月経前症候群と疲労骨折との関連性を解明 女子アスリート支援への新たな一歩 -- 近畿大学

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2016-10-22 08:05


近畿大学東洋医学研究所(大阪府大阪狭山市)所長の武田卓らの研究グループは、月経前症候群(Premenstrual Syndrome、以下PMS)、またその重症型である月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder、以下PMDD)が、疲労骨折発症の一因となる可能性を初めて明らかにした。本研究成果は、英国のオンライン医学誌「BMJ Open」に平成28年(2016年)10月18日(火)日本時間17:00に掲載された。


【本件のポイント】
●PMS・PMDDと疲労骨折の関連性について女子高校生1,818人(現役運動部員506人含む)を調査
●PMS・PMDDが認知・運動能力低下を引き起こし、疲労骨折発症の一因となることを解明
●疲労骨折予防に向けて、女子アスリートの競技支援への新たな一歩

【研究の概要】
 疲労骨折は男性より女性の方が多く発症するとされている。月経不順は疲労骨折のリスク要因だが、多くの疲労骨折は卵巣機能正常状態でも発症している。また、PMS・PMDDは月経前の不快な精神・身体症状を特徴とし、月経痛と並んで卵巣機能正常女性のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を著しく損なう。
 今回の研究では、PMS・PMDDと疲労骨折の関連性について女子高校生1,818人を調査したところ、卵巣機能正常状態でも16.8%の女性アスリートに疲労骨折が発生していることがわかった。また、PMS・PMDDが月経痛以上に運動時のパフォーマンス障害を引き起こすこと、認知・運動能力低下から無理な身体負荷を引き起こすこと、摂食障害による偏食から骨に悪影響を与え、疲労骨折発症の一因となる可能性があることが示唆された。

【背景と今後の展開】
 これまで女性アスリートの研究は、「エネルギー不足」「月経異常」「骨量減少」からなる「女性アスリートの三主徴」に関するものが大部分であり、PMS・PMDDについては月経異常がある状態では発症しないためほとんど研究されてこなかった。
 武田卓らの研究チームはPMS・PMDDの研究に取り組み、平成26年(2014年)に発表した先行研究では、女性アスリートの44%がPMS・PMDDによるパフォーマンス障害を自覚していることを明らかにしている。今回の研究によって、卵巣機能正常状態での疲労骨折とPMS・PMDDとの関連性も明らかとなり、PMS・PMDDに対する適切な管理・治療は、単なる競技でのパフォーマンス向上だけでなく、疲労骨折発症の予防にもつながることが期待できる。

【論文掲載誌】
■雑誌名: 「BMJ Open」(論文番号:2016;6:e013103.doi:10.1136/bmjopen-2016-013103)
 英国のオンライン医学誌、インパクトファクター2.562
■論文名: Stress fracture and premenstrual syndrome/premenstrual dysphoric disorder in Japanese adolescent athletes(PMS・PMDDは高校生アスリートにおける疲労骨折のリスクファクターとなる)
■著 者: 武田 卓

【研究詳細】
 高校2校の女子生徒1,818人を対象に、月経周期や初経等の月経の状態、月経前の精神・身体症状や月経痛に関する重症度、クラブ活動、疲労骨折既往を評価する自記式アンケート調査を実施。有効例のうち、現役運動部員として活動する506人中、月経周期が正常である394人を解析した。
 その結果、中等度~重度のPMS疑い例が8.9%、PMDDの疑い例が1.3%、認められた。また、PMS症状は月経痛と比較して作業効率、対人関係、試合・練習でのパフォーマンス影響を与えることが明らかとなった。さらに、16.8%では疲労骨折が認められ、PMS症状の重症度を疲労骨折の有無で比較すると、摂食障害、身体症状、パフォーマンス障害において重症であることが認められた。疲労骨折既往に関してのロジスティック回帰分析では、PMSの身体症状があることによる疲労骨折既往のリスクが1.66倍となり、「競技のための体重制限」「週当たりの練習時間」に加えて、「PMS身体症状」が有意なリスク要因であることが明らかとなった。

【武田卓プロフィール】
氏 名: 武田 卓(タケダ タカシ)
職 名: 近畿大学東洋医学研究所 所長・教授
学 位: 博士(医学)
専 門: 漢方医学、産婦人科学
研究内容: 漢方・産婦人科・腫瘍・内分泌の専門医として、女性のヘルスケア全般を 西洋・東洋医学の両面から研究している。特に、心身症(更年期・PMS)、がん患者愁訴、冷え症、子宮筋腫、女性アスリートのヘルスケアについて。

【用語説明】
■PMS(月経前症候群)…月経が始まる約2週間前に発症する心と身体に起こるさまざまな不快症状。「情緒不安定」「いらいら」「不安感」「集中力低下」「倦怠感」「過食・偏食」「腹部膨満感」「乳房痛」「浮腫」等を認める。
■PMDD(月経前不快気分障害)…PMSで特に精神的な症状が強く、社会生活や日常生活に支障が出るほどの状態。
■ロジスティック回帰分析…ある疾患などの事象が、起こるか起こらないかの確率を他の関係しそうな事象で予測する方法。

【関連リンク】
・東洋医学研究所 所長・教授 武田 卓
  (リンク »)

▼本件に関する問い合わせ先
 近畿大学 広報部
 TEL: 06-4307-3007
 FAX: 06-6727-5288

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