映画・ドラマ・アニメなどの動画を中心にした、日本最大級のデジタルコンテンツ配信サービス「U-NEXT」。快進撃を続けて、この9月には、総契約数が前年同期比の約2.4倍となる133万件を突破した。
動画配信サービスは、コンテンツの供給やデジタル著作権管理、大規模ストリーミング配信など、ビジネスとテクノロジーの両面で挑戦が求められる。U-NEXTの快進撃の切り札となったのは、お客様の利便性と満足度に直結する、サービスのパフォーマンスをリアルタイムで可視化することだった。そのために、U-NEXTに導入されたのは、アプリケーションパフォーマンス管理ツール「AppDynamics」であった。U-NEXTの事業戦略担当者に話を聞いた。
成長著しい動画配信サービスは、ビジネスとテクノロジーの両面でも注目
日本最大級のデジタルコンテンツ配信サービス「U-NEXT」は、総契約数が2015年7月末時点で100万件を突破。9月末には前年同期比の約2.4倍となる133万件を超えた。さらに、ソフトバンクモバイルと協業して、最新作から懐かしの作品まで、幅広いアニメが見放題となる「アニメ放題」を提供するなど、サービスの拡大を続けている。
動画配信サービスの市場規模は、日本で約1,255億円(※1)、アメリカでは、1兆1400億円(95億ドル)に上ると言われている(※2)。
このような動画配信サービスは、ビジネス面でもテクノロジーの面でも、チャレンジングな存在だ。
ビジネス面では、多くのコンシューマユーザーのニーズに応えつつ、膨大なコンテンツの獲得とデジタル著作権管理が不可欠となる。一方で、レンタルビデオや衛星放送など競合サービスも少なくない。
テクノロジーの面でも、高度で幅広い技術が必要とされている。たとえば、コンテンツホルダーの権利を保護するための著作権保護技術、ブロードバンドネットワークによる大容量データのストリーミング再生とダウンロード再生、ユーザーの視聴体験を左右する操作性と動画フォーマット対応、PC・モバイル・ゲーム機・テレビなど、多種多様なデバイス対応など、といった具合である。
そして何より、動画配信サービスでは、サービスの利便性とパフォーマンスが、お客様の満足度に直結する。
従来、多くのウェブサービスでは、膨大なアクセスログを収集し、それを後から集計・分析するのが一般的であったが、システム上の問題点を把握することは、手間もかかるし難易度も高かった。
そこで、重要かつ不可欠になるのが、リアルタイムでパフォーマンスを測定すること。サービス上の課題を発見し、原因を追求、対策の効果を検証するため、システムパフォーマンスとボトルネックの可視化は、極めて重要かつ不可欠の存在なのだ。
サービスレベルを定量的に確保するのに不可欠なパフォーマンス管理
そのために、U-NEXTが導入したのが、アプリケーションパフォーマンス管理ツール「AppDynamics」である。分散した複数のサブシステム上で、システムがどのように動作しているのか、どのように機能しているか、どこでサポートを必要としているのか、といった情報をリアルタイムで把握して、サービスのボトルネック検出を可能にするのだ。
すでに「アニメ放題」のサービスの立ち上げを皮切りに、本体のU-NEXTでもAppDynamicsを導入しており、ビジネスを展開する上で欠かせないツールとなっているという。
今回、株式会社U-NEXTのNEXT事業本部 事業戦略室に所属する柿元 崇利氏に話を聞いた。動画配信サービスにおける、パフォーマンス管理ツールの導入の経緯と効果が明らかになった。
株式会社U-NEXT
NEXT事業本部 事業戦略室
マネジャー 柿元 崇利氏
「パフォーマンス管理ツールの導入のきっかけは、アニメ放題のサービス開始でした」と、プロジェクトの責任者であった柿元氏は語ってくれた。
「これまでのU-NEXTのサービスでも、高い品質でサービスを提供してきましたが、今回は、ソフトバンク様との協業ということもあり、サービスレベルを定量的に確保する必要がありました。具体的には、エンドユーザ向けサービス提供時間を24時間365日とする、サービス稼動率は一定の割合以上、といった条件を、SLAを結んで保証することになりました」(柿元氏)
また、従来のU-NEXTサービスが、固定回線中心であったのに対して、モバイル向けサービスであるアニメ放題は、より多くのユーザーが一気に利用を開始する可能性があり、そのためにもパフォーマンスの計測が必要になったという。
サービスの早期立ち上げと継続的な改善を可能にするAppDynamicsの2つの特徴
サービス開始まで数ヶ月というスピード感の中で、新たな動画配信サービスシステムを構築するとき、効果を発揮したのがAppDynamicsの2つの特徴であった。
1つ目は、AppDynamicsの導入が、ほとんど手間がかからないこと。
「従来のシステム開発であれば、パフォーマンス監視システムの構築だけで数ヶ月かかっていたと思います。AppDynamicsでは、インフラエンジニアが各サブシステムにエージェントを組み込むだけで完了してしまいました。システムに対して、AppDynamicsによる負荷もほとんどありませんし、管理用のダッシュボードも自動的に作成してくれました。エンジニアに言わせると"ほとんど何もすることがない"といった状態でした」(柿元氏)
2つ目の特徴は、管理画面の使いやすさ。
「AppDynamicsのパフォーマンス管理画面は、とても使いやすくできています。ビジネスサイドの人間が日ごろからチェックして、システムのここが遅くなっているから、このサービスメニューに影響が出ることがわかるというように、ビジネスインパクトが極めて明確になっています。
エンジニアにとっても、システムのかなり深いところまで、この管理画面から追跡することができます。たとえば、データベース間でどんなクエリーを投げたとき、応答速度がどうなっているか、といったことまで把握できます」(柿元氏)
実際の監視データをもとにチューニングを積み重ねた結果、サービスイン直後に比べてシステム全体のレスポンスタイムは1.5倍に高速化され、またサーバーエラー数を半分以下へ減少させることに成功したのである。