フランスのシリコンバレーと称される、研究機関が集積するイノベーション拠点「パリ・サクレー」地域に在るグランゼコール(高等教育機関)のひとつ、世界有数の量子研究センターである光学研究所 (Institut d'Optique) からスピンアウトし、2019年に設立されたPasqal (パスカル) 社は、基礎科学から現実世界で産業が果敢に挑む領域まで、複雑な課題に対応できる可能性を秘めた量子処理ユニット (QPU) を開発、構築、販売しています。Pasqal社のQPUを構築する中性原子技術は、室温で機能し、スケーラビリティにおいて大きな可能性を秘めている点が特徴です。同社は既に100量子ビットのQPUを運用しており、2023年には1,000量子ビットのQPUを実現する予定です。(技術の詳細や想定される使用例についてはホワイトペーパー(1)をご覧ください)。2021年7月、Pasqal社の共同設立者である研究者が、中性原子技術を用いて、最大196量子ビットのエンタングルメント(量子もつれ)の可能性を探る論文をNature誌に発表しています(2)。
2021年6月、Pasqal社はシリーズAラウンドで2500万ユーロ(約32億円) の資金調達を発表しました(3)。 このラウンドは、ベンチャーキャピタルQuantonationと仏国防省の防衛イノベーション部門が率いるもので、これによりアナログ、デジタル量子プロセッサの開発を進め、アプリケーションの共同設計の取り組みを強化し、ハイブリッドクラウドを介した量子コンピューティングサービス構築を加速していきます。
同社は、フランスにおける原子冷却技術に関する学術研究の長年の成果を基に、最前線で活躍する25名のエンジニアを迎え、量子技術の産業界で存在感を高めています。Pasqal社は、中性原子をレーザー光で精巧に操作することで、高い接続性と前例のない規模の量子プロセッサをオンデマンドで実現し、100量子ビット以上、さらに1000量子ビットのしきい値に向けて、エンドユーザーが初めて利用可能とな技術の提供を目指しています。
Pasqal社は、原子の量子ビット制御のアプリケーションからパルサー(4)などのソフトウェアツールに至るまで、効率的な運用やサードパーティによるプログラミング環境に組み込むためのソフトウェアをフルスタックで開発しています。提供できるアプリケーションは、量子機械学習(QML)、組み合わせ最適化、量子シミュレーションを含みます。既に1台の100量子ビットのプロトタイプQPUが稼働しており、フランス電力 (EDF) と共同開発した電気自動車の充電スケジュール最適化など、具体的なユースケースの検討に使用されています(5)。同社は先ごろ、クレディ・アグリコル銀行、マルチバース・コンピューティング社との間で、資本市場とリスク管理のための最先端のアルゴリズムを凌駕するために、古典的なコンピュータと量子コンピュータ上で動作する新しいアプローチを設計・実装するための提携を発表しています(6)。
Pasqal社のQPUを搭載した量子コンピューは既に1台が運用中であり、さらに2台を建設中で、2022年初頭には、クラウドベースのアクセス提供を予定しています。同社のQPUは、欧州2か所のハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)施設ににオンプレミスで導入されることになりました。導入先は、フランスのGENCI (国内の HPC のニーズへの対応と、欧州のHPCプロジェクトへの参加を目的に設立された仏民間企業。仏高等教育・研究・イノベーション省が49%所有) と、ドイツのユーリッヒ研究所のスーパーコンピューティングセンターで、2023年に納入予定です。
◆関連リンク
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◆Pasqalについて
Pasqalは、大規模な2次元や3次元の中性原子配列からなる量子プロセッサを構築し、量子シミュレーションや最適化において、顧客に実用的な量子優位性を提供しています。Georges-Olivier Reymond、Christophe Jurczak、Prof. Dr. Alain Aspect、Dr. Antoine Browaeys、Dr. Thierry Lahayeにより、2019年設立。パリ郊外南部のパレゾーとマッシーに拠点を置く。 詳しくは www.pasqal.io Twitter: @pasqalio 紹介ビデオ: (リンク »)
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