【海部美知 for Cloudian】2013年はクラウド化による「サーバー人vs.ストレージ人」に注目?

クラウディアン株式会社

2012-12-28

「ビッグデータとクラウド・ストレージ」 連載 第七回
トレンド編4: ストレージ業界「2012年の主要動向」より

エノテック・コンサルティング代表
海部美知

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年の瀬ということで、ストレージ業界についての今年のまとめ記事 (»リンク) があった。アメリカ人はなんでも「トップ10」にするのが大好きだが、ここでは10件にするために少々無理している様子もあるので、主な点だけを取り上げて、少々ご紹介する。ご興味のある方は、ぜひ元記事を参照していただきたい。

◆ 2012年の採点表


この記事はComputerworld誌のストレージ業界専門家、Chris Poelker氏のコラム。一年前に自身で書いた2012年の予測を自分で採点し、それぞれについて来年の動きを予測しているものだ。

非常におおまかに言えば、おなじみに「クラウド化」が大きな流れであり、それに対応するためのストレージ分野での個別動向が下記のようなところに表れていると見ることができる。

1. 「組み込み型ストレージ」の躍進


この点はおそらく同氏が最近最も強く感じていることのようで、この一つ前の記事でも詳しく言及しており、2012年の予測が「ばっちり当たった」と述べている。

Poelker氏の言う組み込み型(Embedded)ストレージとは、サーバーとストレージをそれぞれ別に購入してSANを構築するのではなく、両方を組み合わせたモジュール型クラウド・パッケージにしたもののことである。これは、企業が自前のIT部門でストレージを運営するというスタイルから、パブリックやプライベートのクラウドにサーバーもストレージも置くというスタイルへの移行が背景となっている。

従来、米国の企業ITシステムでは、サーバーとストレージは別々に購入し、サーバー担当とストレージ担当が異なる人で予算も別々、というケースが多かった。しかし、クラウド化が本格化した2009年頃から、データセンターにストレージもサーバーもデータベースもすべて置くようになり、その統合インフラ化でコスト削減を目指す動きが出てきた。そこで、データセンター・インフラストラクチャ・マネージメント(DCIM)ソリューションが注目されるようになった。

特に大企業ユーザーの場合、カスタマイズするにしても、両方を個別に購入して専用担当者を置くコストや運用の複雑さに比べ、パッケージのレファレンス・アーキテクチャを使って構築するほうが、メリットが大きいと考えられるようになってきている。

Poelker氏は、2013年もこの傾向がさらに続くと予測する。小さめの組織では、引き続きサーバーとストレージを別のベンダーから購入するであろうが、全体の傾向としてはモジュール型への移行が続くと見る。この趨勢は、下記のいくつかの動きとも強く関連している。

2. ストレージ仮想化の進展


サーバーの仮想化に比べ、ストレージの仮想化はまだそれほど進まなかたっということで、この点については同氏は「やや時期尚早だった」と自ら評している。しかし今後の趨勢としては、「SANからクラウド/オブジェクト・ストレージ」「モバイルのクラウド化」の流れは止まらない。モバイルでは、端末のストレージ容量が小さいためにクラウド側にストレージを置く傾向がより強く、「ストレージをアプリケーションの近くに持っていく」目的のためには、マルチベンダーのデータセンターの中では、ストレージでも仮想化が進行すると予測される。

ストレージ仮想化では、まだ強力なリーダー的存在のベンダーが定まっていないため、今後どこがそのポジションを取るか、2013年に気をつけておく必要がありそうだ。

3. ファイバーチャネルの落日


ファイバーチャネル・ベースのSANは過去のものとなる、というPoelker氏の予測については、これも「時期尚早」との自己評価だ。しかしこちらも、徐々にIPベースのクラウド・ストレージへの移行が進んでいくだろうと予測している。

前述のパッケージシステム化の流れの中で、ストレージ・ベンダーとネットワークやサーバーのベンダーと提携する動きが多くなり、最近ではストレージを直接ブレードサーバーに接続できるようにし、SANを不要にした製品も出てきている。

4. ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)の普及


この予測は大当たりとの自己評価。SSDのコストが下がりサイズが小さくなるにつれ、アクセス頻度の高い上位階層のストレージはSSDとなっていき、メカニカルなハードディスクは、よりアクセス頻度の低いアーカイブ向け階層に利用されるようになっていくと予測され、2013年もこの傾向が続くだろう。

しかし、最も下の階層においては、テープはしぶとく生き続けるという2012年予測も「大当たり」であった。蓄積データ量がどんどん増加し、コンプライアンスのための保存義務も増加する中で、テープは今後まだまだ利用されると見られる。

ストレージ形態の選択肢が増えて、どの目的にどういったストレージを利用するかの戦略がより多彩になる、と考えることができるだろう。


◆ さて、2013年の展望は?


全体として、クラウド化への対応というトップの動きから玉突きのようにいろいろな動きが起こっていることになる。モバイルのクラウド化、ビッグデータの進化、SSDの価格低下など種々の傾向から見て、こうした大きな趨勢は2013年にはますます加速することはあっても、ストップする様子は見えない。

Poelker氏によると、サーバーとストレージの統合運用という動乱の中で、「サーバー人」と「ストレージ人」の勢力争いでどちらが勝つのかは予測がつかないが、運用担当者としてはとにかく「いつも腕を磨いて最新のスキルを身につけておくのが得策」だという。レファレンス・アーキテクチャや統合パッケージによって、データセンター構築はよりシンプルになるかもしれないが、新しい統合運用環境の中では予想外の問題が起こりかねない。データ量やアプリケーションがどんどん増加していくことも間違いないので、「新しい動きに頑張ってついていくべき」という点については、おそらく誰も異論がないだろう。

ということで、ますますデータがビッグになっていく2013年に向け、引き続きこのコラムをどうぞ宜しくお願いいたします。

海部 美知
海部 美知(かいふ・みち)
海部 美知エノテック・コンサルティングCEO(最高経営責任者)。ホンダを経て1989年NTT入社。米国の現地法人で事業開発を担当。96年米ベンチャー企業のネクストウエーブで携帯電話事業に携わる。98年に独立し、コンサルティング業務を開始。米国と日本の通信・IT(情報技術)・新 技術に関する調査・戦略提案・提携斡旋などを手がける。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。

ブログ:Tech Mom from Silicon Valley
Twitter ID:@MichiKaifu
著書に『パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本』(アスキー 新書)がある。

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