英EU離脱が英国のハイテク産業にもたらす影響とは

フロスト&サリバン ジャパン株式会社

2016-07-01 12:00

フロスト&サリバンは、英国のEU(欧州連合)離脱の決定を受けて、英国のハイテク産業に今後もたらされる影響についての見解をまとめました。ハイテク産業は英国のGDP(国内総生産)の約10%程度を占め、英国経済の成長を促進する要素の1つとなっています。フロスト&サリバンの英国オフィスのデジタル・トランスフォーメーション部門リサーチディレクターであるアドリアン・ドロズドは、英国のEU離脱がハイテク産業に今後及ぼす影響について、次のように指摘します。

1.人材の不足:
英国のハイテク産業は事業の成長のために、高い技術を備えた人材を常時必要としています。EUからの移民流入の制限によって、英国内で事業展開を行う企業は今後適切な人材の確保が困難となることが予測されます。また、ハイテク産業に従事するEU市民は、欧州内の他国でのより好条件の仕事に移る可能性もあります。

2.「デジタルハブ」としての英国の役割の変化:
英国は企業の海外進出の入り口として、特に米国企業を中心に多くの企業が進出しているほか、ロンドンを中心に多くのスタートアップの活動も盛んとなっています。今回のEU離脱により、主要なITプロバイダが欧州における拠点を英国内に維持するのか、あるいはパリ等の他のEU内の主要都市へへ移転するかどうかについては、不透明です。また、EUが推進するデジタル技術の活用でEU域内の基盤統合を進める「デジタル・シングル・マーケット(DSM)」戦略から英国が外れることで、市場の孤立が進み、国境を越えたオンライン商取引・Eコマースによる利益を享受できなくなる可能性もあります。

3.データ保護・規制の新たな枠組み:
欧州において長年の議論の中心となっているデータの保護や規制において、英国は「EU一般データ保護規則」と同等の規定を今後採用すると見られる一方で、企業の登録や各EU加盟国のそれぞれ異なる規定への準拠が今後より困難になることが見込まれます。データの保存場所の把握は、データ及びプライバシー保護において、今まで以上に重要となる見通しです。さらにEUは、米国企業の欧州におけるデータ収集やユーザー情報の管理に関する方針を推進し、新たなプライバシー保護協定「EU-USプライバシー・シールド」について英国と先に同意しました。今回の英国のEU離脱を受けて、英国は2018年以降このルールからは除外されることになり、データの保護規定に関する新たな規定についての交渉が必要となります。

4.起業に向けた資金調達の変化:
イングランド銀行は、英国経済や金融セクターに向けた支援を行うと先に表明しましたが、資金調達に関する懸念が、今後特にスタートアップ企業間で高まることが予想されます。欧州投資基金 (EIF)は英国内のベンチャーキャピタルの中でも最大の投資家となっていますが、この資金調達の流れが今後も維持されるのか、またその場合の期間はどの程度になるのかは、大きな議題となっています。

これらに加えて、英国のEU離脱の決定によって、欧州全土にわたって適用される規定については再度協議がなされる必要があり、知的所有権や商標権に関する規定は、英国、そして欧州においてそれぞれ異なる規定がなされる必要があります。企業や機関は今後取るべき道筋についての評価を行っており、その多くは英国の離脱交渉が終了する前に、今後の事業計画を実行に移すと見られています。一方で、英国のハイテク業界は革新に満ちており、回復が早いことは過去に実証されているため、EU離脱による混乱や不確実性は乗り越えられることが期待されています。

▼「Brexit:企業はリスク低減に向けて何が出来るのか?」
You Tubeインタビュー:
・フロスト&サリバン 欧州地域代表兼シニアパートナー、サルワント・シン
・フロスト&サリバン シニアパートナー、ゲリー・ジェフリー
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フロスト&サリバンについて:
フロスト&サリバンは、独自のリサーチに基づいて企業のビジネスを成長に導くグローバルな知見を提供し、ビジネスの新たな成長機会の創出からイノベーションの実現までを支援する、リサーチとコンサルティング機能の両方を兼ね備えた企業のナレッジパートナーです。世界40拠点以上のグローバルネットワークを軸に、世界80カ国ならびに300に及ぶ主要な全てのマーケットを網羅することで、メガトレンドや海外新興市場の台頭、テクノロジーの進化などのグローバルな変化に対応し、企業がグローバルなステージでビジネスを成功させるための360度の視点に基づいた知見を提供しています。 (リンク »)

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広報担当:辻
〒107-6123 東京都港区赤坂5-2-20 赤坂パークビル23階
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