Cambridge Quantum、世界初の量子自然言語処理のツールキットとライブラリを発表

文章を量子回路に変換し、「lambeq」は量子計算システムの発展に伴う実用的な QNLP アプリケーションの開発を加速

クオンティニュアム株式会社

2021-10-20 11:00

※本報道資料は、英国Cambridge Quantumが2021年10月13日に配信したプレスリリースの抄訳です。

英国ケンブリッジ市 2021年10月13日発表 – Cambridge Quantum(CQ) は、世界初の 量子自然言語処理(Quantum Natural Language Processing 、QNLP) 用のツールキットとライブラリを発表しました。このツールキットは、数学者であり言語学者でもある故 Joachim Lambek 氏にちなんで、lambeqと名付けられました。

lambeq は文章を量子回路に変換することができる、世界初のQNLP用ソフトウェアツールキットです。このツールキットは、自動対話、テキストマイニング、言語翻訳、音声合成、言語生成、バイオインフォマティクスなど、実社会におけるQNLP アプリケーションの開発を加速させることを目的として設計されました。

lambeq は、世界中の量子計算コミュニティや量子計算分野の研究者、開発者、ユーザーのエコシステムに向けて、完全にオープンソースな形でリリースされました。また、 lambeq は同様に完全にオープンソースで公開されている、CQの量子ソフトウェア開発プラットフォーム、TKET ( (リンク ») ) とシームレスに動作します。これにより、QNLP 開発者は様々な種類の量子計算機を活用しつつ、自然言語処理アプリケーションの開発を行うことが可能となります。

lambeq の開発には、CQのチーフサイエンティストである Bob Coecke と、シニアサイエンティストの Dimitrios Kartsaklis博士が、プラットフォームのチーフアーキテクトとして起用されました。彼らが率いる量子計算研究チームが中心となり、オックスフォードに拠点を置くCQのQNLPチームによって、構想、設計、エンジニアリングが行われました。lambeq を含む QNLP システムは、10年以上にわたる研究プロジェクトの成果です。

Coecke は次のように述べています。「我々のチームは、人工知能における最も困難な課題の解決に向けて、量子計算機をどのように活用できるかを探る基礎的な研究を進めてきました。このプロジェクトは、私やCQの現AIチームの責任者であるSteve Clarkらと共に先駆けて進めてきたものです。これらの研究の核となるのは、NLPです。我々は 2019年12月に、このシステムの基礎原理を最初に発表しました。lambeq のリリースは、数ヶ月前にCQが世界初で発表した、実際の量子計算機上への QNLP 導入に次ぐステップとなります。」

Coeckeは続けて、「私たちはこの1年間で発表した多くの論文の中で、量子計算機がどのようにNLPの機能を向上させることができるかを詳しく説明しただけでなく、QNLP が『量子ネイティブ』であることを証明しました。つまり、言語を支配する構造と、量子システムを支配する構造は数学的に同じなのです。この結果は、不明瞭で近似的なブルートフォース技術に頼る現在のAIのパラダイムからの脱却につながると信じています。」と述べました。

lambeq は、CQ のサイエンティスト達が以前に説明した構成要素分布 (Compositional-Distributional, DisCo) タイプのNLP実験の設計と展開を可能にし、自動化することができます。これは文脈の構造のエンコードを、構文・文法図による方法から、TKET で実装された(古典的な)テンソルネットワークや量子回路を利用する方法への移行を可能にすることを意味しています。つまり、テキスト分類などの機械学習タスクを最適化できるのです。lambeq はモジュラーデザインを採用していることから、ユーザーはモデルの要素を交換することやアーキテクチャ設計に柔軟性を持たせることができます。

lambeq は量子技術の重要なアプリケーションのひとつであるAIや、人間と機械の相互作用に注目している専門家への参入障壁を取り除くと考えられます。TKET は現在、世界中で多数のユーザーを獲得していることもあり、lambeq はAIの重要な市場のひとつであるQNLPアプリケーションに取り組もうとしている量子計算コミュニティにとって、重要なツールキットになる可能性を秘めています。最近解ってきた重要な点は、QNLPがプロテオミクス解析やゲノミクスで発生する記号列の解析にも適用できるということです。

lambeq のローンチパートナーであり、早期採用者第一人者であるMerck Groupは、ミュンヘン工科大学のイノベーションプログラムQuantum Entrepreneurship Laboratoryとのプロジェクトの一環として、QNLP に関する研究論文を発表しています。

Merck’s IT Healthcare Innovation IncubatorとQuantum Computing Interest Groupの共同設立者であるThomas Ehmer氏は、次のように述べています。「量子計算の特別な機能を利用した本質的なブレークスルーの実現は、Merckにおける我々の研究の重要な部分を占めています。ミュンヘン工科大学と共同研究していて最近発表した QNLP プロジェクトでは、QNLP 技術を用いた文章の二値分類タスクが、現段階でも既存の古典的手法と同等の結果を得られることを証明しています。もちろん、このような技術を商業的に利用するには、量子計算に関するインフラの整備が必要です。ここで重要なことは、QNLPで導入されているアプローチが、AIの進化へ説明可能な道を切り開き、そしてより正確な知能と行動説明を実現することができるということです。この点は、医療分野において必要不可欠です。」

Kartsaklis は次のように述べています。「QNLPに関する理論的な研究に興味深いものはたくさんありますが、実用とは少し離れたところにある場合があります。lambeqは、現在未開拓な分野である QNLP の実験的な側面を研究者が実際に切り開く機会を提供します。これは、量子ハードウェア上に存在するNLPアプリケーションの現実世界への実用化に向けた重要なステップになると確信しています。」

lambeq は、一般的なPythonリポジトリとして、GitHub上で公開されており、 (リンク ») から入手することができます。lambeqで生成された量子回路は、これまでにIBMの量子計算機やHoneywell Quantum SolutionsのH シリーズのデバイス上で実装・実行可能です。


lambeqに関するリンク、お問い合わせは以下の通りです。
• 本ツールキットの紹介をご確認いただける、arXiv に掲載されているテクニカルレポート
(リンク »)
• 一般的な解説を行っているブログ記事
(リンク »)
• 技術的なお問い合わせ
lambeq-support@cambridgequantum.com

近年、NLPを利用したアプリケーションは、カスタマーサービスや消費者向けテクノロジー、ヘルスケアや広告など、世界中のあらゆる分野で利用されています。業界アナリストによると、世界のNLP市場は 2028 年までに 1,272 億 6,000 万ドルの規模になると予想されており、年平均成長率は 30 %近くまで上ると見込まれています*。

*フォーチュン・ビジネス・インサイト
(リンク ») 2021

以上

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2014 年に設立され、世界有数の量子コンピューティング企業の支援を受けているケンブリッジ・クオンタムは、量子ソフトウェアと量子アルゴリズムのグローバルリーダーであり、急速に進化する量子コンピューティングハードウェアを最大限に活用することができます。ケンブリッジ・クオンタムは、欧州、米国、日本にオフィスを構えています。2021年6月8日、ケンブリッジ・クオンタムは、ハニウェル・クオンタム・ソリューションズとの事業統合計画を発表しました。


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