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未来へのビジョンを売る--セールスフォースの小出CEO - (page 4)

吉澤亨史 怒賀新也 (編集部) 山田竜司 (編集部)

2015-06-11 06:30

――セールスフォースの経営理念で特徴的なことは。

 顧客への対応力とスピードです。米国の本社では、顧客やパートナーの声を聞くための役員会議を開いており、私も出席しましたが、その声に対して24~48時間で解決しようと本気で動くのです。たとえば2014年、Microsoftとのアライアンスを発表しましたが、これも役員会で「セールスフォースとOutlookを連携させたいという顧客がいる」という話が出まして、そうすると経営陣が「わかった。Microsoftと話そう」と、すぐに動き、実際にアライアンスが決まったのです。

 本来であれば、「(PaaSの)Microsoft Azureとバッティングします」などの声が出てきます。しかし、顧客がセールスフォース上でOutlookやExcel、PowerPointを使いたいと言っているのなら、「やれるかどうか」ではなく「やってみよう」という企業姿勢でなのです。そしてマークが「ではマイクロソフトの市場に出ましょう」と言ってスタートする。すごいスピード感です。

 そういった、企業理念に基づいて顧客の声を真摯に聞いたり、イノベーティブな企業として市場のデマンドを理解して製品化してくことなどのDNAを、この1年間で感じました。それは、Marcが企業文化を大事にしていて、会社の雰囲気に対して常にアテンションを上げています。さらに、彼の言葉を彼自身が全社にきちんと伝えるメソトロジーがあるので、風通しがいいわけです。

 それは「V2MOM」(Vision、Values、 Methods、Obstacles、Metrics)としてシステム化されています。まずビジョンを決めて、それに対して自分が今年何をするのかという、業績の誓いのようなものです。これをMarc、部門単位、社員全員がそれぞれ作ります。そしてそれは、社員全員が参照できます。これが入社した方が一様に驚く文化でもあり、透明性が高い、隠しごとのないところだと思います。すべてが可視化されるという文化があるので、官僚的な大企業病になりづらいんだと思います。意思決定も早く、営業の成績が悪い原因もすぐに突き止められます。

――日本でのパートナー施策について。

 パートナーをセグメンテーションして考えなければいけないと思っています。中長期的、短期的な視点もありますし、グローバルに展開すべきことと日本ローカルで展開した方がいいものもあります。そのため、パートナー様戦略は複雑化せざるを得ない領域であると思います。また、地方の中小企業のお客様をカバーするためには、地方でパートナー様を育成する必要もあります。こういったローカルエコシステムは日本独自の取り組みです。ただ、日本法人のあるグローバル企業などは、グローバルのパートナー戦略の方が適していることもあります。そのバランスが重要ですね。

 リセラーというのも日本にしかありませんから、日本で独自にリセラーモデルを作っています。利益分配の割合なども、グローバル戦略とは別に私が決めないといけないわけです。そして、中長期的には私たちがパイオニアとして、日本のクラウドマーケットをもっと拡大しなければなりません。そのために投資も行っています。

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