任してすぐにそれを伝えると、日本に第2データセンターを作ることが決定しました。また、セールスフォースのブランド認知度が日本ではまだまだ低いと伝えると、「では高めましょう」ということで日本だけのアクティビティが自由にできるようになりました。
そういう他の外資系と比べたスピードの速さは、成果をみても証明できていると思います。これからは日本のセールスフォースの世界での位置づけも変わっていくのではないかと思います。実際、Chatterでも、世界で一番返信が早いのは本社の会長兼CEOのMarc Benioffだと思っています。どんな時間帯でも送ったそばから返事が来る感じで、いつ寝てるんだろうと思います。それだけ日本を重要視していますし、Marc自身が日本を好きなんですよね。